TWICEは2017年にベストアルバム『#TWICE』で日本デビューした韓国の女性9人組ダンス&ボーカルグループ。日本では韓国デビューの段階から既に人気となっており、ブレイク後も着実に人気を積み上げ、現在進行形でヒット曲を大量輩出している。これまでにストリーミング3,000万再生以上を記録した曲は33曲で、認定総再生回数は24.1億(歴代11位)となっている。これらのデータをランキング化した表は以下のとおりである。この表をもとにしながら、TWICEの日本でのヒット史を振り返る。
上記の他、メンバーのソロ活動でも以下のデータが記録されている。
なおこの記事では「日本国内で人気となっているTWICEの楽曲は何か」に焦点を当てるため、CDシングル売上枚数には言及しない。CDシングル売上枚数は2011年以降、市場縮小と各種商法の普及により、TWICEに限らず誰であっても楽曲人気指標として全く機能していないため、楽曲人気を計る目的で参照するデータとしては不適切である*1。
ここで取り上げるストリーミング再生回数データは全て、Billboard JAPANと日本レコード協会によって認定された、日本国内の再生回数を集計したデータである。詳しいランキング作成方法および各種歴代ランキングは以下記事で解説している。
2017年までの歩み
2017年までの楽曲を日本での配信開始日順に並べたストリーミング再生回数データは以下のとおり。
この時期の日本では未だSpotifyを始めとしたオーディオストリーミングサービスは市場が十分に普及していなかったため、後年のストリーミング市場拡大期に配信された楽曲と比べるとストリーミング再生回数規模は多くはない。この時期の日本国内の楽曲人気はむしろiTunesなどでのフル配信ダウンロード売上や、動画ストリーミングサービスであるYouTubeでのMV再生回数推移に表れており、これらのデータにも必要に応じて言及する。
なお、YouTubeチャートによれば、2024/12/26時点におけるTWICEの日本国内MV再生回数は36.3億(歴代3位)となっている。TWICEのMV再生回数に焦点を当てた分析は以下別記事に譲っている。
韓国でのデビュー~人気確立
TWICEは2015年にパク・ジニョン(J.Y.Park)率いるJYPエンターテインメントが主催した韓国のサバイバルオーディション番組SIXTEENから誕生した。この番組は韓国の音楽専門チャンネルMnetで放送されているものだったが、参加者16名中3名が日本人だったことから、日本でも韓国文化に敏感な若者の間では注目されていた。
オーディションの結果、この日本人3名と台湾人1名、韓国人5名の計9名がTWICEのメンバーに選ばれ、10月に1stミニアルバム『THE STORY BEGINS』で韓国デビューを果たした。このアルバム人気を牽引したリード曲「Like OOH-AHH」は日本でもYouTubeを中心に注目され、MV公開当初から高初動を記録。以降もTWICEの知名度拡大のタイミングで再浮上しロングヒットした。Billboard JAPANのChart Insightを見るとその模様がMV指標で可視化されている。
ストリーミングでは2017年に配信解禁されて以降の積み上げで5,000万再生を突破している。
2016年4月には2ndミニアルバム『PAGE TWO』を韓国で発売。そのリード曲「CHEER UP」の大ヒットによりTWICEは韓国内の人気を確立した。この曲は日本でもMV指標で公開当初から高初動を記録し、以降もTWICEの知名度拡大のタイミングで再浮上しロングヒットした。
ストリーミングでは2017年に配信解禁されて以降の積み上げで5,000万再生を突破している。
日本でのブレイク
ここまでで既にTWICEは日本でも韓国文化に敏感な若者を中心に認知を拡大させていたが、一段とその知名度を拡大させたきっかけとなった楽曲が、10月に発売された3rdミニアルバム『TWICEcoaster : LANE 1』のリード曲「TT」である。この曲は恋する女性が上手に想いを伝えられないもどかしさを歌詞にしており、それを表現するTTポーズ(泣いている絵文字を表現した振付)が視聴者にも真似しやすかったため流行の原動力となった。
日本ではMVが公開された2016年10月から高初動をマーク。翌2017年2月には日本向け配信限定アルバム『WHAT'S TWICE?』を発売し音源配信が解禁された。2017年6月には「TT (Japanese Ver.)」が配信解禁されたことでチャートを再浮上。そのままロングヒットを続け、2017年末にはMステスーパーライブに出演するなど、2017年の顔として存在感を発揮した。Billboard JAPAN Hot 100の年間では2017年6位→2018年19位と推移した。
ストリーミングでは原曲とJapanese Ver.ともに5,000万再生を記録。RIAJフル配信ダウンロード売上認定では、Japanese Ver.が自身唯一となる10万ダウンロードを突破している。
このJapanese Ver.が配信されたタイミングでTWICEは正式に日本デビューを果たした。日本1stベストアルバムとなる『#TWICE』は「TT」を始めとしたこれまでのヒット曲が原曲とJapanese Ver.の双方で収録されており、32万枚をセールスするヒット作となった。Billboard JAPAN Hot Albumsの年間でも2017年21位→2018年48位と推移した。本作には、韓国1stスペシャルアルバム『TWICEcoaster : LANE 2』のリード曲「KNOCK KNOCK」や韓国4thミニアルバム『SINGNAL』のリード曲「SIGNAL」も収録されており、何れも5,000万再生を突破している。
TWICEはここから日本向けの活動も活発化させていった。10月には日本1stシングルとして日本語曲「One More Time」を発売。Billboard JAPAN Hot 100の年間では2017年31位→2018年86位と推移する息の長い人気を記録し、累計では5,000万再生を突破した。
並行して10月末には韓国1stアルバム『twicetagram』を発売し、リード曲「LIKEY」が5,000万再生を記録した。12月には『twicetagram』のリパッケージ・アルバム『Merry & Happy』を発売し、リード曲「Heart Shaker」が5,000万再生を記録した。
2018年
2018年配信曲のストリーミング再生回数データは以下のとおり。
日本向け作品の人気
2018年1月には日本2ndシングル「Candy Pop」を先行配信。キュートなガーリーポップナンバーの本曲のMVでは、人気アニメ「ラブライブ!」の監督として知られる京極尚彦氏とのコラボが実現し、アニメと実写を組み合わせたものになっている。キッズ世代にアプローチしたアニメ描写はその世代のファンを開拓したほか、日本のアニメ文化に触れた海外からも反応を得た。*2
本曲は5,000万再生を記録。さらにBillboard JAPANのChart Insightでは、MVが約1年に渡り支持され続けていたことが可視化されている。
9月には日本1stオリジナルアルバム『BDZ』を発売し、日本では自身最大となる35万枚の売上を記録。Billboard JAPAN Hot Albumsでは2018年12位→2019年66位と推移した。本作収録曲では「Candy Pop」のほか、リード曲「BDZ」が5,000万再生、ジャクソン5のカバー「I WANT YOU BACK」が3,000万再生を突破している。
韓国語曲の人気
日本向け作品と並行する形で発売されていた韓国語曲においては、まず4月に発売された韓国5thミニアルバムのリード曲「What is Love?」が1億再生(RIAJ)を記録。この曲はBillboard JAPAN Hot 100の年間で2018年29位→2019年79位と推移するロングヒットとなった。続いて、7月に発売された5thミニアルバムのリパッケージ盤『Summer Nights』のリード曲「Dance the Night Away」が1億再生(RIAJ)を記録した。
そして11月には6thミニアルバムのリード曲「YES or YES」を配信。本曲は女性の積極的且つユニークなアプローチを歌詞にしたポジティブなダンスナンバーとして支持された。
Billboard JAPAN Hot 100では約半年間TOP100圏内を推移し、TOP100圏外となって以降も下位で延々と聴かれ続けた結果、2022年3月になって1億再生を突破した。
この頃より日本でもSpotifyなどのサブスクリプションサービスが本格的に普及し、ストリーミング市場が拡大していった。それに合わせて、活躍を続けていたTWICEも1億再生達成曲を数多く輩出していくことになる。
2019年
2019年配信曲のストリーミング再生回数データは以下のとおり。
2019年は2曲の1億再生突破曲が誕生した。一つは韓国7thミニアルバム『FANCY YOU』
の表題曲として4月に配信した「FANCY」。この曲はこれまで主軸としてきたキュートなガーリーポップとは異なる大人びた楽曲となったが、遺憾なく発揮された新たな魅力はTWICEの新章突入として広く受け入れられ、1億再生を突破する人気曲となった。Billboard JAPAN Hot 100の年間では2019年34位→2020年78位と推移するロングヒットを記録した。
9月には韓国8thミニアルバムのリード曲「Feel Special」を配信。この曲は、例え逆境に遭っても味方となってくれる人がいるからこそ自分らしく輝けることを描いた歌詞が特に強く支持された。ファンとの絆を描いた歌詞としての解釈はファンのロイヤリティを高めたほか、自分事に置き換えて解釈することもできたことで多くの人を鼓舞したこの曲は累計2.5億再生を突破。自身最多再生回数を記録するほどの人気曲となった。
この他、2019年には日本向け作品として2枚のアルバムが発売された。3月に発売された『#TWICE2』は「LIKEY」から「YES or YES」までのヒット曲の原曲とJapanese ver.を収録したベストアルバムで、31万枚を売り上げた。11月には日本2ndオリジナルアルバム『&TWICE』も発売され、22万枚を売り上げた。Billboard JAPAN Hot Albumsの年間では集計割れを起こし、2019年47位→2020年43位と推移した。
なお今のところ『&TWICE』の収録曲は何れもストリーミング認定を受けていない。ちなみに収録曲のうち日本5thシングル「Breakthrough」はCD売上チャートではSKE48「FRUSTRATION」に及ばず週間2位だったが、Billboard JAPAN Hot 100では配信指標の加点で逆転し週間1位を獲得している。
2020年
2020年配信曲のストリーミング再生回数データは以下のとおり。
6月には韓国9thミニアルバムのリード曲「MORE & MORE」を配信し、1億再生(RIAJ)を記録。同月には日本6thシングル表題曲「Fanfare」を先行配信し、こちらも1億再生(RIAJ)を突破した。9月には日本向け3rdベストアルバム『#TWICE3』を発売し、RIAJ10万枚出荷認定を受けた。
10月には新たな大ヒット曲が誕生した。韓国2ndフルアルバム『Eyes wide open』のリード曲「I CAN'T STOP ME」である。この曲は善悪の間で揺れる人間の内面を掘り下げた歌詞、80年代のトレンドを再構築したサウンド、中毒性の高いメロディーの三点が主に支持され、1億再生を突破した。
11月には日本7thシングル「BETTER」を配信し、3,000万再生を記録。12月には配信限定シングル「CRY FOR ME」を発売し、5,000万再生を記録した。
2021年以降
2021年以降配信曲のストリーミング再生回数データは以下のとおり。
2021年4月には日本8thシングル表題曲「Kura Kura」を先行配信し、5,000万再生を記録。6月には日本3rdオリジナルアルバムのリード曲「Perfect World」を先行配信し、5,000万再生を記録した。同月には韓国10thミニアルバム『Taste of Love』のリード曲「Alcohol-Free」を配信し、5,000万再生を記録した。
10月にシングルとして配信された「The Feels」は自身初となる全英詞曲。BTSが自身初の全英詞シングル「Dynamite」を大ヒットさせたことが記憶に新しい中でのこの試みは当然大きな注目を集めた。日本でもポジティブなエネルギーが詰まった楽曲内容や中毒性の高いメロディーが支持され、累計2億再生突破を果たした。
11月には韓国3rdオリジナルアルバム『Formula of Love: O+T=<3』のリード曲「SCIENTIST」を配信し、5,000万再生を記録した。
2022年に入っても活躍は続いた。7月には日本4thオリジナルアルバム『Celebrate』をリリースし、リード曲「Celebrate」が1億再生(RIAJ)を突破した。
8月には韓国11thミニアルバム『BETWEEN 1&2』をリリース。リード曲「Talk that Talk」が1億再生を突破した。本曲は夏終盤の恋愛ムードを盛り上げてくれるようなラブソングで、特にサビのメロディーの強さが光っており、メンバーの伸びやかな歌唱を堪能することができる。
また、この時期にはメンバーのソロ活動やサブユニットでの活動も活発化していった。まず2022年6月にはメンバーのNAYEONがミニアルバム『IM NAYEON』でソロデビューを果たし、リード曲「POP!」が1億再生を突破する人気となった。ポイントダンスと呼ばれる本曲の特徴的な振付は日本人ダンサーのMONAが手掛けており、TikTokではダンスチャレンジが流行した。
2023年1月には2nd全英詞シングル「MOONLIGHT SUNRISE」を発売し、5,000万再生を記録した。3月にはこの曲も収録した韓国12thミニアルバム『READY TO BE』をリリース。リード曲「SET ME FREE」が5,000万再生を記録した。5月には日本10thシングル「Hare Hare」をリリースし、5,000万再生を記録した。
2024年2月には韓国13thミニアルバム『With YOU-th』をリリース。表題曲「ONE SPARK」が5,000万再生を記録した。
まとめ
以上まで見てきたとおりTWICEは日本語曲、韓国語曲、英語曲万遍なく人気曲を長期に渡り日本国内で生み続けており、日本国外のアーティストでありながら言語の壁がないほどに日本国内で親しまれている。しかもその大活躍は現在進行形で続けられており、この記事で言及しているデータも今後適宜最新のものに置き換えていく予定である。
この記事で紹介したストリーミングやダウンロードのデータはBillboard JAPANの公式サイトや日本レコード協会の公式サイトから検索することができる。新たな発見の宝庫なので、時間があれば好きな曲やアーティストのデータを検索してみることをお勧めする。
*1:CDアルバム売上枚数についても、シングルからはやや遅れて作品人気指標としての機能不全が発生している。本記事ではCDアルバム売上への言及についても2021年度集計期間までにヒットのボーダー(10万枚)を超えた作品に限定する。