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アイシン、将来の9in1電動化ユニット「機能統合電動ユニット」を技術説明会で公開

第3世代イーアクスルの技術を組み込む

アイシンが開発中の第3世代イーアクスル。減速比を従来の2倍にしてモーターを小型&高回転化。体格も1/2を目指す

 アイシンは8月27日、同社の歴史やコア技術、将来技術を説明する「パワートレイン技術説明会」を都内で開催した。この技術説明会では、主に車両という観点から同社の持つ技術や製品を詳説。幅広い事業領域を知ってもらうというものになっていた。

 同社の概況については、アイシン 製品開発センター パワートレイン製品本部 本部長 糟谷悟氏が説明。アイシンはハイブリッド車用のハイブリッドトランスミッション、バッテリEV用の電動化ユニット「eAxle(イーアクスル)」などで知られているが、糟谷氏は「アイシンはグローバルサプライヤー」であると言い、車両の統合制御やクルマのほとんどの領域をカバーしており、クルマの価値を向上することに取り組んでいるという。

アイシン株式会社 製品開発センター パワートレイン製品本部 本部長 糟谷悟氏

 単に部品を取り寄せて組み立てているのではなく、設計・製造に一貫して取り組んでおり、これがアイシンの強みになっているとのことだ。

 アイシンでは、前述のようにハイブリッド車用のトランスミッションやモーター、バッテリEV用のイーアクスル、そしてもちろんICE(Internal Combustion Engine、内燃機関)用のトランスミッションなどを提供しており、「アイシン流のフルラインアップ戦略を進めていきたい」とした。

アイシンのもの作りについて
事業の歩み

 製品については、製品開発センター パワートレイン製品本部 PTシステム製品企画部 部長 須山大樹氏が詳説。アイシンのこれまでの歩みを解説したほか、ソフトからハードまでを持っていることがアイシンの強みであるとし、今後は、ICE、PHEV/HEV、BEVなど「地域ごとに異なるパワートレーンミックスにどう対応するかが大切」と語った。

アイシン株式会社 製品開発センター パワートレイン製品本部 PTシステム製品企画部 部長 須山大樹氏

9in1の電動化ユニットのコンセプトモデル「機能統合電動ユニット」

 この技術説明会で展示されていたのが、アイシンの電動化ユニットのコンセプトモデル「機能統合電動ユニット」になる。アイシンはデンソーとの合弁会社であるBluE Nexus(ブルーイーネクサス)において現行bz4X用の第1世代電動化ユニットを生産しているが、将来的モデルである第2世代、第3世代までのロードマップを発表している。

第3世代イーアクスル技術を組み込んだ9in1電動化ユニット「機能統合電動ユニット」

 とくに第3世代では電動モーターをコンパクトかつ高回転化することでイーアクスルを大幅に小型化しようとしており、これまではモーターのトルクを稼ぐために遊星歯車を使用することを明かしていた。

 今回展示された9in1電動化ユニットであるコンパクトなイーアクスルは、世代的には第3世代の技術を組み込んだものになるという。9in1の機能としては、減速機、モーター、インバータ、DC/DCコンバータ、車載充電器、ACインバータ、統合ECU、電力分配器、熱管理デバイスとなり、コンパクトなモーター部の上部に水冷ユニットを設ける形となっている。

遊星歯車ではなく、平行軸歯車で減速を行なっている
平行軸のためモーターの体格からはみ出してしまうが、そのエリアに各種の機器類を配置。全体として低ハイトかつコンパクトなイーアクスルとしてまとめあげている
機能統合電動ユニットのファンクションマップ。占有スペースは60%低減

 これまでの第3世代ユニットでは、この高回転化したコンパクトなモーターに遊星歯車を組み合わせてトルクを出していたが、この機能統合電動ユニットでは、平行軸の歯車を使ってトルクを増大するような構造になっていた。

 当然ながら平行軸の歯車部分とその折り返しのためにスペースは必要となるが、そのスペースに前述の機能の一部を配置してトータルではコンパクトに仕上がり、ユニット高さを下げるようデザインされていた。

 電動車ではデザインの自由度を求めてボンネット高のフレキシビリティが要求されることが起きているが、このユニットはそのデマンドに対応しようとするものになっている。

 9in1といっても、サプライヤーによって何を機能として数えるかは異なりユニットの規模を表わすものではないが、新型のイーアクスルは充電機能を内包し、統合ECUの時代を見すえたデザインに仕上がっていた。