大国間の貿易戦争や、メーカーごとの充電の規格争い――。電気自動車(EV)関連の大きなニュースが絶えない。産業育成や雇用創出などの側面で、自動車産業は世界各国にとって重要な存在であるためだ。話題の中心は米国のテスラ、中国の比亜迪(BYD)、ドイツのフォルクスワーゲン(VW)、日本のトヨタ自動車の4社である。日経ビジネスの新刊『なぜ世界はEVを選ぶのか 最強トヨタへの警鐘』(大西孝弘著)から、4社の現在地を分析したパートを紹介する。(日経ビジネス編集部)

米テスラがイタリアに設置した充電ステーション。欧州各地でテスラの充電設備が増えている
米テスラがイタリアに設置した充電ステーション。欧州各地でテスラの充電設備が増えている

 世界の自動車産業は今、天下泰平の時を経て、大競争時代に突入している。

 その主役は4社。米国のテスラ(TESLA)、中国の比亜迪(BYD)、ドイツのフォルクスワーゲン(VW)、日本のトヨタ自動車(TOYOTA)だ。それぞれの興りは異なるものの、米・中・欧・日という各地域の産業の英知を結集した企業であることに疑いはない。今後はその頭文字を取り、「TBVT」などと呼ばれることが増えるだろう。

 2008年に起こった世界金融危機の翌年に米ゼネラル・モーターズ(GM)が経営破綻してから、世界の自動車産業をけん引してきたのは日独の雄、トヨタとVWだった。ともに1937年に創業し、長きにわたり両国の経済を支えるなど共通点が多い。グループで年間1000万台近い自動車を販売し、利益面でもしのぎを削ってきた。09年以降は両社のいずれかが営業利益額で世界のトップに立つことが多かった。

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 トヨタとVWがトップを走り続ける中、なぜ大競争時代に突入したのか。それは世界でEVへの需要が高まり、100年以上続いたエンジンを中心とする自動車産業の構造が崩れようとしているからだ。もはやEVはニッチではなく、自動車産業の一角を占める巨大な新市場となりつつある。テスラとBYDはEVの販売台数を伸ばし、トヨタとVWなど既存の自動車大手の産業基盤を脅かしている。

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