1962年生まれ、かな入力千代子のお天気日記

あの、自分が還暦を過ぎた事が自覚できないのです。まだ知りたい事、知らない事が沢山ある気がします。

再読して思う、幸せを感じる力

せきれい

庄野潤三

株式会社 小学館

 

この小説は、買ったままにしていた本を、お正月休みに読んだものです。

作者の庄野潤三が、山の上に住まいを定め、三十年近くを経過し、晩年の生活を題材に、エッセイの形をとった長編小説としたものです。

日常の自然の移り変わりに目をこらし、喜びを見つける作者の姿勢に、読んでいてやすらぎを感じます。
作者の描く日常は、穏やかでドラマティックではない。そこに、本来の幸せはこの様なものではないかと感じ入るのです。そして、読んでいて、強い刺激のない日常生活に退屈を感じる自分の在り方を反省したくなります。


この小説の初出は、1997年(平成9年)1月~12月『文学界』。
千代子は文学界に掲載された時から読んでいました。当時、千代子も小説を書き、この雑誌を購読していたのです。

書いても書いても新人賞を受賞する事もなく、焦燥感に駆られていた時、この小説は、読んでいて大きな慰めになりました。

今も、経済的な事など、悩みは尽きません。それでも、この小説を読み、今、ここに在る幸せに目を向けて、喜びを感じる事を、この小説は、気づかせてくれました。

そして、長い年月を経て再読しても、再読に値する価値を提供できる作品を生み出す人のみが、プロの作家になるという事実を思い知りました。

 

自分を振り返る時間のある、お正月というタイミングでこの本を読めてよかったと思います。

 

 

 

 

 

 

Â