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再現性のあるイノベーション経営の型

旭化成 田村敏氏が実践したイノベーション創出事例から学ぶ、「再現性のあるイノベーション」の原動力とは

【第2回・後編】ゲスト:旭化成株式会社 顧問 田村敏氏

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 Japan Innovation Networkの理事を務める仙石太郎氏と、旭化成で顧問を務める田村敏氏による対談。田村氏は2019年から2021年にかけて、旭化成でイノベーション創出を促進する新たな組織の立ち上げと仕組みづくりを牽引した。後編となる本稿では、田村氏が初代本部長を務めた旭化成のイノベーション組織「マーケティング&イノベーション本部」での実践事例から、本題である「再現性のあるイノベーション」を生み出すためのヒントを探る。

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VCとアクセラレーターの機能を内包した“イノベーションの仕組み”を構築

仙石太郎氏(以下、敬称略):前編では、マーケティング&イノベーション本部(M&I本部)の設立に至るまでのお話を中心にお聞きしました。後編では、設立に伴う具体的な取り組みからお話をお伺いします。まず、市場創造型イノベーションの実践を組織に根付かせるために、どのような取り組みを行ったのか教えてください。

田村敏氏(以下、敬称略):M&I本部を立ち上げる際に参考にしたのは、シリコンバレーのスタートアップエコシステムでした。シリコンバレーでは企業同士ではなく、人と人が流動的に繋がって、新たな価値が生まれるエコシステムが形成されています。旭化成の中には、イノベーションの種となる技術や製品が数多く眠っていますが、それらを育て上げるには人と人が繋がり合う仕組みが必要だと考えました。そうした仕組みをM&I本部の中に取り入れることにしました。

 具体的には、VCとアクセラレーターの機能を持つ「M&Iアクセラレーション・システム(以下、MAS)」という枠組みを構築しました。まずは経営資源として本部で予算を獲得し、このシステム内で活動する事業化プロジェクトに必要な資金を提供するVCの機能を担います。その上でアクセラレーターの機能として、ビジネスモデル構築に必要な社内外とのネットワークや、全社のバックオフィス部門との連携などの支援を、必要なフェーズで受けられる体制を目指しました。

[画像クリックで拡大表示]

 また、MASの構築と事業化プロジェクトの運営を並行して進める一方で、本部内で新規事業創出に必要なマーケティングとイノベーションのプラットフォームの構築も同時に進めていきました。まず、MAS内の事業化プロジェクトで実践された部門間連携のスキームや、独自のノウハウを他の事業化プロジェクトにも適用しました。次に、その中で有効性が実証されたものをプラットフォームの機能として、既存事業の変革や拡大に横展開できる体制を目指しました。様々な事業化プロジェクトを推進する中で得られた知見を既存事業にもフィードバックしていくことで、旭化成全体のエコシステムに繋げていくことを狙っていました。

仙石:今までになかった新しい取り組みへの挑戦だったかと思いますが、社内での理解や協力はスムーズに得られましたか。

田村:M&I本部自体が社長直轄の組織として立ち上がったチームですので、設立当初は特に目立った障壁はなかったと思います。また、社内には日の目を浴びていない優れた技術やアイデアが数多く眠っており、その技術やアイデアを手がけているチームがプロジェクト化の機会を窺っていることも多いです。そうしたチームを仲間に引き入れていきました。だからこそ、様々な取り組みが実現したのだと思います。

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島袋 龍太(シマブクロ リュウタ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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