F1カメラマン熱田護の「気合いで撮る!」

第118回:メルセデスのラッセル選手が見事なポールトゥウィン!! 暑さとも戦った夜のシンガポールGP

 シンガポールGP。メルセデスのラッセル選手がポールトゥウイン!

 あんなに独走で勝つとは正直思ってませんでした。

 レースになればマクラーレンとかフェルスタッペン選手が前に来るのかと思ってました。わからんものです。だから、面白いんですけどね!

 グリッドで身体を冷やすラッセル選手。

 パルクフェルメでマシンを降りたばかりのラッセル選手。昨年と同様の立っていられないほどの脱水と疲労。シンガポールならではの光景です。

 クールスーツを着用してもこうなってしまうほど過酷なコクピット内の温度なんですね。50℃以上になるらしいです。

 外から見ていてはわからない仕事場。

 カナダGPに続き今季2勝目。表彰台は8回目、237ポイントでランキング4位。素晴らしい成績を残して、実績を積み上げている感じですよね。

 来季以降の契約発表はいつになるんでしょう。

 2位にはフェルスタッペン選手。終盤のノリス選手からのプレッシャーもなんのその!

 レッドブルが苦手とするこのサーキットで2位というのは最大限の結果と言えるんではないでしょうか。

 3位にはノリス選手でした。スタート直後、ピアストリ選手と接触したことで問題が残らなければいいなと思います。

 ピアストリ選手は4位で、ドライバーズランキングは首位のまま。ノリス選手との差は22ポイント。

 コンストラクターズチャンピオン決定!

 2年連続マクラーレンが獲得しました。650ポイント。2位のメルセデスは325ポイントですから丁度ダブルスコアという圧倒的な力の差。

 このコンストラクターズタイトルの順位で分配金が決まるので、チームにとっては翌年以降の開発費用や人件費などの予算に大きく影響するわけです。ですから、必死に順位にこだわって戦うわけです。

 レーシングチームというのは会社です。スポンサーを獲得し、成績を上げて売り上げを伸ばしていい人材を確保し、いい施設を構築して速いマシンを作り続け、最適なドライバーを確保し、レースを戦います。

 チームで働く多くの人はより良い待遇を求めて上のチームに行きたいわけです。もちろんドライバーも同じ。そのためには、チームも、ドライバーも、ポイントを取ることがそこにつながるわけです。

 マクラーレンは素晴らしいマシンを作って、素晴らしい2人のドライバーが確実にポイントを取って帰ってくるという結果がここで出たわけです。

 コンストラクターズランキングは4位のレッドブル。290ポイント。ご存知のように、そのほとんどのポイントはフェルスタッペン選手が持ち帰っています。

 3位のフェラーリは298ポイント。2位のメルセデスは325ポイント。

 2位になれる可能性もまだまだ全然可能です。そのためには、角田選手の成績が必要なことは確実。

 角田選手の予選は15位。グリッドは13位。レース12位でした。ポイント獲得ならず。

 予選でタイムが出なかった。スタート後の1周目で17番手まで下がってしまう。しかしタイヤ交換後のレースペースは良かった。でも今回も結果が出ませんでした。

 RB21というマシンで戦うことがこんなに難しいんですね。なぜなのか?

 外から見ているしかないので、その謎は深まるばかり分かりません。同じマシンのチャンピオン・フェルスタッペン選手は予選2位、レース2位です。

 角田選手にとって16戦目のマシン。5年のF1キャリアがあってコースももちろんわかっている。RBに乗っていた頃の角田選手にしてみれば、もちろんレッドブルのマシンに乗ってみたいと思っていて、乗れば速く走れるという自信があって移籍したわけです。

 何度も書いてきましたが、結果こそ全ての世界。

 がんばれ! としか言えないのがもどかしいですけど、次のCOTAとメキシコでは、その結果を出さねばなりません。

 上がフェルスタッペン選手のフロントウイング、下が角田選手。アップデートされた機材の優先使用権はフェルスタッペン選手にあるのは致し方ない。

 右手に持っているのは、クールスーツのチューブ。暑さ対策です。

 こちらは、マクラーレンのノーズコーンの中にあるダクトを冷やす氷入れ?? 撮った時、かき氷食べたいと思いました!

 ハース、ベアマン選手が予選9位、レース9位入賞で2ポイント獲得。イタリア、アゼルバイジャンがノーポイントでしたので、今回取れて良かった!

 レース後、夜中の3時前に晩御飯食べますか? と連絡いただき、行ってカレーと豆腐をいただいてきました! お心遣いに感謝ですね!

 だいたいですけれど、そもそも、チーム代表がそんな時間までレース後にパドックに居るなんてことはないわけですよ。

 なぜ居るかと言えば、僕にご飯を用意するためにいるなんてわけではなく、チームのみんなの意思疎通や労い、いろんな話を聞くためにいるんですよね。撤収作業を手伝っていたりしますし、そんなチーム代表を僕は他には知りません。

 常に120%、このハースというチームを速くするために、チーム代表として何をやるべきなのか、どう舵取りをするべきなのかを1日25時間考えて動いているように思います。

 カレーをいただきながら話していたのは、たとえばシンガポールで同じPUを使うワークスチームのフェラーリとハースのタイム差は0.2秒、チームの予算や規模から考えてこの差で戦えているのは、素晴らしいパッケージを作り上げている結果であって、現場でのオペレーションなどに多少の問題はまだあるにしろ、来季からのことを考えれば、どのように予算を確保するのかという方にも力を入れていきたいと話していました。

 予算を手に入れること=競争力を手に入れることというのは、マクラーレンのチャンピオン獲得のところでも書いた通りです。

 プライベートチームであるハースを応援したいというような企業、または富豪の方、ぜひハースのマシンにロゴを掲出して一緒に上にいく過程を楽しんでいただけませんでしょうか?

 小松代表の熱意を聞いていただけないでしょうか!

 ウイリアムズがリアウイングの問題で予選結果抹消で、サインツ選手が最後尾18グリッドからスタート。アルボン選手はピットレーンスタート。サインツ選手は、なんと10位! 1ポイント獲得。素晴らしいなあ!

 ドラパレの時、ハミルトン選手と話す角田選手。ラインが交錯してハミルトン選手のアタックを妨げてしまったことで話をしているのかな?

 アジャー選手はPUのセンサートラブルでレース中のペースが上がらず11位でした。

 僕の帰国便とホンダの皆さんの帰国便が一緒で、PUトラブルのことは成田に到着した時に折原さんから聞きました。

 聞いておいてなんなんですけれど、ホンダにしろフェラーリにしろメルセデスにしろ、PUトラブルの時はその原因で大きく取り上げられるけれど、ちゃんと走り切った時はそれが当たり前のように、その結果をPUも頑張りましたとは報道されませんよね……。

 たとえば精密機械の現代のホンダPUは、複雑極まる構造で走っています。まさに匠の技の集合体のような機械。

 それを作るのも現場で火を入れるのも、サクラで遠隔監視しながらモニターを食い入るように見つめるのも、勝ちにこだわり熱い心を持った人間です。もっと、ホンダの方達の現場の声も取材をしたいと思います。

 アロンソ選手、7位入賞! なんてすごいんでしょ!

 来年で引退とかなんとか報道出ていますけれど、走っていたいなら、もうとことん走り続けてほしい!

 ハミルトン選手と話すアントネッリ選手。あなたのファンです! って感じの仕草に見えるけど、どんなんでしょ。

 ドラパレのクルマたち。フェラーリはフェラーリドライバー。

 メルセデスはメルセデスドライバー。

 レッドブル関係はS2000! 来年からは、ムスタングかな?

 この2台の日産は、予備。シルビアのオープンがシンガポールにあるってのが素晴らしいと思いませんか?

 シンガポールには日本からたくさんのF1ファンが来場してます。来年も鈴鹿は春ですから、秋にシンガポールへどうぞ!

 羽田からシンガポールへは7時間の飛行時間。丁度いい旅の距離ではありませんか?

 空港から街中までは、Grabというアプリがあるんですけれど僕は何度やっても捕まらなかったので、タクシーに乗りました。

 行きが5200円くらい、このおじさんの運転が凄まじく、ハンドルは常に左右にギコギコ、アクセルとブレーキは常にブンカクカクブン……乗っているだけで疲れる。

 帰りは3200円。女性のドライバーだったんだけど、とってもスムーズな運転だし安い。まあ、旅の思い出ということで。

 シンガポールは日本食とか高級レストランも多くておいしいところもたくさんあるようなんですけれど、僕の場合は安くて早い食事を探すわけです。

 毎年行く大きなモールの中にあるフードコート。今年は中のお店が全部変わってました。

 朝食兼ランチ。23番のメニュー看板にある、日式という文字についつい初日から反応してしまう自分が情けないですけど、冷凍エビフライとチキン。880円、これはおいしくなかった……。

 2日目、豚の角煮&ピーナツ煮、卵。まあまあでした。

 肉団子ラーメンの予定が、出てきたのが肉団子スープとご飯でした。これはおいしかった。

 そして、毎日の晩ご飯用にすき家でテイクアウト牛丼。860円。メディアセンターの電子レンジでチンしていただく幸せなひと時!

 毎日、メディアセンターから帰るのは深夜。歩いて15分くらいの宿。

 レース後、いつものようにフォトグラファーズルームを最後に出たのが朝の4時半くらいで、スーツケースを引っ張ってタクシー乗り場に行って空港へ。

 完徹でラウンジでシャワーを浴びて、飛行機で爆睡という流れは、ここ毎年のルーティーン。今年も汗だくのレースは無事に終わりました。

 レースとは全く関係ないことですが、知っておいていただきたいことがあります。

 土曜日の予選はホテルのベランダから撮影させていただきました。手前中央にある白く光るモニュメントがあります。

 日本占領時期死難人民記念碑という名前の碑です。

 この白い塔は第二次世界大戦時に日本軍がシンガポールに進出したときに、中国系住民を大量に殺害してしまった事件を忘れないように建立されたモニュメントです。

 華やかなサーキットのすぐ脇にひっそりと輝いて立っている塔。われわれ日本が戦争という非常時の中とはいえ行なってしまったこと、その事実を記憶しておかなければならないことだと思います。

 戦争に関しては、皆それぞれ考えをお持ちだと思いますのでここまでといたします。

 シンガポールで住んでいる日本人の方にこの塔のことを聞きましたが、もちろん知っていて、過去のことは過去のこととして、現地の人は皆優しく日本人に対して接してくれていて、とても住みやすい国ですとおっしゃっていました。僕も毎年1週間しかいませんがそのように感じますし、快適に過ごすことができています。

 もし、来年シンガポールへ行かれて、気にとめていただける方がいらっしゃれば、手を合わせていただければと思います。

 僕も、ここ何年か行ってませんので、来年は行ってみようと思います。F1の楽しい話題でなくてすみません。

 次はオースティンとメキシコの2連戦になります!

熱田 護

(あつた まもる)1963年、三重県鈴鹿市生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。1985年ヴェガ インターナショナルに入社。坪内隆直氏に師事し、2輪世界GPを転戦。1992年よりフリーランスとしてF1をはじめとするモータースポーツや市販車の撮影を行なう。 広告のほか、「デジタルカメラマガジン」などで作品を発表。2019年にF1取材500戦をまとめた写真集「500GP」を、2022年にF1写真集「Champion」をインプレスから発行。日本レース写真家協会(JRPA)会員、日本スポーツ写真協会(JSPA)会員。