中国の自動車出荷台数は2024年に過去最高の3100万台に達し、輸出台数も2年連続で世界首位を維持している。電気自動車(EV)市場の過熱感が一服しているように見え始めているものの、4月の北京モーターショーと11月の広州モーターショーから顕著になった最新SDV(ソフトウエア定義車)やネットにつながるスマートカーは熱気に満ちている。競争の軸も車両のコスト・走行距離からコネクテッドや自動運転を備える知能化へと移行しつつある。
一方、24年末に終了した買い替え補助金の反動が中国の新車販売に影響を与え、米国のトランプ新政権やEU(欧州連合)が中国製EVに対して高い関税を課すなど、25年の中国自動車業界には様々な懸念材料が存在する。ここで、筆者が5つの注目点を取り上げ、市場競争やメーカー戦略の実態を浮き彫りにし、激動する中国自動車業界を展望したい。
注目点1:EVの減速は一過性のものか
中国の都市部では、車両専用ナンバープレートの配給、走行可能なエリアの拡大、車両取得税の免除など、エンジン車に対して高いコストパフォーマンスがEVの差別化要素となっている。一方、EVやプラグインハイブリッド車(PHV)を中心とする新エネルギー車(NEV)補助金政策(22年末まで)が終了したことを受け、EV市場には成長鈍化の兆しが見えている。
販売台数伸び率を見ると、直近3年間で平均97%増であったのに対し、24年には約15%増と大幅に低下している。中国自動車技術研究センター(CATARC)の調査によると、「航続距離」、「車両制御」、「乗り心地」など消費者関心度の高い項目ではEVに対する評価が低い。実際、中国の乗用車需要全体の約5割を占める大衆車市場(小売価格10万元〈約210万円〉~20万元)が、EVにとっては依然「難攻不落」のマーケットである。
流行に敏感で新しい商品やサービスを早い段階で購買する消費者層である「アーリーアダプター」の購入が一巡した中、PHVはEVより走行パフォーマンスを維持しやすく、足元の実需に適しているため、しばらくの間、NEV市場のけん引役となるだろう。
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