はじめに
2014年2月7日から販売を開始した「Everyday Rails - RSpecによるRailsテスト入門」は、ありがたいことにすでに600部以上売れています。
発売前は「できたら300部ぐらいは売りたいよねー。年内に500部売れたら大成功かなー」みたいな話を翻訳チームで話していたのですが、当初の予定を超える売れ行きになって驚いています。
購入してくださったみなさま、本当にありがとうございます!
ところで、この本は紙の本ではありません。電子書籍オンリーです。
しかも、日本の出版社ではなく、カナダのLeanpubというサービスを使って販売しています。
さらに言えば、本書をはじめ、Leanpubの書籍はすべてセルフパブリッシングです。
すなわち、作者が好きなように書いて好きなように売る本です。
プロの編集者が執筆やセールスをサポートしてくれるわけではありません。
なので、世間一般の本屋さんで売られている普通の技術書とはちょっと毛色が違います。
おそらく日本でLeanpubの仕組みを理解している人はあまりいないと思うので、今回はLeanpubの仕組みについて書いてみようと思います。
Leanpubで原稿を執筆する仕組みは以前別のエントリで書いたので、今回はみなさんが気になる(?)報酬の仕組みについて書きます。
さらに、Everyday Railsは現在どれくらいの売上になっているのかも大公開しちゃいます!(いいのかなー??)
Everyday Rails - RSpecによるRailsテスト入門 - Leanpub
報酬は「販売価格 x 90% - $0.50」
Leanpubの報酬の仕組みは公式ページにも記載されています。
このページに書いてあるとおり、報酬の計算式は「販売価格 x 90% - $0.50」です。
ただし、上の式にある「販売価格」は可変です。
Leanpubは購入者が価格を自由に決められるというユニークな仕組みを持っています。
たとえばEveryday Railsの場合、希望販売価格は$20.00ですが、最低販売価格は$16.00です。
ちなみに上限はLeanpub共通で、$500.00になっています。
なので、最低価格の$16.00で購入する人もいれば、希望価格の$20.00で購入する人もいますし、$20.00以上の値段で買ってくれる人もいます。
(さすがに$500.00で買っていった人はまだいませんが・・・)
というわけで、$16.00で購入されたときの報酬はこうなります。
- $16.00 x 0.90 - $0.50 = $13.90
$20.00の場合はこうです。
- $20.00 x 0.90 - $0.50 = $17.50
ちなみに、紙の本を売ったときの印税は「販売価格の10%」という噂をよく耳にします。
(紙の本は書いたことがないので確認できませんが)
それに比べると報酬面ではかなり好待遇になっていると言えるでしょう。
作者が複数いる場合は配分を決められる
一人で本を書いた場合は上記の額がすべて筆者の報酬になりますが、Everyday Railsの場合は原作者1名、翻訳者3名の合計4人の作者がいます。
作者が複数いる場合は作者用の管理画面で報酬の配分を決められます。
指定方法は100分率で指定します。
たとえばAさんに50%、Bさんに30%、Cさんに20%、という具合です。
ただし、配分の変更は作者全員に許可されているわけではありません。
Leanpubの書籍にはPrimary author(第一執筆者)が1名います。
Everyday Railsの場合でいうと、原作者のAaronがPrimary authorです。
なので、配分を変更したい場合はAaronに依頼して変更してもらう必要があります。
Everyday Railsで報酬を一番多くもらってるのは誰?
「じゃあ、Everyday Railsの場合はどういう配分になっているの?」と思われるかもしれませんが、具体的な配分率はヒミツにさせてください(苦笑)。
その代わり、配分率の大小関係だけ載せておきます。
僕(伊藤) > Aki(秋元)さん > 魚さん > Aaron
はい、こんな感じです。
一番多くもらってるのは僕でした (^^;
そしてなんと、原作者のAaronの報酬が一番少なくなっています!
Aaronは自ら「僕の報酬は一番少なくていいから」と申し出てくれました。
Aaron、めっちゃええ人や~!!
なお、翻訳者3人の配分は主に作業量に応じて分けました。
配分を決めるときに揉めたりしないかちょっと心配でしたが、みんな大人なのでスムーズに決めることができました。(ほっ)
報酬が確定するのは購入の45日後
Leanpubで購入した電子書籍は45日以内であれば全額返金できることになっています。
なので、本が売れたら即報酬が手に入るのではなく、45日経ってから報酬が確定することになります。
報酬の支払いは毎月1回で、月初に支払われます。
支払い方法はPaypal経由で銀行口座に振り込まれます。
Everyday Railsの場合、2月7日に販売して最初に報酬が支払われたのが4月上旬でした。
この2ヶ月間はなかなか待ち遠しかったです(苦笑)。
送金のタイミングは円安のときを狙え?
カナダから日本へ送金するので、当然為替レートの影響を受けます。
円安のときに送金を実行した方が報酬面ではお得です。
といっても、僕はそこまでシビアに考えていませんが(^^;
送金や振込みのタイミングでPaypalにがっぽり手数料を取られたりするのかな~と思ったのですが、そんなこともないみたいです。
Paypalに表示される為替レートがネット上の為替レートと若干異なるので、手数料分が為替レートに反映されたりしてるのかも?と思ったりもしますが、詳しくは調べていません。
とりあえず、「明らかに誰かに中抜きされている」というような印象はないので、まあいいかと思っています。
報酬面におけるLeanpubの仕組みの説明は以上になります。
ここからはお待ちかね、Everyday Railsの具体的な売上額についてお話ししていきます!
2014年5月25日時点で売上は1万ドル(100万円)オーバー!
はい、売上については見だしの通りです。
売上ベースだけでなく、報酬ベースで見ても総額1万ドルを超えています。
1ドル = 100円で計算すれば、1万ドル = 100万円ですね。
セルフパブリッシングでここまでいくのは自分でもすごいと思いました。
2014年2月7日から5月25日までの売上、および報酬はこんな感じです。
- 売上全体 = $11,703.75
- 報酬全体 = $10,218.89
売上の推移をチャートにすると、こんな感じになります。
しばらくすれば売上も落ち着くかなと思っていたのですが、今でもいい感じに伸び続けています。
とてもありがたいことです。
こちらの表では最近1ヶ月の売上を週ごとに分析してみました。
数字の見方は以下の通りです。
- Total Paid For Book = その週に売り上げた金額の総額 ($)
- Total Paid Avg Per Day = その週の1日あたりの平均売上額 ($)
今のところ1日平均で40~50ドルの売上があることになります。
冊数ベースでいうと、1日平均2~3冊ですね。
もちろん平均なので日によって波はありますが、今でも新しい読者さんが増えているというのは翻訳者として大変嬉しいです。
半分近くの人が希望販売価格の$20.00で購入!
前述の通り、Leanpubの電子書籍は購入者が購入価格を自由に決められます。
Everyday Railsを購入された方の多くは次のような葛藤を感じたんじゃないでしょうか?(苦笑)
「えっ、購入価格を自分で決められるの?」
「どうせなら一番安い$16.00で買いたいよな~」
「でも希望価格は$20.00ってなってるし、$16.00で買うとケチ臭く思われそうだ・・・」
「みんないったい、いくらで買ってるんだろう?」
はい、そこでみなさんがどれくらいの価格で購入しているのかを分析してみました。
それがこちらです。
購入価格の分布は次のようにグルーピングしています。
- $16.00 (最低価格)
- $16.01~$19.99
- $20.00 (希望価格)
- $20.01~$25.00
- $25.01~$30.00
- $30.01以上
ご覧の通り、半数近くの方が希望価格と同じか、それ以上の価格で購入してくださっています。
これまた大変ありがたいです(涙)。
もちろん、最低価格の$16.00で購入されたみなさんにも感謝しています。
ちゃんとメンバーで話し合って決めた最低価格と希望価格なので、「最低価格で購入されると誰かが困る」というようなことはありません。
また、購入時に「メールアドレスを作者に公開する」オプションを有効にしない限り、誰が購入したのかは作者にわかりません。
なので、みなさん安心してお好きな価格でご購入ください!w
返品率は今のところゼロ!
先ほど書いたように、Leanpubでは書籍の内容に不満がある場合、購入後45日以内なら全額返金されます。
これはある意味、作者にとって怖いシステムです。
本当に内容が不満があって返品されるのであればまだしも、45日もあれば読むだけ読んで返品するような「システムの悪用」もできちゃいます。
正直、発売前はこのシステムが悪用されちゃうんじゃないかと危惧していたのですが、今のところ返品はゼロです。
みなさん、疑ってしまってどうもすいませんでした!!!m(_ _)m
ちなみに英語版の返品率をAaronに尋ねてみましたが、英語版でも返品率は0.3%ぐらいらしいです。
英語版は4000冊近く売れていますが(すごい数!)、返品されたのは10冊ちょっとだとAaronは言っていました。
主な返品理由は「間違って二重購入してしまった」とか「もっと高度な内容を期待していた」といったものだったそうです。
というわけで、Leanpubの全額返金システムは今のところちゃんと節度をもって利用されていると言えそうです。
みんな良い読者さんばかりですね!
で、伊藤さん個人はぶっちゃけどれくらい儲けてんの?
・・・と聞かれて、いきなりこの場でどーんと具体的な額を言うのはさすがにちょっと(苦笑)。
とりあえずここでは、「ボーナス1回分は超えてるかなー」とだけ言っておきます。(世間のボーナスの相場はわかりませんが)
お給料1ヶ月分ぐらいが最低ラインと思っていたので、その最低ラインは軽く超えている感じです。
(あー、来年は確定申告しないと!)
翻訳をやっていた年末年始はかなりハードな毎日でしたが、そのぶんの苦労は報われていると思います。
とはいえ、このあともRSpec 3に向けた大幅なバージョンアップが控えているので、その翻訳も必要になってきます。
たくさんお金を頂いているぶん、翻訳者チームも継続して頑張らないといけないですね。
まとめ: Leanpubを使えばあなたもベストセラー作家に!?
というわけで、今回はLeanpubの報酬システムやEveryday Railsの売上についてまとめてみました。
Leanpubのシステムはうまくいけば、それなりに多くの報酬が得られる魅力的なシステムになっていると思います。
また、Leanpubなら誰でも自由に出版できます。
僕のように既存の電子書籍を翻訳して販売するのもアリですし、自ら技術書を一冊書き下ろすのもアリです。
もちろん、小説や自伝など、技術書以外のジャンルにも対応しています。
今回は特に触れませんでしたが、Leanpubは「Publish Early, Publish Often」をキャッチフレーズにしています。
これはつまり、「執筆を始めたらすぐに売り出して、それから頻繁に更新すれば良い」ということを意味しています。
なので、リーンスタートアップの考え方と同様、早期に読者のフィードバックを受けて途中で内容をピボットすることもできるわけです。
実際、Leanpubの販売ページを見ると、こんな感じでComplete欄が100%になっていない書籍もときどき見かけます。
内容を頻繁に追加したり、誤字脱字をすぐに修正できたりするのも電子書籍ならではの魅力ですね。
初期費用もゼロ(作者がLeanpubに支払うのは売上のマージンのみ)なので、試しにちょっと書いて、ちょっと売ってみるということも可能です。
一度自分の本を書いてみたいと思っている方は、まずLeanpubでチャレンジしてみるのも良いかもしれません。
チャンスはみんな平等です。
あなたもベストセラー作家を目指して頑張ってみましょう!
書籍「Everyday Rails - RSpecによるRailsテスト入門」について
「Everyday Rails - RSpecによるRailsテスト入門」はRuby用のテストフレームワークであるRSpecを使って、Ruby on Rails用の自動テストを書く方法を説明した技術書です。
内容は基本的に初心者向けですが、中級者の人が読んでも「それは知らなかった!」と思うようなTipsがいろいろ載っているはずです。
Leanpubの電子書籍はPDF、Kindle、iPadなど、さまざまなフォーマット/デバイスに対応しています。
DRMフリーなので、PCやスマートフォン、Kindle等々、お好きなデバイスにダウンロードして読むことが可能です。
価格は最低販売価格が$16.00、希望販売価格$20.00となっています。
ご購入の際は以下のページからどうぞ。
Everyday Rails - RSpecによるRailsテスト入門 - Leanpub
「Everyday Rails - RSpecによるRailsテスト入門」に関する情報源
RSpec初心者必読!「Everyday Rails - RSpecによるRailsテスト入門」を発売しました - give IT a try
最初にベータ版を発売したときのエントリです。
本書の詳しい内容や購入方法などを載せています。
正式版公開のお知らせと幻のあとがき・Everyday Rails - RSpecによるRailsテスト入門 - give IT a try
翻訳の品質を向上させた「正式版」をリリースしたときのエントリです。
電子書籍には載っていない、僕の「幻のあとがき」が読めます。
「カスタマーレビュー」を集めてみました: Everyday Rails - RSpecによるRailsテスト入門 - give IT a try
実際に読んだ人の感想を聞いてみたい!という方はこちらのエントリをどうぞ。
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