セブン-イレブン・ジャパンとファミリーマートが7月1日、それぞれバーコードを使ったスマホ決済サービスを始めた。
セブン-イレブン・ジャパンは以前から配信してきた「セブン-イレブンアプリ」に新機能を追加する形で「7pay(セブンペイ)」を開始。アプリ上で現金やクレジットカードなどから残高をチャージして、全国2万店以上のセブンイレブン店舗で支払いに使える。決済額200円(税抜き)ごとに電子マネー「nanaco(ナナコ)」のポイントが1円分付与され、このポイントも残高に充てることができる(2019年10月までは付与額が2倍となる予定)。

セブン-イレブン・ジャパンは18年6月にセブン-イレブンアプリの配信を開始。この1年間で累計ダウンロード件数は1100万件を超えた。7payはスマホ決済サービスとしては後発組だが、同社の永松文彦社長は「決済機能によりアプリの利便性が高まる。既存客がスマホ決済サービスにも移ってきてくれるはずだ」と勝算をにじませる。今後は同じセブン&アイ・ホールディングス(HD)のグループ企業や、グループ外の企業の店舗・ネット通販にも7payの利用可能範囲を広げる計画だ。
永松社長によれば、セブンイレブンの決済のキャッシュレス比率は現在35%で、2021年度末までに50%に押し上げる計画だ。キャッシュレス化が進めばレジ作業や精算業務といった店員の負担が減り、人手不足や人件費高騰に悩む加盟店の省力化につながるとする。また、決済時に得られる購買データを今後のマーケティングや金融事業に活用するという。
ファミリーマートもスマホ決済サービス「FamiPay(ファミペイ)」を開始した。従来の「ファミリーマートアプリ」を刷新し、決済機能を持つ「ファミペイ」として配信を始めた。基本的な使い方は7payとほぼ同様だが、残高チャージに使えるクレジットカードは同社が発行する「ファミマTカード」に限られる。現時点ではファミリーマートとネット通販「Kaema(カエマ)」以外の利用可能店舗は未定だが、同社の植野大輔・経営企画本部デジタル戦略部長は「(提携関係にあるパン・パシフィック・インターナショナルHDの)ドン・キホーテ、ユニーには導入してほしい」と語る。7payに比べると、拡大スピードではやや不利な状況といえる。

そこでファミリーマートが押し出すのがキャッシュレスならぬ「お財布レス」の利便性だ。FamiPayではクーポン情報を付与したバーコードを表示できるほか、19年11月からは国内の有力ポイントプログラムである「dポイント」「楽天スーパーポイント」「Tポイント」とも連携。アプリ上で事前にクーポンを反映し、ポイントを登録しておけば、レジでは一度のバーコード読み取りですべてのやり取りが済む。一方の7payでクーポンを使う場合は、客がスマホを操作して2度、店員に読み取ってもらう必要がある。
「財布には現金以外にもいろいろなカードが入っている。キャッシュレス化だけでは意味がない」と植野氏は語る。スマホ以外は手ぶらで、かつお得に決済したいという客のニーズに応えることを重視した。
ただ、サービス開始日の7月1日は、7pay、FamiPayともにアクセスが集中して一時、正常に利用しにくい状態となった。2社のサービスへの期待の高さとも言えるが、アプリを利用する消費者の動向を見誤ったとも言える。
日本のコンビニの強みの1つは、本部と店舗をつなぐシステムで店舗ごとの販売状況を把握し、商品の発注や開発に生かしてきたことにある。一方、スマホ決済では「LINE pay」や「PayPay」、「メルペイ」などを手掛けるIT企業が普及に向けてしのぎを削る。ネットを通じて数多くの消費者と付き合ってきた企業は、スマホでの使い勝手やシステム開発などについては一日の長がある。7payとFamiPayがコンビニを超えて普及するには、自らの強みである店舗からいったん離れて消費者と向き合う必要がありそうだ。
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