来宮駅の車椅子の件:鉄道事業者は競争からそれなりに保護を受けている以上、一般民間事業者の論理そのままで考えるのは不適切。

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事前に連絡すべき、とか強行的な方法に批判も有るので、私の思うところを書いていく。

先行事例に対する考え

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飲食店は食品衛生監督者がおり、構造等が基準を満たしていれば保健所の認可は降りる。その際、近所に飲食店が有るからと言って制限はされないし、自身がすでに飲食店を営んでいるからといって、後からの新規参入を妨げることも制度的にはできない。

これこそ、純粋な民間事業者と言える。よって純粋な私人間契約の問題であり、事前連絡のない車椅子来訪者に対応できない個人事業者を責めるのは間違いである。

鉄道事業は新規参入業者が一定の条件を満たせば参入できるものではない。

鉄道事業の許可には事業計画が経営上適切であることを求められる。

鉄道事業法
(許可)
第三条 鉄道事業を経営しようとする者は、国土交通大臣の許可を受けなければならない。
2 鉄道事業の許可は、路線及び鉄道事業の種別(前条第一項の鉄道事業の種別をいう。以下同じ。)について行う。

 

(許可基準)
第五条 国土交通大臣は、鉄道事業の許可をしようとするときは、次の基準に適合するかどうかを審査して、これをしなければならない。
一 その事業の計画が経営上適切なものであること。
二 その事業の計画が輸送の安全上適切なものであること。
三 前二号に掲げるもののほか、その事業の遂行上適切な計画を有するものであること。
四 その事業を自ら適確に遂行するに足る能力を有するものであること。

とある。

これが路線バスの許認可となると

道路運送法

(許可基準)
第六条 国土交通大臣は、一般旅客自動車運送事業の許可をしようとするときは、次の基準に適合するかどうかを審査して、これをしなければならない。
一 当該事業の計画が輸送の安全を確保するため適切なものであること。
二 前号に掲げるもののほか、当該事業の遂行上適切な計画を有するものであること。
三 当該事業を自ら適確に遂行するに足る能力を有するものであること。

となり、経営上の適切さは許可基準に入らないのである。

一応、クリームスキミング的な運行は認めないようであるが、ダイヤに問題がなければ路線自体の参入には特に規制は無いようである。

https://www.mlit.go.jp/notice/noticedata/sgml/111/82000117/82000117.html

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航空法でも、事業許可に経営の適切さは求めていない。

混雑する空港を利用する場合には国土交通大臣の許可は必要であるが。

 

 鉄道事業の、事実上の地域独占性、排他性

さて、すでにある路線と競合するような鉄道路線を作るとしよう。

鉄道が無いところに作るのであればそれなりに利用者数を計算できるだろうが、既存路線がある場合、競争という不安定要因が出てくるわけである。

競争の結果、共倒れで廃線になっても困る。

そんなわけで既存路線と競合する新規路線の建設は困難である。

このように、既存事業者は新規参入による脅威から守られているわけである。

薬局距離制限違憲事件

既存事業者が新規の競合者を排除できる法規定は以前、薬事法にあり、それは違憲と判断された。いわゆる薬局距離制限違憲事件である。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=51936

そのなかで、

また、一般に、国民生活上不可欠な役務の提供の中には、当該役務のもつ高度の公
共性にかんがみ、その適正な提供の確保のために、法令によつて、提供すべき役務
の内容及び対価等を厳格に規制するとともに、更に役務の提供自体を提供者に義務
づける等のつよい規制を施す反面、これとの均衡上、役務提供者に対してある種の
独占的地位を与え、その経営の安定をはかる措置がとられる場合があるけれども、
薬事法その他の関係法令は、医薬品の供給の適正化措置として右のような強力な規
制を施してはおらず、したがつて、その反面において既存の薬局等にある程度の独
占的地位を与える必要も理由もなく、本件適正配置規制にはこのような趣旨、目的
はなんら含まれていないと考えられるのである。

 

と、独占を認める代わりに、役務の提供義務を定める場合もあるが、薬局は役務の提供自体は義務付けられておらず*1、廃業も自由にできる。

なので先に開業している薬局に地域で独占させる必要は無い、というわけだ。

 

そんなわけで、今回の問題に関し、鉄道事業者を一般企業の論理で考えるのは不適切だと思う。

 

ましてやJR東日本は国鉄の資産を受け継いで営業しているわけで、純粋な民間事業者とは言えまい。

 

*1:薬剤師法で調剤義務は有るが、医薬品等の販売義務まではない。