父の遺産に含まれていた駅前一等地の貸家。今は空き家だが、土地だけでもかなりの価値があるはず。ところが、調べてみると価値は二束三文。なのに相続税はしっかりかかるのだという。

 首都圏に住む60代半ばの女性のAさんは昨年、父を亡くした。父の遺産は相続人となる母と妹と自分の3人で話し合い、一旦、すべて母の名義にすることにした。

 Aさんは独身でひとり暮らし。妹は結婚して地方在住。実家でひとりになった母は、しっかりしているとはいえ90歳を超えている。いずれ訪れる次の相続では自分が手続きなどをする立場になるだろうと考えたAさんは、親の財産について調べてみることにした。

画:千葉さやか(Panchro.)
画:千葉さやか(Panchro.)

駅前の一軒家は二束三文

 母名義となった父の主な遺産は現金と母が住む実家、そしてかつて人に貸していたが現在は空き家の一軒家だ。場所は都心近郊の駅から徒歩5分の商業地で、面積は30坪。生前、父は「あそこは高く売れるぞ。俺が死んだら処分していいからな」と言っていたことを覚えていたが、何年もほったらかしになっていた。Aさんは調査を兼ね、久しぶりにその空き家を見に行くことにした。

 実際に目にした建物はすっかり朽ちていてとても住めそうにない感じだった。帰り際、Aさんは駅前の不動産会社に立ち寄り、どのくらいで売れそうかを尋ねてみることにした。すると店主は「その物件は二束三文にしかならないよ」と言う。道路に接していない「無道路地」だからというのがその理由だった。

 「無道路地だから二束三文」と言われても納得がいかないAさん。後日、相続全体の対策も含めて、不動産にも詳しい知り合いの税理士に相談に乗ってもらった。

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