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Marehitoの溺れる魚は鳥かもしれない

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日々のやぶにらみ さよならペログリちゃん特大号

■「トリック」OR「レトリック」
Q:結局田中氏は何故落選したのでしょう?メディアはその原因の一つに「強引な政治手法」を上げていますね。
M:それはピントがずれている。それはもと支持者が反対派に鞍替えした理由ではあるけれど、それじゃあ田中氏が主張するような「成果」が達成されていたとするなら、何故ここまで支持率が落ちたのかの説明がつかない。
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Q:脱ダムを推進しましたが、死者12人を出す水害の直撃で田中氏の行政手腕に疑問符がつく「アンラッキー」な状況もありました。
M:「脱ダム宣言」の推進と、長野が日本で最も厳しい水害を被り、12人もの死者を出したという事実との因果関係が明確でないのは確かだね。しかし逆にいえば、だからこそ無関係だとも言えない訳だよ。そしてそれを地域住民はどう判断したのか、ということだよね。

Q:財政健全化はどうですか?
M:これも「数字のトリック」という説がある。基金切り崩しただけだとか、いろんな説がある。本当は大赤字なのを上っ面の帳尻だけ合わせてるという説まで唱える人もいる。しかし実際に長野の詳しいことはわからないし、何とも言いようがないね。ただ、もし田中氏が本当に財政健全化を達成していたとしても、それを長野県民が選挙の争点として重要視しなかったことは確か。




■「名医」の正体は「ポルポト」?
Q:財政は健全化されたけれど、経済の低迷がネックになったと。
M:結局、財政の健全化って、財政均衡化政策のことだけど、当然緊縮財政を取らざるを得ないから景気は低迷する。政治の難しさは景気の低迷のダメージを可能な限りコントロールしつつ、緊縮財政を断行するという本来矛盾することを同時に手がけるところにある。だから難しいわけで、公共事業をばっさりカットして(長野が水浸しで死者まで出したとしても)、土建業者を排除して(失業者が町にあふれても)、じゃあそれに代替するだけの新たな産業の育成や誘致に成功したのか?という問題が出てきてしまった。ぶっちゃけ、じゃあ長野県は公共工事やらずにどう食ってくの?という現実的な問いかけに対して、田中氏は説得力ある形で回答を示すことが出来なかった、ということではないかな。

Q:県民が現状から判断して、田中知事の県政下に於ける長野の将来に不安を抱いたと。
M:そうだと思うね。知事のパフォーマンで腹が膨れるわけではないし、代替産業の育成や誘致も期待をはるかに下回っていたとするなら、さらに議会と知事との対立が長引いて水害対策も進まない、仮にプライマリーバランスが回復に向かっていたとしても、この停滞した状況がポジティブな部分を無化してしまったというのはあるだろう。

医者がやってきて、あなたは重病だ、思い切った手術が必要だと告げられる。患者は医者を信じて手術を受け、体からいろんなものを取り除かれる。しかし、手術が終わっても一向に体調がよくならず、逆に衰弱していくばかり。医者は、「私は難しい手術を成功させた」とマスコミに触れ回り、その名声はうなぎのぼり。しかし患者は日に日に衰弱していく。

結局、ここで、「俺だ騙された、実験台にされた、利用されただけなんだ」と判断した人たちと、「先生は名医で、今はひどい状態だけど10年後とか20年後とかにはよくなるに違いない」と判断した人たちが分かれた。その二つの判断、二つの実感がこの選挙が争われたということなんじゃないかな。
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これからが本当の地獄だよ。結局元に戻るとしたら喜劇だし、戻れずに衰退するだけなら悲劇だし、是が非でも、もう一つ別の選択肢が欲しいところだよね。理念そのものが間違っていなかったとしても、それを現実化する能力のない政治家が強権を発動して強引に様々な政策を断行したら、後に残ったのは廃墟だけだったというのが今回の真相じゃないかな?「お菓子の家に人は住めない」ということでしょう。どこぞのサイトみたいに田中氏を「ポルポト」とまでは呼ばないけど(笑)


■長野バッシング
Q:ネット上でも、この問題をめぐって「長野バッシング」のような現象が多少見受けられますね。
M:やはり、「循環型経済」やら「ハコ型行政からの脱却」やら、打ち出したコンセプトが非常に魅力的であっただけに、それが頓挫してしまう口惜しさというのは、支持した人たちには強くあるだろうね。正直、私は田中康夫氏が個人的には大嫌いだし、政治家としてもその手腕には全く信頼を置いていないけれど、2期6年務めて組み上げて来たシステムが、簡単にリセットされてしまうとしたら、正直ちょっと考えてしまうね。まだ村井氏という人がよく分からないんで、なんとも言えないけど(笑)

しかし、だからと言って、それが頓挫したのは長野県民の責任だというのは明らかにおかしい。それは、もともと現実的な政治力を欠いていたにも関わらず、大言壮語して独断的な政権運営をしてきた田中氏の結果責任でしょう?木のガードレール作ろうが何しようが、それはそれでかまわない。しかしそれは、住民が納得できるレベルでの生活の安定と豊かさを確保して、それを前提とした上で目指すべきものだから。

問題なのは田中氏が「失敗」した、つまり田中氏が政治的に無能だったのか、掲げたビジョン自体が現実的には実現不可能な諸制約の中にあったのかはともかく、そうした負の可能性を検討しようとするプロセスが何故欠落しているのかということだよ。そのプロセスがないからグチグチ、「長野県民はいかに愚かか」という話をしつづけることになる。長野という現実の状況の中で生活している人たちと、遠くから田中康夫という人物に自分の理想を代替させて、長野に押し付けた田中支持者の人たちとの、意識の拭いがたい落差があると思う。ここに存在するのはある種の「南北問題」のような気がするね。


Q:長野バッシングを見ると、ある種の傲慢さを感じますね。ちょっと何様なんだという感じが・・・
M:ずいぶん前に「愚民考」というエントリーで書いたんだけど、衆議院選で大敗した民主党議員とその支持者が、「小泉を勝たせた国民の愚かさ」みたいな言説をネット上で氾濫させとき、それに対して「自己の無謬性を保全するための特異な認識構造を発達させてきた集団」の「ルサンチマン」として対象化したんだけど、今度は「田中を落選させた長野県民の愚かさ」みたいな話になっている。今考えるとこれって、ある種の「階級意識」のことなのかなって気もするね。田中康夫氏の支持者って、民主党の支持者と重なるしね(笑)。勝谷氏は、前に朝生で衆院選の選挙分析が自民圧勝なのに逆上して、「日本国民は愚かだー」とわめき散らして、スタジオ中をドン引きさせたのは記憶に新しい(笑)、今は長野は「中世の闇へ」(笑)

こういう人たちは、何故、もしかしたら自分が間違っているのかもしれないと、ちょっとでも考えないのだろうか?何故自分は絶対正しくなければならないと、考えるのだろうか?(笑)




■新党日本はどこにゆく?
Q:新党日本は民主党に必ず吸収されるんですか?
M:かなりの確率で吸収されると思う。新党日本と言うのは、政治的理念も現実的な政策上のコンセンサスもない、この地球上に存在する最も無意味な政党の一つだよね。国民のためでもなく、日本のためでもなく、ただひたすらにそこに帰属している政治家の延命のためだけの政党なわけだよ。一つには、政党化することによって政党交付金(国民の血税)を引っ張ってこれると言うのが大きい。こんな意味不明な政党でも2億ぐらい懐に入れているはずだからね。でもそれ以上に大きいのは、寄り集まって政党を作ることで、イメージを水増しして自分を高く売ることができるということだね。この辺の発想は、ライブドアがやっていた株式の時価総額経営と同じ発想だろう。中身のないものをイメージで水増しして、高く売り抜けようとする。どんな政党だって党首は党首だからね(笑)

Q:ピンで売るより、グロスで売った方が高く売れると。
M:そういうことです。今は寄生先を物色中ということでしょう。最終的には民主党の中に溶けていくと思う。つい先だって、小沢氏は郵政反対派の前衆議院議員川上義博氏を取り込んだばかりだし、参議院選に向けてなりふりかまわずに来るだろうから、可能性は非常に高い。逆に田中氏が新党日本は、中身のないパフォーマンスでも延命のための一時的な寄り合い所帯でもなく、真剣なものであって、この政党で政治活動を継続すると言うのなら少しは見直すけどね。まあ、こんな「しゃぶしゃぶのあく」みたいな政党の未来なんて、初めからないみたいなもんだけどね(笑)
by SpeedPoetEX | 2006-08-09 03:27 | 政治