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Curse priest

Trigger Happy 出張所。D.Gray-manとシャドーハウスのネタバレ感想、アニメ感想を書いてます。

【Ib】IbでクトゥルフTRPG 2【ギャリイヴ】

2012-06-01 00:18:51 | Ib

ゲーム開始。
今回はイヴの導入部です。次回、ギャリーと合流。

ジャンのモデルは元彼です(笑) 中学の頃ってイタイもんさ。



(フゥ、いい風)

 イヴは窓から入るそよ風に目を細めた。長い髪が靡く。
 その美しさに男子達の目が釘付けになっているが、イヴは気づかない。
 やっと授業が終わった。校庭は春爛漫だ。花壇は花がほころび、蝶が舞っている。

(今日はギャリーに会える…)

 その想いで一杯で、一日中フワフワしたいい気分だった。
 中学に入り、ギャリーも多忙なので、小学生の時のようには簡単に会えなくなった。
 春休み中はよく会っていたから尚更だ。中学生になって初めての再会。

(制服…似合うって言ってくれるかな?)

 チェックのスカートにブレザー。
 小学生よりずっと大人っぽい。早く見せたくてソワソワする。
 ギャリーはいつもイヴをかわいいと言うけど、大人になった自分も見せたい。

(かわいいだけじゃなく…綺麗って言って欲しい、のかな?)

『ちっちゃくてかわいいアタシのイヴ』って呼んでくれるのも、とても嬉しいのだけど。
 ただ、約束まで少し時間がある。
 本当はギャリーのアパートに早く飛んでいきたいのだが、一人で時間を潰すのはちょっと切ない。
 友達と喋りながら帰るのも悪くなかった。
 新しく出来たクレープの店。春先に生まれた五匹の子犬。今一番好きな曲は?面白い番組は?
 でも、皆が一番関心のある噂は『白い魔女』だ。
 この地方の昔からの言い伝えの一つである。

『紅い蝶の翔ぶ夜は決して外に出てはいけない』

 美しき白い魔女が紅い蝶を引き連れてやってくる。
 彼女に魅入られた者は魂をさらわれ、二度と目覚めない。
 偉大な魔道士に封じられたが、彼女は必ず戻ってくるという。

『悪い子は蝶が魂をさらってしまうよ』

 は、この地方の親の脅し文句だ。
 その魔女が復活したという。
 最近、街で奇妙な眠り病が流行っており、原因が解らない。
 誰かがそれを魔女伝説と結びつけた。
 魔女に限らず、お化けや奇怪な話は沼のあぶくのように生まれては、いつの間にか弾けて消えるのだが、今回の噂は割と長く続いている。
 魔女というのが、ソソるのかも知れない。
 怖いけれど、綺麗というのがいい。
 その笑顔の下に恐怖が待っていると解っていても。
 でも、今まではただの噂だった。ギィが

「俺、見たんだよ、ホンモノ」

 と、言うまでは。

「何を?」
「だからさ、蝶だよ。紅い蝶」

 ギィは声を潜めて言った。アンリが隣でもっともらしく頷く。

「蝶? 蝶なんて何処にでもいるでござろう。見間違えではないか?」

 ジャンが呆れて肩をすくめた。
 ジャンは日本かぶれで、言葉遣いがおかしい。ジョー小杉の忍者映画が流行ったせいだ。
 ギィとアンリは昔からいたずらコンビだ。中学生になっても進歩がない。

「バッカ。蝶が夜に飛ぶかよ。しかも光ってんだぜ? 魔女の蝶に決まってるだろ」
「何処で見たでござる?」
「バンタムアベニューさ。街外れの…。
 そこで蝶が山手に飛んでいくのを確かに見たんだ、俺達」
「そうなんだ。しかも一匹だけじゃない。何匹もだぜ?
 あそこが紅い蝶の通り道になってんだ」
「あんな所で夜中に何してたでござる。廃墟ばかりではないか」
「だから面白いんじゃないか。誰の邪魔も入らないしな。お前も来ればいいのに」
「イヤでござるよ、それがしは」

 ジャンはイヴとシモーヌをちらりと見てから、首を振った。

「チェッ、女の前でカッコつけんなよ」
「腰抜けとは違うでござる。…慎重と呼んで下され」

 ジャンは曖昧な顔でそっぽを向いた。

(私達がいなければ、見栄張って行きそうね)

 イヴとシモーヌは顔を見合わせて、こっそり笑った。

「でも、おとぎ話じゃない、あんなの」
「だから、見たんだって! 信じないのかよ、シモーヌ」
「それは…」
「紅い蝶がいるなら、魔女もいるさ!
 綺麗だったなぁ。お前らも見たらびっくりするって。見たくないか?」
「でも、危ないんでしょ?」
「大丈夫だって! こっそりと後をついていけばバレないよ。
 多分、あの丘の古い屋敷に向かったと思うんだ。
 あそこ、何か気味悪いもんな。
 ずっと空き家だったのに、最近誰か買ったらしいし」
「そこに魔女がいるっていうの?」

 シモーヌは怖がっているが、ついていきたがってるのをイヴは見抜いていた。
 怖いもの見たさもあるが、アンリを好きだからだ。
 イヴと同じ高級住宅街出身なのだが、危なげな所がある。
 昔はイヴよりずっと内気で臆病だったが、好きなものから、すぐ影響されやすい。

「解んないけど…いたら面白いじゃないか」
「いるんなら、余計近寄らない方がいいわ」

 イヴは用心深く言った。たわいない話は嫌いではない。
 だが、イヴだけは現実に四年前美術館で不思議な事件に遭遇した。
 だから、絶対にいない!と言い切れない。さりとて、肯定も出来なかった。
 まして、自分の経験を人に話す気にもなれない。彼らの好奇心をそそるだけだ。

「何だよ、イヴは行かないのか?」

 アンリが心底意外そうな顔をした。

「怖いなら、俺が守ってやるよ」
「……え?」

 イヴが守って欲しいと思ってるのはギャリーだけだ。
 論外というのが顔に出てしまったのだろう。
 ギィがポンとがっくりしたアンリの肩を叩く。

「ゴメンね。私、これから用があるの。
 でも…やっぱりやめた方がいいわ、みんな」
「それに今日はいるとは限らないだろ? ちゃんと準備してから行けばいいだろ」

 ジャンも助け船を出す。

「心配すんなよ。秘密基地にもう色々準備はしてあるんだ。後は蝶の来るのを待つだけさ。
「イヴ、ホントに行かないの?」

 シモーヌが昔のままの、少し不安げな色を覗かせた。

「ごめんね、ホントに大事な用なの」

 イヴは両手を合わせる。

「ま、いいさ。写真、取ったら見せてやるよ」

 三人は並んで行ってしまった。イヴとジャンは見送って溜息をつく。

「何もないといいな…」

 イヴは呟く。妙な胸騒ぎがした。
 ギャリーとの約束さえなければついていったかも知れない。

「じゃ、拙者達も行こうか?」
「え、行こうかって何処に?」

 てっきりここでお別れと思ってたのでイヴは驚いた。

「お主は33区の花屋に用があるのであろう。それがしもなのだ」
「はぁ…」

 イヴの表情も気にせず、ジャンはスタスタ歩き出す。
 せっかくのギャリーとの再会に水を差されたようで気が重い。
 だが、日本かぶれという点を除けば、ジャンは普通の男子だ。
 きっと花を買ってくるよう家族に頼まれたのだろう。
 他にジャンの年頃の男が花屋に用がある理由が思いつかない。

(ま、いっか。ギャリーもすぐ仕事終わるし。そしたら二人っきり…)

 ジャンを無視して、イヴは花のように笑う。
 ショーウィンドウに映る自分の姿がおかしくないか、映るたび確認した。
 ギャリーが好きだろうと思う角度で笑ってみる。

「どうかしたでござるか?」

 ジャンが妙な顔でこっちを見ている。

「ううん、何でも」

 イヴは慌てて小走りに追いついた。顔を桜色に染めながら。
 



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