日本企業の中で黒字企業の割合はどのくらいでしょうか。
さらに黒字企業の中で事業目標を達成している企業はどの程度あるのでしょうか。
黒字で事業目標を達成している企業の中で、1期のみならず、2期も3期も連続して目標を達成している企業はどれほどあるのでしょうか。
鷲沢社長と小鹿コンサルタントとの会話を読んでください。
○鷲沢社長:「この前、業界の経営者が集まる会へ顔を出してきた」
●小鹿コンサルタント:「情報交換にはいい機会ですね」
○鷲沢社長:「コンサルタントにもそういう会はあるのかな」
●小鹿コンサルタント:「コンサルタントといっても色々ですから、そのくくりで人が集まる会はあまりないですね。税理士や公認会計士が集まって情報交換することはあるのでしょうが」
○鷲沢社長:「ライバル視するからか」
●小鹿コンサルタント:「コンサルタントという肩書だけで集めたら、お互いがライバルになるかもしれないので手の内を見せたがらない人もいるでしょう。税理士や会計士の場合、棲み分けができていますが」
○鷲沢社長:「うちの業界もそうだ」
●小鹿コンサルタント:「広告業界の経営者が集まると、そういう感じですか」
○鷲沢社長:「『儲かっているか』と聞いても『ボチボチです』という受け答えばかりだな。『うちは駄目だ』とか『当社は好調だ』とはっきり口にする経営者は少ない。業績の話になると腹の探り合いだよ。独特の間合いをとって牽制しあっている感じだ」
●小鹿コンサルタント:「広告業界は動画広告などリッチメディアの進化によって変わりつつあり、その中で成長している企業と衰退している企業とに分かれ始めたと聞いています」
○鷲沢社長:「そこまではっきりしていないな、新聞・雑誌・テレビ・ラジオの4マス媒体の需要はまだまだある。とはいえ、小鹿さんの見解は的外れじゃない。新しいメディアの在り方が問われているから、それに乗り遅れた広告企業は先がないだろう」
●小鹿コンサルタント:「そういった最新動向の情報交換はあるのですか」
○鷲沢社長:「もちろん。そっちの話ばかりだ。広告業界の経営者が集まったら。あの会社がアドテクに熱心だとか、あの会社はスマホを使ったオンラインツーオフラインの広告に力を入れているとか、そんなネタばかりになる」
●小鹿コンサルタント:「楽しそうじゃないですか」
モットーは「ゆっくりと焦る」
○鷲沢社長:「上っ面のキーワードばかり並べたって駄目だ。私が見るところ、業績が悪そうな会社ほど目新しいものを追いかけたがる。地に足がついていない。一部のイノベーター企業は別にして、お客様のニーズはまだそこまで来ていない」
●小鹿コンサルタント:「とはいえ、変化はしているわけで舵取りが難しいですね」
○鷲沢社長:「私のモットーは『ゆっくりと焦る』だ。焦ってドタバタしたくはない。新しい時流のことばかり気にして焦ると、かえって物事を考えなくなる。風にうまく乗ることは重要だが、風に流されてはいかん」
●小鹿コンサルタント:「昔ながらのメディア広告で収益の土台を維持しながら、新しい広告技術も研究し、お客様に提案していく。こういう姿勢が大事ということですね。ただ、肝心の土台が外部環境に左右されやすい業界です」
○鷲沢社長:「その通りだ。業績を安定させるのは簡単ではない。だから私は予材管理が重要だと言い続けている」
●小鹿コンサルタント:「事業目標の2倍の営業の材料を予め仕込んでおいて管理する手法ですね」
○鷲沢社長:「目標の2倍の予材を仕込もうとすると皆で頭を使わなければならない。マーケットを分析し、お客様に向き合うことで予材が生まれてくる。そうすれば目標を絶対達成でき、業績は安定するはずだ」
●小鹿コンサルタント:「皆が考える癖をつけて、常に勝たないといけない、ということですか」
○鷲沢社長:「そうだ。月ごとに見たら上がったり下がったりしてもいいが、一期の終わりには目標を達成する。目標ぐらい毎年、絶対達成しなければならん」
●小鹿コンサルタント:「外部環境にかかわらず、必ず目標を達成することを目指すと」
○鷲沢社長:「景気がどうとか、国の政策がどうとか、そういうことに気を取られてはいかん。地道にしっかりと事業目標を達成させる、そんな経営が私の理想だ」
●小鹿コンサルタント:「帝国データバンクの調べによると、日本で黒字経営をしている企業の割合は31%だそうです」
○鷲沢社長:「約7割が赤字ということだな。調査対象の企業数は何社だ」
3期連続黒字企業は全体の18%
●小鹿コンサルタント:「147万社ほどだそうです」
○鷲沢社長:「個人事業主やペーパーカンパニーは除いた数字だな。実態をほぼつかんでいる数字と言えそうだ」
●小鹿コンサルタント:「ただし、1期分について黒字の企業の割合です」
○鷲沢社長:「2期連続黒字の企業はどれぐらいか、わかるか」
●小鹿コンサルタント:「ヒアリングしてあります。23%だそうです」
○鷲沢社長:「3期連続は」
●小鹿コンサルタント:「18%」
○鷲沢社長:「3期連続黒字が18%か……。少ないな」
●小鹿コンサルタント:「はい。しかも赤字になっていないだけの企業も入っています」
○鷲沢社長:「黒字でかつ事業目標を達成している企業の割合はわからないか」
●小鹿コンサルタント:「さすがにそのデータはないようです」
○鷲沢社長:「目標通りかどうかは、企業ごとにヒアリングしないと分からないからな。えいやで計算してみるか。黒字企業の半分もないだろう」
●小鹿コンサルタント:「25%もあればいいところでは」
○鷲沢社長:「そうすると、単年度黒字で事業目標を達成している企業の割合は8%ぐらいということになる。2期連続、3期連続となると」
●小鹿コンサルタント:「5%とか、4%といったところでしょう」
○鷲沢社長:「事業目標を3期連続で達成できている企業は5%ぐらいということか。あとの95%は目標が未達成の期があるか、黒字にもなっていない」
●小鹿コンサルタント:「そもそも赤字企業が全体の7割を占めていますから」
○鷲沢社長:「私が目指しているのは、毎年最低でも目標ぐらいは達成できる会社にすることだ。しかし世の中にそんな会社は5%しかない。たかが目標達成、されど目標達成だ。なかなかできないことを成し遂げようとしているわけだ。やる気が出てきたぞ」
黒字になればいいということではない
ご紹介した帝国データバンクの情報は2016年から2017年にかけての数字です。
リーマンショック以降、赤字企業の割合は7割を超えていたのですが、若干改善したようです。それでも、いまだ7割近くが赤字なのです。
「黒字でかつ事業目標を達成している企業の割合」について小鹿コンサルタントは黒字企業の「25%もあればいいところ」と話していました。これは私なりの推定ですが、やや多めに見ています。
私は年間100回を超える講演をしており、出席された方にアンケートをお願いし、目標を達成しているかどうか、お尋ねしています。その結果を見る限り、実は25%よりも低いのですが、コンサルティング先の社長や私が主催する勉強会に来られた経営者との対話を通じて得られた肌感覚に基づき、25%としました。
ただし、目標を達成している企業の実情は様々です。たまたま業界に吹いた追い風に乗れた、予想外の案件に遭遇した、といった場合もあります。目標達成について真剣に考え、手を打ち、実行しては考え直し、といったことを繰り返している企業となると本当に少ないです。
黒字になればそれでいい、とにかく目標に届いたからよい、ということではなく、「たかが目標なのだから絶対に達成する」くらいの意気込みで狙っていきたいものです。
働いている人たちのことを考えても、目標を達成したほうがいいに決まっています。間違いなく仕事が楽しくなるからです。働き方改革も時短も必要でしょうが、目標達成を度外視して進めるわけにはいきません。
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