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三菱自動車、「トライトン」でAXCR2025総合優勝したドライバーとコ・ドライバーが来日し優勝報告会を開催

2025年9月2日 開催
アジアクロスカントリーラリー2025で総合優勝した三菱トライトンのドライバー、コ・ドライバーが揃って来日し優勝報告会を行なった

 9月2日、三菱自動車は本社ショールーム(東京都港区)で、8月に開催されたアジアクロスカントリーラリー2025で総合優勝した「チーム三菱ラリーアート」の優勝報告会を行なった。

 アジアクロスカントリーラリー(以下、AXCR)はアジア地区最大級のFIA公認クロスカントリーラリーであり、トライトンで参戦している同チームは2022年以来3年ぶりとなる総合優勝を果たした。

 優勝報告会に登壇したのはドライバーのチャヤポン・ヨーター選手(タイ)、コ・ドライバーのピーラポン・ソムバットウォン選手(タイ)、チームの総監督を務めた増岡浩氏の3名。なお、トライトンは三菱がグローバル展開するピックアップトラックで、2023年(日本では2024年)に発売された現行モデルでは初めての栄冠となった。

三菱自動車の本社ショールーム(東京都港区)で開催された優勝報告会に登壇した3名。左からチームの総監督を務めた増岡浩氏、ドライバーのチャヤポン・ヨーター選手(タイ)、コ・ドライバーのピーラポン・ソムバットウォン選手(タイ)
必勝で臨んだ2025年大会だったが毎日混戦が続き、胃が痛む一週間だったと語るチーム総監督の増岡浩氏
左からチーム賞、総合優勝、改造クロスカントリークラス、それぞれの優勝トロフィー
三菱自動車本社ショールームに展示されたトロフィーと参戦マシンのレプリカ

 今回タイから来日したドライバーのチャヤポン選手は、WRCやダカールラリーなど世界で戦う三菱に小さい頃から憧れていたそうで、「チーム三菱ラリーアート」の一員としてステアリングを託され、優勝できたことがとても嬉しいと語った。ちなみにこの勝利に向け1年間で20kgの減量をしたそうで、約30kg軽量化されたマシンと合わせて50kgの軽量化を達成したこととなる。

 一方、もともとスリムな体型のベテランコ・ドライバー、ピーラポン選手は、ロードブックで指定されたルートを常に研究し、いかに簡潔な言葉でチャヤポン選手に伝えるかを考えながら戦った8日間だったと今年のAXCRを振り返った。

 ちなみにクロスカントリーラリー(ラリーレイド)のルートは走行の前日に手渡されるロードブックで指定されるため、コ・ドライバーの役割は、事前の試走によりペースノートを作成して臨むWRCなどのスピードラリーとは異なり、まさに地図(ルートブック)を読みながら道案内を行なうものとなる。

 毎日手渡されるルートブックも100ページ以上あり、各チームのコ・ドライバーは1日の走行を終え疲れた体で、毎晩全てのページを研究・検証し翌日の走行に備えるという。ドライバーがペースを上げてタイムを削っても、一度のミスコースによるロスタイムはそれを大きく上回ってしまうことが多いクロスカントリーラリーにおいて、コ・ドライバーの重要性は極めて大きい。

 今年のチャヤポン・ピーラポン組はルートが複雑で難しいところでは多少ペースを落としながらも、出すべきところでしっかりとスピードを上げ、メリハリのある戦い方で臨んだそうだ。

AXCRのロードブック。1日分だけでも150ページ近くの指示がありコ・ドライバーの役割は非常に大きい

 AXCRにおいてミスコースとともに怖いのは、東南アジア特有のドロドロした赤土のマッドステージでのスタックや、マシンに大きなダメージを与える路面のギャップや岩場といった過酷な路面だ。特に多くの参加選手が難しかったと口をそろえる今年のコースでは、三菱をはじめライバルのトヨタ、いすゞ、フォード勢もマシンに大きなダメージを受けながらの戦いとなった。それだけにトライトンの勝利は速さとともにマシンの高い堅牢性の証となったであろう。ちなみに現行トライトンは3世代目となるモデルだが、今年の勝利により3世代すべてのトライトンがAXCRチャンピオンマシンとなった。

路面の過酷さもAXCRの特徴の1つ。マシンの耐久力はもちろん、勝利にはメンテナンスを行なうサポート体制も重要だ
現地でのサポートは、開催地タイでは未発売のデリカD:5で行なった。実用性に優れるモノボックスタイプでありながら、堅牢で高い走破性を備えているのは歴代デリカシリーズの大きな特徴だ

 ダカールラリーやWRCなど、過酷な戦いの中で磨かれてきた三菱のマシンは、伝統的にタフなイメージを持っている人も多いだろう。現行のアウトランダー登場時に増岡氏は「昨今の気候変動によるゲリラ豪雨など様々な自然環境や災害の中でも確実に家に帰ることのできる強さを備えた、安心できる車に仕上げた」と語ったが、堅牢さは昔も今も三菱のクルマ作りにおいて変わらない大きなファクターなのであろう。

 強固なフレームボディを備えながら乗用車としての資質も高く、グローバルに展開するトライトンもそんな1台だ。AXCRはアジア地区の大会ということで、その活動規模もかつて世界の頂点で争っていた時代とは少々異なる。しかしながら三菱は、技術支援という形をとりながらこのAXCRにアウトランダーPHEVで参戦し、電動車による過酷なオフロードでの可能性を探るなど、実はこれまでも地道なチャレンジを行なってきた。速さと強さにこだわる三菱にとって、今回の勝利が一度火が消えかけたモータースポーツ活動、そしてラリーアート活動の復活の起爆剤になることを期待したいものだ。

タイのビーチリゾート パタヤで行われたAXCRのセレモニアルスタート。三菱のようなワークス系チームから小規模なプライベーターチームまで1台1台が集まった観客の前を走り抜けラリーはスタートする
全国各地のご当地デリ丸の前の2人。雪の北海道はタイの人にとって大人気の観光地だが、チャヤポン選手は雪よりも北海道で開催されているXCRスプリントカップ北海道に出場してみたいとのことだ。