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ランボルギーニ、新型レーシングカー「テメラリオGT3」 ハイブリッドユニットを外しレース用シャシーに改良

2025年7月11日(現地時間) 公開
新型レーシングカー「テメラリオGT3」が発表された

 ランボルギーニは7月11日(現地時間)、スーパースポーツカー「テメラリオ(Temerario)」から派生した初の新型レーシングカー「テメラリオGT3」を発表した。

 現在あらゆるメーカーのタイヤとGT3レギュレーションに対応できるように開発しており、2026年シーズン中に開発を完了させ、3月のセブリング12時間耐久レースでのデビューを予定している。

新型レーシングカー「テメラリオGT3」

 パワーユニットは、ハイブリッドシステムが許可されていない国際GT3レギュレーションに適合させるため、ハイブリッドユニットを取り外し、ランボルギーニのエンジニアが新型ターボチャージャーとコンプレッサーユニットを搭載して開発した量産型V型8気筒4.0リッターツインターボエンジンを採用。

 レギュレーションに合わせて550HPへとパフォーマンスバランスは調整済みで、トランスミッションは横置き6速ギヤボックスが組み合わされる。エキゾーストシステムはテメラリオGT3専用に開発されたCapristo製を採用している。

新型レーシングカー「テメラリオGT3」

 アルミ製スペースフレームのシャシーは、テメラリオの量産車から引き継いだものをベースに、徹底的な軽量化と簡素化を経てレース仕様に改造。特にフロントとリアのサブフレームは、レース中に素早く脱着できるように変更された。取り外し可能なリアサブフレームは、エンジンと新型トランスミッションのコンポーネントを収容するために、スクアドラ・コルセによって特別に開発したという。

 また、量産車ではハイブリッドコンポーネントを支えているブラケットは、テメラリオGT3には不要なため、すべて取り外された。アルミ製フレームの中央部分には、FIA GT3の安全基準に準拠したロールケージが組み込まれているほか、フロントサブフレームも変更され、量産車の特徴である電動モーターも取り外されている。

新型レーシングカー「テメラリオGT3」

 テメラリオGT3は、量産車の独特のスタイルを維持しながら、新エンジンとブレーキシステムの冷却要件に適合させるとともに、ダウンフォースとドラッグの目標性能を達成し、最適な空力バランスを確保するため、ボディにカーボンコンポジット素材を初採用。このボディは、スクアドラ・コルセのエアロダイナミクスチームとランボルギーニ・チェントロ・スティーレとの共同作業で完成したとしている。

 ボディ外装は、フロントまわりとリアまわりはそれぞれ一体構造で、リアディフューザー、エンジンカバー、ボンネットも素早く取り外せる設計とした。さらに、ヘッドライトにもクイックコネクターシステムを採用し、素早い取り外しを可能にしている。

 フロアは、フロントアクスル前方の2つのセクション、車体中央を通る1つのセクション、そして強力なリアディフューザーの4つで構成。中央セクションは、ジャッキアップして必要に応じて交換できるよう設計されており、レース中のピットでの修理時間の短縮を実現。給油システムを改良してタンクへの流量を増加させたほか、新しい燃料センサーを採用したことで、チームがより正確に燃料の数値を把握できるようになった。

エアロダイナミクスはダウンフォースだけでなく冷却性能の効率も高めている

 エアロダイナミクスは、ブレーキング時の車両安定性を向上させ、コーナリング時のバランスシフトを低減するために最適化。ハイブリッドユニットがエンジンから取り外されたことで、ターボチャージャーへの負荷が増加し、温度制御を維持するためにより多くの走行風が必要となったことから、温度管理を最優先に考慮し、ラジエーターへのエアフローとフロントラジエーターの設計も改善して冷却効率を高めた。

エアロダイナミクスも徹底して開発されている

 サスペンションは「SC63 LMDh」プロジェクトのサプライヤーであるKW製の新たな6ウェイダンパーを初採用。サスペンションもピットで素早く交換できるほか、セッティングも素早く変更できるため、プラクティスセッション中の時間節約にもつながるとしている。また、18インチホイールはRonal AG製で、タイヤはどの主要タイヤメーカーの製品を使用してもパフォーマンスを最大限に引き出せるように設計しているという。

ランボルギーニの耐久レース用マシン「SC63 LMDh」

 内装やコクピットまわりは、ランボルギーニのファクトリードライバーであるマルコ・マペッリ選手とアンドレア・カルダレッリ選手の協力を得て開発。操作レイアウトの改良やエレクトロニクスの刷新により、ドライバーエクスペリエンスが向上。最先端のハードウェアを統合することで、ランボルギーニが直接カスタマイズした専用ソフトウェアの開発が可能になり、最適な車両制御を実現したという。

 テメラリオGT3は、ランボルギーニのレーシングカーの新たな基準を確立するもので、イタリアのサンタアガタ・ボロネーゼ工場で設計、開発、製造を一貫して生産する初のモデルとなる。

テメラリオGT3

 ランボルギーニ会長兼CEOのステファン・ヴィンケルマン氏は、「テメラリオGT3は、テメラリオ・プロジェクト初のレーシング派生モデルであり、ランボルギーニのブランドプロモーションにおける重要なツールとしてモータースポーツへの強いコミットメントをさらに強調するものです。ウラカンGT3プロジェクトは、レースでも商業面でも成功を収め、96回のチャンピオンシップ獲得と200台以上の販売を達成しました。テメラリオ・プロジェクト発足当初から、私たちは常にレーシング派生モデルを構想してきました。テメラリオGT3は、公道仕様のテメラリオと同様に、レースの世界でも新たな基準を生み出すでしょう」と述べている。

新型レーシングカー「テメラリオGT3」

 また、ランボルギーニの最高技術責任者のルーベン・モール氏は、「テメラリオGT3は、実際に運転するお客さまを念頭に置いて設計されました。空力効率からパワーカーブ、チームの車両操作方法まで、すべてがエンドユーザーを考慮しています。このモデルは、さまざまな構成の車両のバランスを取るために用いられるパフォーマンスウィンドウにおいて、先代モデルとはやや異なる領域で動作します。ラップタイムの面で競争力があること、そして夜間や雨天を含むさまざまな条件下での快適な走行も可能にすると確信しています。開発チームは、動作範囲を確保し、各チームがよりスムーズに開発を進められるよう、懸命に取り組んできました」とコメントしている。

新型レーシングカー「テメラリオGT3」