2015.11.10追記:トークイベントで舞台裏を話してきました
西脇市主催のトークイベントに僕たち夫婦が出演しました。
開業までのいきさつや、現在の状況をいろいろ語っています。
興味のある方はこちらをご覧ください。
夫婦でトークイベントに出演しました ~起業するっておもしろい! 子育て中の主婦が突然パン屋を始めました~ - give IT a try
はじめに
今まで何度か紹介していますが、僕の妻は去年の終わりから小さなパン屋さんを始めました。
兵庫県西脇市にある、Coupe Baguette(クープ バゲット)というパン屋さんです。
開店してから数ヶ月が経ち、店の方も軌道に乗り始めてきたので、ここでちょっと色々と振り返ってみようと思います。
パン屋開業以前
パン屋を開業する前の妻はこんな感じでした。
妻がパン作りを始めたきっかけと没頭し始めた理由
- 約6年前、上の子を妊娠している時に家でじっとしているのがヒマすぎたから。
- しばらくハマって、1〜2年ブランクがあった。
- 2〜3年前にフランスパンの奥深さに目覚めて、パン作りにまた没頭し始めた。
- 1年半ぐらい前にパンオタク(笑)のオフ会みたいなイベントに参加して、他のオタクの方々から刺激を受けた。
- 店を始める前から妻の作るパンは「おいしい」「きれい」と評判だった。
パン屋を開こうと思ったきっかけ
- 業務用のオーブンと発酵機を買ったから。
- 趣味だけで終わらせるような値段じゃないから、買うならこれで稼げるようになれと僕が妻を後押しした。
- 最初は単純に作ったパンを売ればいいと思っていたが、自宅のキッチンで作ったパンを販売するのは保健所的にNGらしいので、店を作ることになった。
- 妻は「3年後ぐらいを目標に・・・」みたいなことを言っていたが、のんびりやってるとそれ以上時間がかかるので、「いや、1年後!」と僕が目標設定を早めた。
- 結局、「やるぞ!」と決めてから大体10ヶ月前後でオープンできた。(終わってみれば意外と早かった)
業務用オーブンを買ったきっかけ
- 家庭用のオーブンでは信頼性がないから。また生産効率が悪いから。
- パン屋を始める前から知り合いのためにパンを焼いたりしていたが、家庭用のオーブンは突然調子が悪くなったりするから。
- 家庭用オーブンは毎回余熱時間が必要なため、次から次に焼くことができないから。
これまでの投資と試行錯誤
- いくら工夫してもうまく焼けない時はオーブンを買い替えた。
- 業務用オーブンに至るまで、家庭用オーブンを5〜6台買い替えた。ちなみにどれもハイグレードなオーブンで1台10万前後するやつ。
- 近畿圏の有名なパン屋や大小の製菓材料店を訪問しまくった。わざわざ香川まで行ったこともある。
- パンに関する本もいっぱい買った。が、全体の投資額から見れば微々たるもの。
- 妻は一時期、何かに取り憑かれたようにパンを焼きまくっていた。
- フランスパンがきれいに焼けない時期は100本でも200本でも焼くと言っていた。
- 材料や焼き方を少しずつ変えながら、理想の味や見た目を追求していた。
妻のこだわり
- おいしいだけじゃダメ。美しいパンじゃないとダメ。
- 天然酵母、国産小麦を使っていても、おいしくなかったらダメ。
- 「身体にいい素材を使っているから、添加物入りのパンに比べると味が落ちる」は妻の中で絶対NG。
- 味で勝負したいので「国産小麦」や「天然酵母」を看板に掲げたりはしない。(「天然酵母って書いときゃみんな飛びつくだろう」と安易に考えていた愚かな僕には目からウロコでしたorz)
- 製法を変えればもう少し早く大量に作れるが、味が落ちるので採用しない。
- 中の具材で味をごまかさない。あくまでパン生地のおいしさを主役にする。
- 自分がおいしいと思えるパンを追求している。そしてその終わりは永遠になさそうな様子。有名店の味を目標としているわけではない。
パン屋開業以後
パン屋を開業してから感じていることをまとめます。
店名の由来
- 「バゲット」は細型のフランスパン、「クープ」はフランスパンに入っている切れ目。
- クープがきれいに入ったバゲットを焼けるまでかなり苦労したし、バゲットの見た目や味には特にこだわりをもって焼いているので、そのまま店の名前にしてしまった。
売り上げが順調な要因
- パンが美しく、おいしいこと。
- パン好きな女性のハートをキャッチしたこと。
- パンの種類や店の雰囲気が女性向きであること。(すべて妻のセンスでまとめているので)
- 周囲に同じようなこだわりのパン屋さんがほとんどないこと。
- パンは日常的に食べるもの、という考えから手頃な価格設定にしてあること。
ラッキーだったこと
- じっくり試行錯誤するための時間とお金があったこと。(つまり結婚してから僕一人の稼ぎでやっていけたこと。)
- 店を開くためのスペースが自宅の敷地内にあったこと。(最初は将来的に音楽スタジオを作るつもりだった)
- 利益よりも商品のクオリティに注力できること。
- 店の売り上げだけで家族を養うプレッシャーがないこと。
- パン作りから接客まで一人でやっているので従業員の賃金を考えなくて良いこと。
- 新築で店舗を建てたので毎月の家賃を支払う必要がないこと。
- 僕が簿記2級の資格を持っていたので、経理業務に抵抗があまりなかったこと。
- 良心的で実力のある業者さんに恵まれたこと。
- 家族や両親、親類の理解と力強いサポートを得られたこと。
売り上げは好調でも将来的に大儲けはできない制約
- パン作りから接客まで全てのクオリティにこだわるため、今後も妻一人でやっていくつもりであること。
- よってこれ以上スケールアウトしていく余地はほとんどない。
パン屋さんは儲かるか?
- 儲かりません。というか、全く割に合いません。
- 上で述べた制約から、うちの店は特に儲かりません。
- 店の営業時間の何倍もの仕込み時間がかかります。
- 「パン作りが好き!」というモチベーションなしでは絶対に続きません。
他のパン屋に比べて変わっているところ
- 家事や育児を兼業しながらパンを作っていること。(よって営業は金曜と土曜のみ)
- 完全に独学でパン作りを習得したこと。(他の店で修行したり、専門学校に通ったりしていない)
- 小さい頃から料理が得意だったこと。(本人曰く、物心がついた頃から包丁を握っていたらしい)
- 社会人経験すら全くないまま開業したこと。
- パン屋を開業するにはかなり若いこと。(開業当時25歳)
- 折り込みチラシ等の宣伝は全くしていないこと。
- 宣伝を使わないどころか、妻は引っ込み思案なので誰にも「パン屋さんやってます。来てください♪」とは言わないこと。
開業から経営までの僕の役割
- 妻は自分を過小評価する傾向があるので、どんどん背中を押してやる。
- 昔から妻のセンスや第六感は優れているので、基本的に自由にさせる。問題がある時だけ軌道修正する。
- 妻は不安がりなので、困った時は相談に乗る。(といっても話を聞くだけ)
- 経理や法的な手続き等、ややこしい事務作業を受け持ち、妻をパン作りに集中させる。
- Webサイトの構築等、IT技術者としての専門知識を活用する。
妻の生活スタイル
- 木曜の朝から金曜の営業に向けた仕込みが始まる。
- 金曜と土曜は深夜の2時頃に起きて、準備を始める。
- パン作りの合間に朝食を作ったり、洗濯を干したりする。(どう見ても大変そう)
- 土曜の営業が終わった後は死んだように眠る。(本当に死んでいないか注意が必要)
- 月曜から木曜は家事や育児の合間を縫って、予約注文のパンを焼いたり、新しいパンを試作したりする。
パン屋を始めて良かったこと
- 「おいしかった」「子どもが喜んで食べた」「パン嫌いの主人がおいしいと言った」といったお客さんからの感想はプライスレス。
- 「おいしかったので誰かに贈りたい」といった声が多い。
- パンを贈られた人が新しいお客さんになってくれることも多い。(クチコミの一種?)
- ハード系のパンを買ってくれる人も意外と多い。最初はこんな田舎じゃ全然売れないんじゃないかと心配していた。
- 予想以上にリピート率が高く、売り上げも順調。
- ハイペースで売り切れてしまい、遅れて来たお客さんの手に渡らないときも出てきたので、逆にちょっと心苦しい。
- 小規模ながらも、材料を仕入れて、商品を作って、お客さんに売って、利益を得るという経済の1サイクルが目の前で見られるのは、僕としてはなかなか興味深い。
- 専業主婦を卒業してくれたので、万一僕の収入がなくなったときでも何とかなりそう。
おわりに
とまあ、振り返ってみるとこんな感じです。
軌道に乗ってきたといってもまだまだ開業して数ヶ月。これからもっといろんなことが起きると思います。
感じていることが変わってきたらまたまとめてみたいと思います。
良かったら店の方にも来てみてくださいね〜 (^ ^)/
P.S.
このエントリは妻のレビュー済みです。
あわせて読みたい
Coupé Baguette クープ バゲット
店のWebサイトはこちらです。
Coupe baguette : Coupé Baguette Blog
パン屋を開店する直前に書いた妻のブログです。
む!さ!し! : Coupé Baguette Blog
業務用のオーブンを購入した時に書いた妻のブログです。
もうね、失敗も載せちゃう! : Coupé Baguette Blog
刺激を受けたオフ会のエピソードとか、試行錯誤しまくって頃の思い出話とかが載ってます。
「Coupe Baguette」のWebサイトができあがるまで - give IT a try
裏方としての僕の活躍が垣間見れます。
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建物の施工会社を選んでいた頃のエピソードです。結局第一印象の通り、こちらのリフォーム会社に施工をお願いしました。
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