スタディサプリ Product Team Blog

株式会社リクルートが開発するスタディサプリのプロダクトチームのブログです

開発組織が事業貢献するには

こんにちは。@chaspyです。『スタディサプリ 小学・中学・高校講座(以下、スタディサプリ小中高)』の開発部長をしています。この記事はスタディサプリProduct Team Advent Calendar 2024の25日目の記事です。

まずはじめに、このアドベントカレンダーを執筆してくださった皆さん、そして運営をしていただいたEngieering Office Team*1の皆さん、レビューいただいた広報関係者の皆さん、本当にありがとうございました。はじめての取り組み、かつ急に決まったにも関わらず、無事全ての枠が埋まり、公開できたことを嬉しく思います。この場を借りてお礼申し上げます。

本稿では、10月頃に社内で私が発表させていただいた「開発組織が事業貢献するには」という話を中心に、生成AIの活用や今後のプロダクト開発の展望など話を入れながら今年の締めくくりにできたらと思います。

開発組織が事業貢献するには?

こちらの発表では、開発組織の皆様向けに心掛けや事業貢献の手段を理解し、実践して欲しいというメッセージを伝えました。また、開発以外のみなさんには、開発組織との協業のアイデアを考えていただき、一緒に事業貢献を進められるようになりたいという思いを伝えました。

昨年の10月に部長になり、この1年間自分なりに「開発組織が事業に貢献するには」ということを考えてきました。開発組織長として、開発組織が健全に楽しく開発をできることはもちろん、技術やシステムが事業貢献し続けられることが今後プロダクトが長く価値を提供できることに繋がると考えています。

それでは発表内容をかいつまんで紹介します。

事業貢献とは

まず大前提、用語の確認からです。事業貢献とは、事業数値(売上・利益・顧客満足度など)を向上させることです。開発組織は、単なる実装部隊ではなく、ビジネス検討・要件定義・開発いずれのフェーズにおいても事業価値を最大化することができると考えています。開発部長はこの事業数値の責任をプロダクトマネージャと一緒に担う立場にあります。

開発組織が事業貢献するにはどうすれば良いか

開発組織が提供できる価値領域

図のように、開発の大きな流れをビジネス検討(企画)-> 要件定義 -> 開発としたとき*2、開発組織ができる事業貢献は以下の4つあると考えています。

  1. 効果の高い施策を考える:プロダクト数値やユーザー行動データを踏まえ、技術起点のアイデアを提案する
  2. 早くリリースする:意思決定を加速し、実装までを短縮する
  3. 非機能要件の改善:応答速度、安定性、検索精度、生成AI精度向上などで顧客体験を向上
  4. コスト削減:開発効率化やインフラ最適化で利益率向上

上記のうち、「早くリリースすること」がありますが、その要素としてビジネス検討〜要件定義の意思決定を早くすることが挙げられると思います。意思決定を早くするためには、判断のために必要な情報が必要です。その情報は、開発職が積極的に出すべきですし、プロダクトマネージャと一緒に考えることでお互いの知識を補い、より最適なアウトプットにつながると考えています。

開発組織が提供できる価値領域

「お互い協力してやろう」というのは簡単ですが、大前提、関係の質が必要だと考えています。加えて、「同じものを見る」「期待値調整」も要素として紹介させていただきました。

開発組織が提供できる価値領域

スタディサプリ小中高はそれなりに大きい組織です。それぞれ専門性が異なるため、分業が基本ではあります。とはいえ、完全に分業できない領域も存在します。組織間での協働を支えるために、これら3つが必要だと思っています。

開発組織が提供できる価値領域

これら3つ、どれが欠けても成立しないと考えています。

ありがたいことに、この発表の後、さまざまな場所でこの内容に言及いただくことが増えました。組織感で「雑相談」がいろんな場所で起きるようになりました。

スタディサプリ小中高は開発以外にもさまざまな役割の人々の協力で成り立っています。役割を超え、同じ目標を一緒に追いかけ続けられる組織であることを心から誇らしく思います。

生成AI活用の現状

さて、同じく生成 AI についても同じくデモを行い、新しい挑戦の方向性を示しました。

この1年は生成AIが大きな進化を受け、我々の組織も昨年より少しずつ取り組みを進めております。現在進んでいる案件についていくつか紹介します。

RAG (Retrieval Augmented Generation) によるSlack Bot

社内のGitHubリポジトリに散在するドキュメントを自然言語検索可能にするSlack Botを作りました。今現在でも結構いろんな人に使っていただいています。開発だけに閉じず、データチームの方もドキュメントを追加いただき、組織を超えて有益なツールに進化しつつあります。

この仕組みは個別指導プランのコーチ向けFAQシステムとしても転用し、役立てています。

本件については以下の blog も参照ください。

blog.studysapuri.jp

blog.studysapuri.jp

AI による新規プロダクト機能開発

今は何も言えることはないのですが...新機能の開発を少数で高速に立ち上げています。僕自身もユーザヒアリングに同行し、プロダクト開発に直接関わっています。リリースをお楽しみに!

それ以外にも言えないことを含め、いろんな場面で生成AIの活用を推進しています。また Blog が書けるように頑張っていきます!

今後

生成AI時代により、純粋なコーディングのスピードはこれまでと別次元に早くなると考えています。我々のようなすでにプロダクトを持ち、エンハンス・運用をしている組織にとって、以下の要素が相対的に重要になってくると考えています。

  1. ドメイン知識をいかに管理・運用・活用するか。
  2. ドメイン知識をもとに要件定義をすること。
  3. ドメイン知識を元に QA として動作保証すること
  4. 上記を含む総合的な開発体験を提供すること

先ほど RAG の事例を説明しました。今後はこのようなドメイン知識情報活用基盤をさらに進化させ、使いやすいものにしていくとともに、開発以外の職種と協力し、これまでとは別次元のスピードでより良い価値を世の中に提供していきたいと考えています。

おわりに

技術の進化が目まぐるしい日々ですが、いろんなものが非連続的に変化していきます。その中で開発組織が事業貢献するにはどうしたらいいか?を日々考えています。

引き続きスタディサプリ小中高は「学びを、もっと、新しく」*3するためにより良いプロダクトを作っていきたいと思います。良いお年を!

*1:詳細はエンジニアリングオフィスチームを結成しましたをご覧ください

*2:もちろんその後は運用・保守もやります

*3:https://brand.studysapuri.jp/