街はトワイライ

CD屋トマト先輩の日々

2023 BEST

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2023年に良かった9枚のアルバム

Duster / Contemporary Movement (2000)
betcover!! / 馬 (2023)
坂本龍一 / 12 (2023)

Ferkat Al Ard / Oghneya (1979/2022)
Tiny Tim / Tiny Tim's America (2016)
O.S.T. (Nino Rota) / 8 1/2 Soundtrack (1963)

Bibio / Phantom Brickworks (2017)
Brian McBride / The Effective Disconnect (2010)
辻井伸行 / ショパンコンクール 2005 (2009)


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â– Duster / Contemporary Movement (2000)

 このアルバムを聞いたのは今年が初めてなはずなのに、聞くたびに昔から聞いてた思い入れの強い90sアメリカの音楽と同じ感覚に包まれる。ジャンルを分ければやっぱりスローコアだろうか?しかしその張りつめた雰囲気と同時にローファイ的ゆるさも持ち合わせた実に不思議なバンドだ。Slint + Pavement という感じか?晴れても雨でもない日に聞いてると本当にグッとくる瞬間がある。


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■betcover!! / 馬 (2023)

 これは来たな。と3回聞いて思った。傑作。こんなの作れない。「とち狂った寺尾聰」とでも形容すればいいだろうか、ピアノが効いたフリージャズまで飲み込んだバンドのダイナミズムと、何よりもベストテンとかテレビでも出そうなほどの見事なメロディと色気、さらに追い打ちをかけるように、文学だか何だかわかんないぶっ飛んだ歌詞。やさぐれた半笑いで聴き終わったころには目が据わっている。


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■坂本龍一 / 12 (2023)

 何度かこのブログでも記したが、やはり2023年で思い出すのはこの1枚。いくら聞き返してもピンと来ないこれまでの坂本龍一の作品と比べると、今までの作品は「これが音楽だぜ?」とでも言いたげな思惑が浮き出るが、このアルバムにはそれがかなり少ない。だから聞けるのかも。聞きながら逆にこちらが「音楽ってなんだろう?」と考える余白の存在。その誇示もアーティストにとって、特に世界の坂本と言われる人物には必要だったろうが、そこから解放されたような、解放というか忘れさせた出来事があった。


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â– Ferkat Al Ard / Oghneya (1979/2022)

 アラブの良質リイシューを続けるレーベル「HABIBI FUNK」より。そのリイシュー盤はジャケも変えられていてもうちょいだなあとずっと思っていたが、1979年のオリジナル盤から取り除かれた2曲のうち1曲を戻し、付け加えられた最後の曲(2曲差し替えることがリイシューの条件だったと詳細に書かれている)をはずすと、かなり良くなった。ジャケもオリジナルに戻した。ブラジルのMPBと同じ空気を感じている。欧米から取り入れたバンドサウンドににじみ出るアラブ風味。レバノンのニューミュージック傑作。


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â– Tiny Tim / Tiny Tim's America (2016)

 好きで集めているタイニーティムの作品の中でも今のところ一番好きかもしれない。「1974年にタイニーひとりで録音していたリハーサル音源を元に、オーバーダブを加えて完成させたニューアルバム」ではあるが、その重ね具合が実に精妙で本当に最小限のオーバーダブにとどめられていて、しかし出るところはちゃんと出ていて(実際アルバムの冒頭は本来入っていないピアノから始まる)、実に素晴らしいスパイスとなっている。何より聴くと楽しい!今年は映画『King for a Day』も手に入れた。


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â– O.S.T. (Nino Rota) / 8 1/2 Soundtrack (1963)

 フェリーニ映画『8 1/2』名前だけは頭にずっとこびり付きながら観たのは今年が初めてだった。長い苦悩の迷宮からやっと抜け出し訪れたラスト、よく考えるとなんだかよくわからないが(元々は列車が知らない場所へ向かう別のラストシーンが用意されていたようだ)あの解放されたグランドフィナーレに涙がでてしまった。そのサントラ。愉快だけど切ないような、それが人生ってことか?そんなサーカスのようなテーマ曲がやっぱり印象的だ。自分が死んだら葬儀で流したい気持ちにもなるが、もう少し選ぼう。


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â– Bibio / Phantom Brickworks (2017)

 ビビオって車があったような・・・。それはいいがレーベルWarpから多くの作品を出している音楽家の、偶然YouTubeでビデオが目に留まり発見したアルバム。完全なアンビエントミュージックだが、このような作風のアルバムは他には出してないのが不思議ではある。かなり静かでミニマルな循環系ドローンをベースに、正直そこまで取り立てて傑作とは思わないが、娘が生まれる病院へ急ぐ午前3時にこのアルバムが車で流れていた。期待と不安とを包んだ音。


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â– Brian McBride / The Effective Disconnect (2010)

 彼が今年亡くなっていたのをだいぶ経ってから知った。このアルバムを聴いていると余計に残念だ。蜂のドキュメンタリー映画のための作品であり、結果的にラストアルバムになるだろうソロでは2枚目。Stars of the Lidのシニカルさ(それが味だが)から抜け出したような、柔らかなアンビエント。アンビエントというよりそこから進んだクラシカルな弦楽音楽の成分もかなり強まっているので、この先の音が楽しみだった。


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■辻井伸行 / ショパンコンクール 2005 (2009)

 これは来年へ続くためのセレクト。ずっとクラシックが聴きたいと近年思ってきたが、はじめて少しはまっているCD。よく聞いているアンビエントからの流れでクラシックに興味を持っていたので、サティやバルトークや近代の?まったり系を調べていたのだが正直ピンとくるものが無かった。楽器の独奏自体もほぼ興味が無く、皆が好きなグールドもキースジャレットにも首をかしげてきたが、ショパンだったのか!?ショパンが誰かもまだわからないが、わからないからこれから楽しみだ。辻井氏のピアノはやわらかくてキラキラして聞こえる。この17歳の少年期の録音だから特にそう感じるのかもしれない。