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藤島知子の「FCR-VITA KYOJOクラス」参戦レポート
第2回:真夏の富士スピードウェイは熱かった
2025年8月31日 12:00
- 2025年8月16日 開催
2025年8月16日、富士チャンピオンレース第4戦で「FCR-VITA 第3戦」が開催された。気温が30℃超えの日々が続いていたこともあり、暑さ対策は万全を期してサーキット入り。お盆休みの真っ最中とあって、富士スピードウェイは家族連れで訪れる来場者の姿も多く、パドックは活気に溢れている。
1週間前にテストで訪れた時はエアコンの涼しさに慣れてしまった身体にこの暑さは結構きつく感じたが、身体のコンディションを整えるのはもちろんのこと、気温が低い時期に走るのと比べて、マシンにもたらす変化を意識しながら調整に入った。
男女混合で行われるFCR-VITAのレースは参加台数が多い。今回のレースにエントリーしたのは45台、そのうち、女性ドライバーのKYOJO-VITAクラスは12名となり、参加型レースの盛り上がりを肌で感じるカテゴリーだ。
量産車で競い合うワンメイクレースが全国各地で行われているが、それらと比べると、レース専用車であるVITA-01の構造は至ってシンプル。公道を自走して移動できないぶん、搬送費用はかかるものの、パーツさえ手に入れば(レース開催日は車両を製造しているウエストレーシングカーズが現地にパーツを持ってきて販売している)、何か起こっても現地で修復して復帰しやすい。
また、現代の量産車には当たり前に付いてくる電子制御がついていないぶん、タイヤが限界を超えればロックやホイールスピン、横滑りを起こし、パワステもついていなかったりする。クルマに起こる本来の挙動をダイレクトに体験できるので、純粋に腕を磨けるカテゴリーであることが魅力なのだ。エンジンは1.5リッターで5速MT、富士スピードウェイの最高速度は205km/h前後とオーバースペック過ぎず、若手から還暦を超えたベテランまでが楽しめるレースであることも、様々なサーキットでこの車のレースが盛り上がりを見せている理由といえるだろう。
また、今回はマレーシア出身でレースの実績を上げている若手の女性ドライバーも参戦し、国際色も豊かになりつつある。話によると、東南アジア諸国では、まだ参加できるレースのカテゴリーが少ないそうだが、こうして様々なレースが盛んに行われている日本の舞台に挑みに来てくれていることは、今後さらなる広がりを見せていくのかもしれないと感じた。
FCR-VITAの予選と決勝はいつもどおり1dayで行なわれる。6時45分から車検が行なわれ、マシンは車検員がピットを巡回してチェック。今季はすでに富士スピードウェイのレースに参戦していたが、レーシングスーツを新しいスポンサーロゴとデザインで作り直してもらったため、車検場に装備品を持参してチェックしてもらった。
ドライバーズブリーフィングを終えて、8時25分から20分間の予選がスタート。ここまで天候は安定していたものの雲行きが怪しい。乗り込む直前、スマホにはゲリラ豪雨の可能性を示す通知が届いた。
「早めにタイムを出しておかないと、雨が降ったら基準タイムをクリアできないリスクがあるからな」と、メカニックに注意を受けて、予選の20分をどう乗り切るかイメージしてみる。いざコースインすると、まずはニュータイヤを温め、グリップを探りながらペースを上げていく。数周走って単独走行で2分02秒台後半に入ったものの、思うようにタイムが上がらない。
予報に反してまだ雨は降らなさそうなので、今度はボトムスピードを上げられるように意識しながら、前走車のスリップストリームについて、9周目にどうにか02秒台前半までタイムアップ。思うようにタイムが縮められず、27番手に留まった。
11時45分になるとコースインの時間がやってきた。天候は曇りで、気温は28℃だ。フォーメーションラップを終えて、レースがスタート。
中団グループからスタートした私は、スタートの蹴り出しはわるくなかったものの、アウト側からアプローチしたら、1コーナーでインに数台のマシンがせめぎ合っていたので、接触を避けるためここは慎重に通過。まだ手が届く位置にいる前方のマシンから離されないようについていくが、300Rのアウト側では2台のマシンが接触してカウルが外れている。黄旗かと思ったが、まだ出ておらず、わずかに車速を緩めた隙に3台ものマシンに抜かれてしまった。
とはいえ、まだレースは序盤。タイミングを見計らいながら抜きどころを狙う。しかし、そう思っていた矢先、2ラップ目の1コーナーの立ち上がりで、新しく配置されたグラベルに1台のマシンがスタック。危険な可能性がある2か所の車両を救出するためにセーフティカーが導入された。
6ラップ目に差し掛かるタイミングでレースは再開。数珠つなぎに並んだマシンたちは我先へと鼻息荒く勢いを増していく。富士スピードウェイのセクター3は低速でターンするダンロップコーナーから一気に急勾配を駆け上がるレイアウトになっているが、セーフティカー解除の直前に前走車たちの車速が落ちたかと思えば、一気に車速を高めて不安定になったこともあり、私はスタートで少し出遅れてしまった。とはいえ、離れたら追いつけなくなってしまうので、「離されまい!」と集団の背中に食らいついていく。
決勝は予選と違い、いつもと違う走行ラインで勝負をかけることになるが、プレッシャーをかけたり、抜けるポイントを探って飛び込んだりしても、失敗して車速を落としてしまうことがある。セクター3で前の車両に接近するものの、抜き去るほどの勢いがつかない。8ラップ目、上位からスタートしてスピンした車両に再び追い抜かれてしまう。残るは2ラップ。どうにか前に行きたいのに、そう簡単に譲ってくれるわけもないが、近づいて、また僅かなミスで離されてファイナルラップに突入した。ダンロップで迫る。でも、あと少しの速さが足らず、抜けないのがもどかしい。最終コーナーを立ち上がったら後続車両が私のスリップについてきたが、ここで抜かれるわけにはいかないとブロックラインで抑えて、総合26位でチェッカー、KYOJO-VITAクラスで9位の結果となった。
FCR-VITAレースの総合優勝は、7号車ZR WINMAX VITAの兒嶋弘訓選手、2位は101号車IDIアラゴスタMC★VITAの川福健太選手、3位はKYOJO-VITAクラスでトップとなる225号車KTMS VITAの富下季央菜選手が獲得した。
今シーズンのFCR-VITAのスプリントレースは今回で一区切り。次戦は12月20日に富士スピードウェイで開催される2時間耐久レース「MEC120」にエントリーする予定だ。少し間が空いてしまうが、今回の反省と気づきを活かして、さらなるレベルアップを狙いたい。