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「警備員の誘導に従ったのに…」混雑するスーパーの駐車場の入り口で事故…悪いのは誰?
画像はイメージです(metamorworks / PIXTA)

「警備員の誘導に従ったのに…」混雑するスーパーの駐車場の入り口で事故…悪いのは誰?

休日のアウトレットモールやスーパーなどは、車の往来が多く、駐車場の出入り口が混雑している。よく見る光景だ。この出入り口付近で、交通事故が起きる事もしばしばある。

この混雑する駐車場の出入り口付近で、警備員の誘導に従った結果、車の接触事故を起こしてしまった、という相談が弁護士ドットコムに寄せられている。

相談者によれば、事故はセンターラインがなく、車が2台通れるほどの道路で起きた。 道路左側はスーパーに入るための車で渋滞しており、右側は直進するための道路で、相談者は、直進しようとした。スーパーの警備員の誘導のもと、右側の道路を走っていたところ、渋滞していた左の列からなんの合図もなく車が飛び出してきて接触事故となった。

しかも、接触の際、相談者は停車したが、相手は接触部分を離そうと無理に前進し、余計に傷が酷くなったという。

相手は、「自分の過失は1」だと言い張っているが、相談者は納得がいっていない様子。この場合でも相談者に過失は認められるのか。相手の修理代は22万円だという。

山本明生弁護士に聞いた。

●警備員の交通誘導に従う義務は?

——そもそも、警備員の交通誘導に従う必要はあるのでしょうか。

道路交通法上、車両の運転者は、信号機の表示する信号又は警察官等の手信号等に従わなければなりません(道交法7条)。「警察官等」とは、警察官または交通巡視員のことをさします(同法6条1項)。

したがって、手信号等により交通整理が出来るのは警察官又は交通巡視員ということになります。

——「交通巡視員」には、警備員も含まれるのでしょうか?

そうではありません。「交通巡視員」とは、警察官以外の交通安全の確保その他の指導を行う警察職員です(同法114条の4第1項、3項)。スーパーの警備員は警察官でも交通巡視員でもありません。

このことから警備員が交通整理を行うことは出来ず、警備員の交通誘導は、円滑な交通のための事実行為(運転者に対し任意の協力を求めるというもの)にすぎないといえます。

つまり、警備員の交通誘導があっても法的には従う義務はない(道路交通法が優先される)ということになります。

●誘導にしたがって事故を起こした場合の責任

——交通誘導に従って事故を起こした場合でも、相談者に過失があることになるのでしょうか。

前述のとおり、警備員の交通誘導については円滑な交通のための事実行為ですので、車両の運転者は警備員の交通誘導があったとしても、自ら周囲の安全状況を確認した上で運転をしなければならない注意義務があります。

それ故、警備員の交通誘導に従った結果事故を起こした場合であっても、原則として運転者に過失が認められることになります。

——本件で相談者に過失があったといえるのでしょうか。

本件の事故状況からすれば、車列から飛び出してくる車があることを予見でき、接触を回避すべき注意義務が認められるでしょう。相談者には過失が認められることになると思われます。

●相手方がつけた傷についての損害賠償責任は?

——相手方が接触部分を無理に離そうとした際についた傷についても、相談者が損害を賠償しなければならないのでしょうか。

具体的状況によるとは思われますが、例えば、当初の接触後相当時間が経過し、当初の事故とは別の機会に損傷したといえるような場合には、当該損傷は専ら相手方の行為によるものであるといえます。

このような場合には、相談者が損害を賠償する必要はないと思われます。

——相手は「自分の過失は1」と主張しているそうです。 過失割合については具体的な事故状況を踏まえて検討する必要があります。

もっとも、相手方車両は、何らの合図無く飛び出してきたとのことですので、これについては相談者に有利に過失割合を修正する要素になると思われます。

また、警備員の交通誘導の内容によっては、警備員にも過失が認められる可能性もあると思われます。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

この記事は「みんなの法律相談」に寄せられた実際の相談をもとに、新たに弁護士の解説を追加して作成しています。

プロフィール

山本 明生
山本 明生(やまもと あきお)弁護士 山本明生法律事務所
大阪弁護士会所属。交通事故被害(死亡事故、重度後遺障害案件を含む)、相続、離婚など個人をとりまく身近なトラブルを多く扱っている。「話しやすく、分かりやすい弁護士であるべき」との信念に基づき日々活動している。

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