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ホイール交換でクルマの乗り味はどう変わる? レイズの「履き替えインプレ走行」でレーシングドライバーが体感&解説
千代勝正選手たちが筑波サーキットで実証実験を実施
2025年9月30日 12:27
- 2025年9月28日 実施
老舗ホイールメーカーのレイズは9月28日、茨城県にある筑波サーキットで開催されたチューニングカーの祭典「ハイパーミーティング」にて、ホイール交換による乗り味の違いをレーシングドライバーが実証する「RAYSホイール履き替えインプレ走行」を実施した。
テスト車両は、日産「フェアレディZ(RZ34)」、ホンダ「シビックTYPE R(FL5)」、トヨタ「GR86(ZN8)」の3台。ドライバーは、全日本ジムカーナ選手権で24回チャンピオンを獲得しているレジェンド山野哲也選手、SUPER GTのGT500クラスで日産のエース車両「23号車 MOTUL AUTECH Z」のステアリングを握る千代勝正選手、筑波サーキットのスタッフからレーシングドライバーへと転身して、スーパー耐久などに参戦している蘇武喜和選手の3人が務めた。
また、この企画ではレーシングドライバーが運転する車両の助手席に乗り、ホイール交換による乗り味の違いを体感できる企画も併催していて、記者も千代選手が運転するフェアレディZの助手席に乗せてもらえることになり、一緒にホイール履き替えによる乗り味の違いを体感してみた。
テスト車両1:日産「フェアレディZ(RZ34)」
記者も一緒に体感したフェアレディZでは、鍛造1ピースアルミホイールのボルクレーシング「TE37 SAGA S-plus」と「ZE40」の比較。サイズはどちらも18インチだが、重量はTE37 SAGA S-plusが前8.97kg、後9.65kg、ZE40が前8.27kg、後8.99kgと、軽さだけでいえばZE40が有利。タイヤは横浜ゴムのアドバンAD09で、冷間(冷えた状態)の空気圧を170kPaで統一。普段ノーマルホイールのフェアレディZに乗っているという千代選手は、どんな風に感じるのだろうか?
テスト車両2:ホンダ「シビックTYPE R(FL5)」
シビックTYPE Rは、元ホンダの社員でもあり、独立してから「CR-X」「シビック」「インテグラ」「S2000」「NSX」と、数々のホンダ車で全日本ジムカーナ選手権に挑んで、通算24回のチャンピオンを獲得している山野哲也選手が担当。最初はノーマルホイールで、続いてレイズの鍛造1ピースのボルクレーシング「ZE40」「TE37 SAGA S-plus」へと履き替えを実践。前後同サイズで、ZE40は1本8.36kg、TE37 SAGA S-plusは1本8.54kg。重さは4本合算しても0.72kgしか差がない。果たしてこれで何か違いを体感できるものなのか? サイズはすべて18インチで、装着タイヤはダンロップの「ディレッツァZIII」を履き、冷間170kPaで統一。
テスト車両3:トヨタ「GR86(ZN8)」
GR86は、ノーマルホイールから、金属を加圧して製造する“鍛造”ではなく、型に金属を流し込んで成形することで幅広いデザインに対応できる“鋳造”で製造している「グラムライツ」ブランドでの比較。最初に履く「57NR」は1本9.60kg、続いて履く「57TR」は「57Transcend」をベースにした新作で、まだホームページにも公開されていない近日登場予定の新モデル。重さは1本9.22kg。前後同サイズなので、こちらも4本での差はわずか1.52kg。デザインもどちらも10本スポークで見た目はそっくり。装着タイヤはダンロップの「ディレッツァZIII」で、冷間170kPaで統一しての比較試乗。
ホイールごとの乗り味の違いをトークショー形式で解説
イベント会場では、「履き替えインプレ走行」後にトークショー形式で、レーシングドライバーによる評価を紹介。チューニング雑誌REVSPEEDの編集長である塚本剛哲氏の進行で実施され、レイズの企画本部 広報マーケティングGr.チーフ 高下貴行氏は、「3台とも履き替えインプレ走行で使用するタイヤは、同盟柄の同サイズで、できる限り(外気温や路面温度など自然条件以外)イコールコンディションで実施しました」と説明。
──純正ホイールとレイズホイールでの違いは何でしょう?
蘇武選手:最初に感じたのは、重さが全然違うこと。もう走り出しの転がりがすごくよくてピットロードを走り出した時点で違いを感じました。また、ブレーキもよく止まるし、加速もよかったです。ノーマルホイールから履き替えての比較だったので、1本あたり1kgちょっとですかね。本当にちょっとの違いですが、4本だと4kg以上の違いになるのは大きいですね。クルマのパワーを上げたのかなって感じるぐらい、もう走り出しから軽快でもう全然フィーリングが違いました。
千代選手:ノーマルホイールとの違いですが、僕は普段からノーマルのフェアレディZに乗っているのですが、こんなにフロントが入るって感じたことがない。ちょっとコーナーのイン側を刈り込んじゃったんじゃないかって思うぐらいでした。回頭性がすごくよくなっているのを感じましたね。実はSUPER GTのGT 500に参戦しているNISMOチームにホイールをサポートしてもらっていて、正直レイズさんにはいろんなわがままを聞いてもらっています。
千代選手:このデモカーは今日初めて乗らせてもらったんですが、すごい乗りやすいですね。チューニングもすごくよくて、足まわりもしなやかで、あとでどこのサスペンションを使っているのか聞きたいなと思ってます。ブレーキはエンドレスの大きなブレーキキャリパーとブレーキローターが付いているし、フェアレディZでサーキットを走ろうと思ったら、ブレーキと冷却など結構やらなきゃいけない部分が多いんですけど、きちんとチューニングされていて乗りやすくて楽しかったです。
レイズ高下氏:ありがとうございます。SUPER GTで履いているレース用ホイールだけじゃなく、市販品ホイールでもしっかりと性能を体感できることを味わっていただけてよかったです。
──山野選手はいかがでしたか?
山野選手:ノーマルホイールとレイズホイールの違いをパッとひと言で答えると、ノーマルホイールはタイヤが細く感じて、レイズホイールはタイヤが太く感じるのが1番の違いだと思います。シビックTYPE RはFF(フロントエンジン、フロント駆動)でハイパワーなので、フロントタイヤにかかる負荷が大きいんですね。
ノーマルホイールはコーナリングを立ち上がっていくと、コーナー出口で縁石を超えちゃいそうになり、「おっとと!」ってなるのですが、レイズホイールだとそれがすぐに収まり、オン・ザ・レールで走れる。実際タイヤの太さ同じなのに、太さが違うぐらいの感触を得られました。
──タイヤの角まできっちりと使えるって感じですかね?
山野選手:そうですね。タイヤにはショルダー部分があり、例えば245サイズなら、実際にタイヤが路面と接地してる面積はだいたい225前後かなっていう感じ。タイヤの端は接地していない場合があるのですが、レイズホイールはそこもきっちり使えている感覚です。
──続いて、鋳造1ピースホイールの“グラムライツ”ブランドの「57NR」と「57TR」は、スポークの数は一緒でスポークがリムにかかるエンドのデザイン処理が違うだけ。これで違いが分かるのかなと思いましたが……。
蘇武選手:僕も正直なところ、見た目が全然同じ。パッと見たらほとんど分からない。重さもほとんど変わらないですよね?
レイズ高下氏:はい、1本あたり0.5kgも変わらないとかぐらいなので、4本で1kgも差がないぐらい。デザインも似ておりますが、重さに関してもほぼ同等になっております。
蘇武選手:乗る前はちょっと不安もあったんですけれど、乗り出したらやっぱり全然違う。どちらかというと「57NR」のほうが高剛性で、しっかりとしたステアフィーリングだと感じました。「57TR」はどちらかというと、少しマイルドな感じのフィーリングで、しなりがいい具合にあって、トラクションのかかりもいいように感じました。また、高剛性ホイールのほうが滑り出しがちょっと唐突なところもありますが、しなやかなホイールだとやっぱり滑り出してもすごくマイルド。ドライバーにこれから滑るよって教えてくれるインフォメーションが分かりやすかった。高剛性の「57NR」のほうが高速コーナーに向いていて、「57TR」はしなりがある分、低速コーナーでもよく曲がってくれる印象を感じましたね。
──続いて千代選手は、鍛造1ピースホイール“ボルクレーシング”ブランドの「TE37 SAGA S-plus」と「ZE40」を履き替えての体感はいかがでしたか?
千代選手:ホイール比較をロードカーでやるのは初めてなんですけど、これは面白いですね。結構というか、2つのキャラクターが歴然と違う。「TE37 SAGA S-plus」はフロントの入りがすごくよくて、回頭性がとにかくいいなと。クルマがよく曲がるし、なんか軽やかな感じで走れました。
それに対して「ZE40」は少しリア勝ちな感じで、ターンインからすごいリアスタビリティがあって、コーナー全体で“ペタッ”とする、重厚感がある。トラクションのかかりがいいので、よりハイグリップタイヤに合うのが「ZE40」だと思いました。逆にライトウェイトな車両や、クルマを振り回したい人、やんちゃな運転をするなら「TE37 SAGA S-plus」かなっていうイメージですね。
外から見ていたら「ZE40」はクルマの動きはあまり面白くないかもしれない。そつなく速くて優等生な感じ。振り回しながら、抑え込みながら、僕がGT500にデビューしたころのようなやんちゃな走りをするなら「TE37 SAGA S-plus」って感じでしょうか。
実はデータロガーを積ませてもらっていて、自分でちょっと分析したんですけど、「TE37 SAGA S-plus」のほうが低速コーナーでアドバンテージがあり、バックストレートまではタイムが先行していたのですが、最終コーナーの飛び込みと立ち上がりは「ZE40」がちょっと上まわる感じで、ラップタイムは0.1秒も変わらなかったです。
──その違いの理由を山野選手にさらに掘り下げて解説してもらいましょう。
山野選手:ハイスピードコーナーになればなるほど剛性の高さが際立つんです。筑波サーキットは最終コーナーまでは低速コーナーが多いんですよね。でも、最終コーナーでかなり高速コーナーにレイアウトが転じることから、「ZE40」が「TE37 SAGA S-plus」を逆転するシーンがあった。
千代選手:ありがとうございます! さすがです(笑)
山野選手:僕もホイールテストは今まで結構やってきました。やっぱり特性の違いは必ず出てくるので、その特性に対して甲乙をつけたくなっちゃうんですよね。でも今日分かったことは、走るステージや装着するタイヤによって、変えてもいいんだなっていうのが改めて分かりましたね。
で、まず「ZE40」は走り始めて操舵に対してクルマが軽く動くんですよ。ふわっとフロントノーズがすぐに曲がる方向に向くんです。ただちょっとグリップが薄く感じました。薄く感じてなんかちょっと心配だな。でもライントレースはいいなっていうのをまず感じました。
その後に乗った「TE37 SAGA S-plus」のほうが深いグリップを感じて、アスファルトの中にタイヤのゴムが埋まり込んでいるような感覚でした。でもライントレースに関しては「ZE40」のほうがあって、特に最終コーナーとかダンロップコーナーから先とか高速コーナーはTE37 SAGA S-plusのほうがやや曲がりにくい感じ。
タイヤのグリップが高く感じるのが「TE37 SAGA S-plus」で、クルマの動きが軽く感じるのが「ZE40」。なぜそう感じたのかというと、これは「ZE40」はタイヤのグリップよりも剛性が勝っているからで、もっとグリップの高いタイヤのほうがマッチすると思います。「TE37 SAGA S-plus」は今回のタイヤとシビックTYPE Rとはベストマッチだったんだと思います。
なので、使うタイヤから考えると「TE37 SAGA S-plus」のほうがややストリート向きで、「ZE40」のほうがよりサーキット志向で、ハイグリップなタイヤを履かないとホイールの持つ性能を引き出せないように思います。
レイズ高下氏:レイズとしても、どの製品が1番という甲乙をつける訳ではなく、街乗りもサーキットも含めて、こういった走りをする人にはこれですよと、選択肢をフォーマット化していきたいなと考えています。
今日初めて一般の方に助手席に乗って違いを感じてもらう企画を実施しましたが、今後もいろいろな場所で、実施したいと考えています。現在「レイズファンクラブ」というのを立ち上げていまして、入会していただくと、こういった試乗イベントの案内だったり、お得な情報など、先行して受け取れますので、ぜひ入会していただければと思います。