試乗記

日産の新型「リーフ」試乗! 第3世代で進化した乗り味とは

第3世代となる新型「リーフ」に試乗

新型リーフの進化点

 2010年に登場した日産「リーフ」。2017年に2代目が登場し、これまで世界で70万台を販売(日本は18万台)。280億kmを超える総走行距離となり、CO2排出量削減は19億kgにも達するのだとか。そんなリーフがついに3代目へと突入する。実は3世代続いたEV(電気自動車)も世界で初めてのこと。EVのパイオニアは次にどんな一手を見せてくれるのか?

 クロスオーバースタイルに刷新されたリーフはこれまでの5ドアハッチバックスタイルに見慣れてきた感覚からすれば、かなりのボリューム感がある。「アリア」が採用していたEV専用のCMF-EVプラットフォームをひと回り小さくして使っていると聞けばなおさらだ。

 けれどもサイズを確認してみればそれほど違いはないようだ。旧型の全長×全幅×全高は4480×1790×1540mm(ルーフアンテナ装着時は全高が1560mm)、ホイールベースは2700mm。最小回転半径は5.4m(16インチ仕様は5.2m)。対する新型は4360×1810×1550mm(プロパイロット2.0装着車は全高が1565mm)、ホイールベースは2690mm。最小回転半径は5.3m。全幅は20mmワイドになったが全長は120mmも短く、ステアリングのキレ角もしっかりとしているため、取り回しのしやすさはそれほど変わらないのだろう。

 また、旧型比で車体のねじり剛性は86%アップ、ラックアシスト式電動パワーステアリングに改め、ステアリング剛性は45%アップ、マルチリンク式リアサスペンションは横剛性を66%アップとする一方で、前後剛性を28%低減することでしなやかさを持たせている。

 エクステリアは明らかに空力重視。フロントマスクの滑らかなデザインにはじまり、ホイール開口部の最小化、電動格納式ドアハンドルの採用、そしてファストバックシルエットもそうだろう。また、ボディ下面もフルアンダーカバーが与えられ、ジャッキアップポイントやアームにまでもカバーが奢られている。結果としてCd値は0.26を達成。航続可能距離は78kWhバッテリを搭載し、215/55R18サイズを装着する「B7 X」というモデルで最大702km(WLTC)を実現する(235/45R19サイズ装着のB7GでもWLTCは685km)。旧型は60kWhバッテリ搭載のe+でWLTC航続距離は450kmだったことを考えるとかなりの成長といっていい。

新型リーフではバッテリサイズ78kWhの「B7 X」(518万8700円)と「B7 G」(599万9400円)をラインアップし、B7グレードが搭載するYM52型モーターは最高出力160kW(218PS)、最大トルク355Nm(36.2kgfm)を発生。ボディサイズは4360×1810×1550mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2690mm
写真の「B7 X」は18インチホイールに215/55R18サイズのダンロップ「e. SPORT MAXX」をセット
インテリアではフラットなフロアと開放感のある足下空間、使い勝手のよいラゲッジルームを実現。12.3インチの大型デュアルディスプレイを採用し、Google搭載のNissanConnectインフォテインメントシステムを備えた
日産初の調光パノラミックガラスルーフ(遮熱機能付)を採用。電子調光技術によりボタン1つでガラスの透明度を変えられ、遮熱機能を持たせることで年間を通じて快適な室内空間を実現

 パワートレーンはモーター、インバーター、減速機が一体となる第3世代の3-in1EVパワートレインを採用。高剛性ハウジングで一体化しつつ容量は10%削減、モータートルクは4%向上している。また、モーターは磁石を6分割し位相をずらしたスキューローター(斜め構造配置)を使うことで、回転振動を抑えている。これと高剛性ハウジングの組み合わせがどうなるのかが楽しみだ。

ロングドライブでも不満なし

テストコースにて新型リーフに乗った

 今回は発売前ということもありテストコースでの試乗となったが、まず走り始めて感じたことはそのパワートレーンが生み出す静けさだった。滑らかに走りつつ、その気になれば最大トルク355Nmを生み出すそれは、静粛性に優れた感覚がある。アリアにも搭載されていないものがコチラに奢られるという逆転現象がやや気になってしまうくらいである。

 静粛性はそれだけでなく、フロアやドアまわりからも感じる。ただ、ほかが静かになりすぎたのか、窓枠の端の部分からの風切り音がやや目立っていたところが惜しい。乗ったのがまだプロトタイプだから、本番仕様でどうなるのかは気になる。

EVならではの静粛性に優れた感覚

 シャシーは基本的にアリアと同じということで若干の心配があったが、セッティング方向は大幅に見直されたとのこと。やはりアリアの乗り味のハードさは、日産にも自覚症状があったようだ。新型リーフではその反省も踏まえ、足まわりをより日本の環境に合わせたセッティングを実行。スプリングレートや減衰力の出し方といった考え方を刷新したとのこと。EVは車軸の間に重たいバッテリがあり、しかも高トルクがあるために特にピッチ方向の挙動を制御しにくいらしい。乗り心地を狙ったアリアは乗り心地を持たせつつ、ピッチ方向の動きはダンパーで担うということをしたために突き上げが大きかったのだとか。

 けれども今度のリーフはたしかに違う。ピッチ方向の動きはスプリングで抑え、ダンパーはしなやかに動かす方向としたのだろう。イヤな突き上げも少なくなったように感じるし、フラットな感覚もある。その上で無駄に動くこともなく、常に扱いやすさを生み出してくれるところが魅力的。コーナリングからの立ち上がりではかなり強烈にフロントが引っ張ってくれる。

総じて上々の足まわりセッティングの新型リーフ

 こうした乗り味はリアシートに乗ったとしてもたしかに感じられるところで、これなら十分に快適性が保たれているように感じる。広さもまずまずで、暑さを感じにくい調光パノラミックルーフも暑い日にはかなりありがたい。どの席に座ったとしてもこれなら安心だった。

 短い試乗時間ではまだまだ分からないところも多いが、これならロングドライブに出かけたとしても不満となるようなことはないだろう。航続可能距離という課題を見事にクリアし、あらゆる領域で質感を高めた今度のリーフ。公道で走る日が待ち遠しくなる初対面だった。

次はリアルワールドでその実力を試してみたい
橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。2019年に「86/BRZ Race クラブマンEX」でシリーズチャンピオンを獲得するなどドライビング特化型なため、走りの評価はとにかく細かい。最近は先進運転支援システムの仕上がりにも興味を持っている。また、クルマ単体だけでなくタイヤにもうるさい一面を持ち、夏タイヤだけでなく、冬タイヤの乗り比べ経験も豊富。現在の愛車はユーノスロードスター(NA)、MINIクロスオーバー、フェアレディZ(RZ34)。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:安田 剛