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シスコ、クラウド管理型ネットワーク「Meraki」の新製品を発表 Wi-Fi 6E対応アクセスポイントやIoT製品など
2022年4月12日 11:24
シスコシステムズ合同会社(以下、シスコ)は11日、企業のハイブリッドワークを支える同社の製品群に関する記者説明会の第2弾として、Cisco Merakiブランドの製品を解説した。
新製品と新機能として、Wi-Fi 6E対応アクセスポイントや、IoT向けのセンサーとボタン、監視カメラで動くAIのカスタムモデル機能がアナウンスされた。また、Merakiブランドの日本を含む業績や、製品ポートフォリオ、IoT分野におけるAI機能を含む利用状況が紹介された。
ハイブリッドワーク時代に求められるCisco Merakiの機能
まずCisco Merakiの概要や方向性などについて、シスコシステムズ合同会社の山移雄悟氏(Cisco Merakiジャパン カントリー リード)が説明した。
日本でも3年間で出荷台数が594%成長
Merakiは2006年に、無線LANのアクセスポイントをクラウドで管理するクラウドWi-Fiの会社としてスタートした。2010年からスイッチやルーティング、セキュリティ、UTMなどに拡大。そして2012年にCiscoによる買収された。その後、2017年からはポートフォリオをIoTに拡大している。
グローバルな実績としては、63万の顧客が、190以上の国の、350万以上の拠点で、1,000万台以上のMerakiデバイスを使って、1日あたり1億1,500万以上のエンドユーザーデバイスを接続しているという。
日本でのこの3年間(2019~2021年)の実績を見ると、CAGR(年平均成長率)が58%、出荷台数実績が累計50万台で594%の成長、3年での新規顧客数も1万社を超えて425%の成長だという。
山移氏はCisco Merakiのカスタマーエクスペリエンスの2つの大きなユースケースとして、ハイブリッドワークとスマートスペースを挙げた。
ハイブリッドワークについて、コロナ禍でITに求めるものが変わってきたと山移氏。在宅勤務をトリガーに、ビデオ会議アプリケーションによりオフイスからのトラフィックも増えていることや、無線LANのWi-Fi 6への移行が進んでいることを紹介し、「どこにいても高い生産性が求められる」と語った。
そのうえで、そのためのコネクティビティとして、Merakiの「SD-WANと高速Wi-Fiによる柔軟かつハイパフォーマンスなネットワーク環境」や「アプリケーションとネットワークを詳細に可視化」を特徴として挙げた。
さまざまな製品をクラウド上のダッシュボードから一括管理
ここでMerakiの製品ポートフォリオをあらためて山移氏は紹介した。
無線LANアクセスポイントの「MR」、スイッチの「MS」、ルーター/UTMの「MX/vMX」、アプリケーションを可視化するソフトウェア「MI」、セルラー網をバックボーンとして使えるゲートウェイ「MG」がある。
またIoTではカメラの「MV」と、センサー類の「MT」があり、エンドポイントを管理する「SM」もある。
これらの製品を一括してクラウド上のダッシュボードから管理できるのがMerakiの特徴だ。
さらに、大量のエンドポイントからクラウドに上がってくるデータをもとに、AI/MLにより、アナリティクス、インサイト、最適化、推奨、オートメーションへとつなげるのがクラウドのパワーだと山移氏は語った。
実際にMerakiダッシュボードの様子を山移氏はデモした。シドニーオフィスを選んでネットワーク全体を見ると、152クライアントの一覧が表示される。その中から1つのクライアントをクリックするとそのクライアントのオフィス内の場所や電波状況などがわかる。
このクライアントのヘルス状態を見ると、過去1週間のパフォーマンス状態がわかる。さらにタイムラインにはクライアントの無線アクセスポイントの利用状況が表示され、不具合が起きたところでは、そのときに何が起きていたかの情報や対策の推奨などが表示される。
さらに、アクセスポイントの状況をもとに、業種とアクセスポイント数を選んで、似たようなユーザーの業界標準を表示して比較する機能もある。
Meraki MXを置くだけでローカルブレークアウト
そのほかハイブリッドワークのためのテクノロジーとしては、SD-WANの機能も紹介された。
中でも、拠点からのインターネットアクセスを中央のデータセンターに集める従来のネットワーク構成ではボトルネックになるため、Microsoft 365などの主要なクラウドアプリケーションは直接アクセスするローカルブレークアウトへの形式を説明。「MerakiではMXのUTMを各拠点に置くだけで実現できる」と山移氏は述べた。
さらにその先として、データセンターそのものをクラウドにもってくる構成や、ファイアウォールなどをクラウドにもってくるSASEのような構成も、MerakiのSD-WANとCisco Umbrellaで実現できると語った。
スマートカメラの新機能、新型センサー、Wi-Fiアクセスポイントの新製品
IoTなどによるスマートスペースについては、シスコシステムズ合同会社の脇中亮氏(Cisco Meraki テクニカルソリューションアーキテクト)が説明した。
脇中氏は、センサーを活用したスマートスペースは、いつでもどこでも状況を把握し管理できるようにするハイブリッドな世界に欠かせないと語った。
新機能:スマートカメラに独自の物体検出モデルをデプロイ
1つめの新発表は、スマートカメラMVシリーズ上で動くカスタマイズ可能なコンピュータヴィジョンモデルだ。
これまでMVシリーズにはAIの推論を動かすエッジAIの機能「MV Sense API」が搭載され、人や車を認識したり、さらには会議室の人と座席を認識して密を検出したりしてきた。これらはカメラとクラウドとで動くため、ユーザー側のサーバーは不要だ。
今回発表されたのは、そうした人の検出や車の検出など既成の機械学習モデルだけでなく、新たに必要なものの認識を学習したカスタマイズモデルをMVシリーズに送り、推論させる機能だ。
説明会では、オフィスの中の飲食店を模したカウンターに置かれたコップをカスタマイズモデルで検出する様子が動画でデモされた。
モデルの作成部分についてはCogniac社と提携し、AIエンジニアではない普通の人がクラウド上でAIを学習させられるプラットフォームを用意した。MVシリーズからスナップショット画像を撮影してCogniacに送り、Cogniac上で画像から機械学習して、できあがったモデルをMVシリーズにデプロイする。
新製品:エアークオリティセンサーとスマートオートメーションボタン
2つめの新発表は、エアークオリティセンサーのMeraki MT14と、スマートオートメーションボタンのMeraki MT30だ。両者とも4月12日提供開始。
MTセンサーとしては、これまで温湿度センサーや漏水検知センサー、ドア開閉センサーなどが発売されている。今回の2製品はこのラインアップに加わる。
MT14は、空気の品質にフォーカスした製品。総揮発性有機化合物(TVOC)と直径2.5μmの粒子状物質(PM2.5)をモニタリングする。また、温度、相対湿度、環境騒音レベルを測定する。これにより、いい空間かどうか専門家でなくても判断できるという。価格は402.99USドルから(保守サービス/税別、別途Cisco Merakiライセンスが必要)。
説明会ではデモもなされた。Merakiダッシュボードには、各センサーの値のほか、総合評価が100点満点で表示される。また、温度と湿度をプロットした省エネチャートリーディングにより、さまざまな部屋のセンサーが一定の範囲内に入っているかをまとめて確認できる。
デモではそのほか、センサーとカメラを組み合わせたときに使える「Merakiセンサーサイト」も紹介された。センサー結果で異常があったときにその時点のカメラ映像を見たり、逆にカメラで見ている映像の時点のセンサー結果を確認したりできる。
Meraki MT30は、いわば“ただのボタン”だ。ただし、押すとクラウド上で事前に設定したアクションをトリガーするようになっている。この設定を作成するオートメーションビルダーも同時に用意されている。価格は251.49USドルから(保守サービス/税別、別途Cisco Merakiライセンスが必要)。
説明会では、ボタンを押すとスマートカメラMV12Nで写真を撮ってメールで送るアクションを作って呼び出す様子がデモされた。
新製品:Wi-Fi6Eアクセスポイント
3つめの新発表は、Wi-Fi 6E対応アクセスポイント「Cisco Meraki MR57」だ。Merakiのアクセスポイントのフラグシップモデルにあたる。
6GHz帯、5GHz帯、2.4GHz帯に対応。6GHz帯はまだ日本では許可されていないため使えないが、デュアル5GHzを使える。また、IoTのためにBLEとUSBによる通信にも対応する。さらに、5GbE有線LANのPoE(IEEE 802.3at/bt)受電対応ポートも2つ備える。
デザインは今回CiscoのCatalystアクセスポイントと共通化した。ただし中身は別物だという。
販売開始は4月19日を予定。価格は2892.83USドルから(保守サービス/税別、別途Cisco Merakiライセンスが必要)。