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モータージャーナリストの重鎮 日下部保雄氏、36年ぶりのラリー挑戦へ!
MUSCLE RALLYチームのヤリスで「丹後半島ラリー2025」参戦
2025年8月29日 16:58
- 2025年8月23日~24日 開催
クルマ好きなら誰でも知っている日下部保雄さん。モータージャーナリストやドライビングインストラクターとして現在も活躍中で、Car Watchでも「日下部保雄の悠悠閑閑」連載でもおなじみだ。
その日下部さんは、学生時代からモータースポーツ活動を行なってきており、全日本ツーリングカー選手権やニュルブルクリンク24時間耐久レースをはじめ、数々の国内外のレースで活躍してきた。さらに1979年、マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝という記録を持ち、そして1984年の全日本ラリー選手権Aクラス・チャンピオンでもあった。
今年75歳を迎える日下部さんが、再びラリー活動を開始した。日下部保雄“選手”が全日本ラリー選手権に挑戦していたのは、今から36年前のことだ(当時の車両は三菱自動車のスタリオン)。
競技の内容が大きく異なっており、昔と今では実は全く違うラリーに
MUSCLE RALLYチームからのオファーに対し「最初はね、断ってた。無理だって。でもチームからすごく熱心に勧めていただいて。それでウチに帰って家族に相談したら、『いいんじゃないの?』っていう。昨日までラリーやってたんじゃなくて、何十年ぶりかにラリーやるんだよ? と返したんだけど、『でもずっと走ってるからいいんじゃないの?』ってそういうノリだったんです。家族があと押ししてくれて、関係者みんなで応援してくれるって言っていただいたので、自分でもちょっとむずむずと心が動いてやってみたくなったんです」と日下部選手は今回の参戦に至る心境の変化を語る。
しかし、ペースノートを使う現在のペースノートラリーは、当時のラリーとは大きく異なっている。日下部選手にとってペースノートラリーは初めてということもあり、今回ペアを組むコ・ドライバー(ナビゲーター)の奥村久継選手と、ラリーウィークの金曜日の午後に練習車両を使った事前のトレーニングを行なっていた。
この練習はペースノートの作り方からスタートした。ステアリングにハンドル舵角を記入し、それをベースにまず日下部選手が走りながらコースの状況を伝え、それを奥村選手がノートに記入。今度はそのノートを奥村さんが読み上げながら走行。そこで足りなかった情報やズレていた箇所を修正してノートの精度を上げていく。
これを何度か繰り返し、ノートに入れ込む情報を整理し、さらに読み上げのタイミングなどを合わせ、本番に臨むこととなった。この事前練習で、奥村コ・ドライバーは「熱心に予習をされていたし、運転スキルは相当高いので順調に練習を行なえました」とコメント。
仮想敵の出現でますますおもしろく?
「不安ももちろんあるんですよ。ラリーは体力も使うし。それに僕らの時代はペースノートが始まる前だったんでやったことがないし。当時はグラベルだったんですが、今回は舗装路。グラベルだとお尻振ったりして多少ごまかしが効くけど、舗装だとそういうわけにはいかないし、スピードも出てしまう。だからペースノートって多分重要だと思うんですよ」(日下部保雄選手談)。
日下部選手が再デビュー戦として参戦したのは、JAF中部近畿ラリー選手権第4戦「丹後半島ラリー2025(8月23日~24日)」。いわゆる地区戦である。林道2か所を使用したSS(スペシャルステージ)は、順走と逆走を組み合わせ全部で6本(競技区間=28.66km、総移動距離は140.32km)。2024年まで開催されていた全日本選手権「ラリー丹後」でも使用されていたコースを使うが、すべてターマック(舗装路)となる。
ゼッケン50を付けたMUSCLE RALLYチームの「エムリットヤリス(5BA-MXPA10)」はDE-5クラスに参戦。この車両は過去にはタレントの哀川翔選手、元スピードスケート日本代表の清水宏保選手が乗ってきた1台。この車両が日下部保雄選手に託された形となった。
「丹後半島ラリー2025」は地方戦であるものの、エントリー数は全73台と非常に多くのエントラントを数えることとなった。その中には、同じくモータージャーナリストで、全日本ラリー選手権に参戦を続けている現役ラリードライバーの清水和夫選手(71歳)もダイハツ・コペンで参戦していた。
チームも本人も特にタイムを意識して参戦しているわけではなかったものの、清水選手は出走順が日下部選手のすぐ後ろということもあって、どうしても気になる存在に。この2人、SS1では日下部選手が清水選手に対して3秒遅れだったものの、SS2では2秒遅れ、SS3では0.2秒遅れ、SS4では3秒速いという展開に。SS5でも3秒速かったが、SS6は3秒遅れ、最終的には24分31秒3というタイムでフィニッシュとなった。
一方の清水和夫選手はトータル24分29秒0と、このレジェンド同士の競り合いは日下部選手が僅差で負けてしまったものの、トラブルもなく危なげのないラリー運びで、チームの目標である「完走」を達成した。
日下部選手は完走後、「初めてペースノートを作ったのが一昨日ですよ。距離感を測ることを中心にやってきたことは間違ってなかったなと思いましたが、やっぱりレッキ(事前走行)では実際のスピードを出してないから、なかなか掴み切れなかったです。実際に走行してみたら、やっぱズレが出てきたんですけど、同じSSを2回ずつ走るので、2回目をペースノートを頼りながら走っていくと、やっぱりタイムがちゃんと上がるんです。そういうのが分かっただけでも良かったし、とっても楽しかった。やっぱりラリーはいいなと思いました」とコメントしてくれた。
MUSCLE RALLYチームと日下部保雄選手の挑戦は始まったばかり。今後の展開に期待したい。