• 更新日:2017年10月14日
  • 公開日:2017年8月27日

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男装の麗人

『にあいさう 弘化年間廓の芸者風俗』(『風俗三十二相』より、月岡芳年 画)
『にあいさう 弘化年間廓の芸者風俗』(1888年/明治21年)
満月が照らすのは男性ファッションに身を包んだ吉原の美人芸者。倒錯的な色気があります。孔雀の羽をデザインしたド派手な衣装がステキ。手にした扇子に「俄(にわか)」と書いてありますが、「俄」というのは吉原で行われた夏イベントで、即興で芝居などをするのですが、出演者は男装しました。

さわやかな色気

『めがさめさう 弘化年間むすめの風俗』(『風俗三十二相』より、月岡芳年 画)
『めがさめさう 弘化年間むすめの風俗』(1888年/明治21年)
寝起きの娘さんが寝乱れた姿のまま歯磨き中。覚醒しきっていないボンヤリした目がいいですねぇ。絞り(たぶん)の浴衣とチラ見えする襦袢、娘さんの脇にある朝顔ーーそれぞれの紺色と赤の色づかいの妙。


夏の夜の天敵

『かゆさう 嘉永年間かこゐものの風ぞく』(『風俗三十二相』より、月岡芳年 画)
『かゆさう 嘉永年間かこゐものの風ぞく』(1888年/明治21年)
蚊帳(かや)のなかにまで侵入されてしまったようで、蚊に刺された女性が痒さに耐え切れず起き出してきたところ。ちなみに彼女はお妾さんでやたら豊満なカラダがいやらしい……。今にも落ちそうになっている櫛(くし)に月岡芳年のディテールへのこだわりを感じます。

天ぷらが食べたくなる

『むまさう 嘉永年間女郎之風俗』(『風俗三十二相』より、月岡芳年 画)
『むまさう 嘉永年間女郎之風俗』(1888年/明治21年)
タイトルの「むまそう」というのは「うまそう」という意味。たしかにうまそうな天ぷらです。ちなみにネタは海老らしい。細い縞が小粋な着物を着たこの女性は幕末の遊女で、口元に手をあて婀娜(あだ)っぽく笑うさまには玄人感が漂います。小娘にはマネできませんよ、これは。

どっちにしようか迷っちゃう

『かいたさう 嘉永年間おかみさんの風俗』(『風俗三十二相』より、月岡芳年 画)
『かいたさう 嘉永年間おかみさんの風俗』(1888年/明治21年)
左右それぞれの手に福寿草の鉢植えを持ち、ウキウキしたようすで品定めするおかみさん。まるで少女のように高揚した表情がすばらしい。いつの時代も買い物は女性の心を浮き立たせます。

うずうず、うずうず

『じれつたさう 嘉永年間鳶妻之風俗』(『風俗三十二相』より、月岡芳年 画)
『じれつたさう 嘉永年間鳶妻之風俗』(1888年/明治21年)
長い煙管(キセル)を握りしめ険しい視線を送っているのは鳶の妻。壁に火消しの衣装があるように、鳶は消防活動もしていました。火事があって鳶の人たちが消防活動に行くところを見守っているのでしょうか。「あぁ、もう!ぜんぜんなっちゃいないねぇ!」と叱咤したくてうずうずしているのが伝わってくるようです。

近所で噂の美人お師匠さん

『たのしんでゐさう 嘉永年間師匠之風俗』(『風俗三十二相』より、月岡芳年 画)
『たのしんでゐさう 嘉永年間師匠之風俗』(1888年/明治21年)
こちらの美人は三味線のお師匠さん。キュッとあがった口角がイイ! キレのある美女です。幕末三味線の先生は女性の仕事として定着しており、大人の男性から女の子まで多くの人が三味線のお稽古に通いました。この絵のような美人先生なら大繁盛間違いなしだったでしょうね。

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