新幹線利用者は億単位で増加中
大型連休を利用して海外旅行に行く中国人が増えているが、メジャーなのは、中国版新幹線こと中国高速鉄道などを利用する国内の中・遠距離旅行だ。今年の10月1日からの国慶節に向けて増便されたにもかかわらず、多くの高速鉄道の便が満席となった。
9月15日から17日にかけて中秋節の3連休では、3720万人(1日平均930万人)が高速鉄道を利用した。連休最終日の9月17日の乗客は1040万人。これは昨年の中秋節よりも109万人多いということで、まだまだ増えていることが分かる。厳密な比較はできないが、自由席のある日本の新幹線と比べても、指定席のみの中国高速鉄道の利用客のほうが数倍多いように思える。
年間で見ても、中国の高速鉄道利用者数は2012年から伸びており、同年には4億8600万人だったものが、2013年には6億7200万人、2014年には8億9300万人、2015年には11億6100万人と億単位で増えている。2011年の衝突脱線事故時やそれ以前を思い出すに、当時は比較的裕福な若者が利用していたが、現在は裾野が広がり、老若男女が利用するようになったように見える。
拡大、高速化が進む中国版新幹線
中国高速鉄道は、北京五輪が開催された2008年以降、2015年までに一気に路線を増やした。これは南北に4本、東西に4本の高速鉄道を敷く「四縦四横」という計画によるもの。近年では南北に8本東西に8本を敷く「八縦八横」となっている。今年に入って高速鉄道網の全長は2万kmを超え、世界の高速鉄道網の6割が中国を占める状況だ。さらには2020年までに全長3万km、2025年までに全長3万8000kmにすることを目標にしているという。
今年9月には、鄭州(河南省)-徐州(江蘇省)間(361km)が開通した。また2015年末には、中国南部の海南島を一周(653km)する世界初の島内高速環状鉄道「海南環島鉄路」が開通した。日本よりはずっと速いペースで高速鉄道の建設が続いているのだ。
高速鉄道は増便と同時に高速化を続けている。例えば北京-上海間(1318km)の最速は4時間48分、時速にして約275kmだ。また先述の「八縦八横」では、時速350km以上を設定している。ちなみに試験走行では、2016年に時速420kmを記録した。
中国版新幹線駅が巨大なハブになる
大都市の駅は、鉄道、バス、飛行機などさまざまな交通機関への乗り換えが容易なターミナル化、中国語で「総合交通枢紐」駅化が進んでいる。
例えば上海の虹橋という地域には、高速鉄道の上海虹橋駅と虹橋空港、長距離バスターミナルが一体化した「上海虹橋交通枢紐」があり、飛行機で上海に着いたら、そのまま歩いて上海虹橋駅や長距離バスターミナルへ行ける。政府は総合交通枢紐を中国全土の大都市に広げようとしており、新空港が建設される予定の北京では、その空港の地下に高速鉄道を通し、総合交通枢紐駅化するという。
鉄道網が発展していくのはいいことだが、自動発券機が中国の身分証にしか対応していないため、外国人には優しくない。パスポートにも対応するなど、外国人向けサービスも早く改善してほしいところだ。
NNA所属。海外専門ITライターとしてライター業を始めるものの、中国ITを知れば知るほど広くそして深いネタが数限りなく埋蔵されていることに気づき、すっかり中国アジア専門のITライターに。連載に「山谷剛史の「アジアIT小話」」、「山谷剛史のマンスリーチャイナネット事件簿」、「中国ビジネス四方山話」など。著書に「中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立」(星海社新書)、「新しい中国人 ネットで団結する若者たち」(ソフトバンククリエイティブ)など。
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