2015年 11月 22日 <:/p>
11/21放送:NHKスペシャル東日本大震災「追跡_原発事故のゴミ」を視聴して
NHKスペシャル 東日本大震災「追跡 原発事故のゴミ」
東京電力福島第一原発の事故によって東日本に降り注いだ放射性物質。
汚染された土や稲わらなどのかたちで発生した廃棄物(ゴミ)は全国でおよそ3千万トンを超えると国は推計してきた。ところが、どこに、どのような状態で置かれているのか、これまで全体像ははっきりしてこなかった。
それが今回、大規模な自治体へのアンケートで初めて明らかになった。
処分の方策すら見つからないこうしたゴミとどう向き合えばよいのか、考える。
果てしなく広がるフレコンバッグの山。NHKが全国の自治体にアンケート調査や情報開示請求で入手したデータに基づき、原発事故によって汚染された「核のゴミ」が岩手県から静岡県までの広い地域に今も保管されたままの実態をテレビで報道した。
これらの「核のゴミ」は、除染で出た汚染土壌や汚染された牧草、下水汚泥など、様々な形で存在している。その総量は920万立米にのぼり、東京から出るゴミの約4年分に相当する。その多くが除染で出た汚染土壌で、特に多いのが福島県の飯舘村だという。
こうした「核のゴミ」は処分しようにも持って行き場が無く、「仮置き場」に貯めているが「仮置き場」もすぐに一杯になるので「仮仮置き場」を作り、そこもすぐ一杯になるので現在は「現地保管」しているという。
そして福島県に整備予定の「中間貯蔵施設」について環境省を取材し、地権者2364名中わずか14名しか合意がとれていない現状を報告する。このあたりの取りあげ方は「中間貯蔵施設」の必要性アピールが目的の「プロパガンダ」にも思える。
ただし番組では「除染などで回収された放射性物質は降り注いだ量のわずか3%にすぎない」という衝撃的な事実も伝える。これは多くの国民がこれまで把握していなかった重要な情報ではないだろうか。
というのも、これまで「核のゴミ」処理に費やした時間は約5年、費用は数兆円にのぼるため、その成果がわずか3%にすぎないということは、全てを回収するためには150年以上の時間と100兆円を超す予算が必要ということになるからだ。
そして場面は福島県から横浜に移動する。横浜市の学校敷地内に原発事故由来の汚染ゴミ(汚泥)が保管されている現場を取材し、「本来の保管場所ではないので早く処分して欲しい」という関係者のコメントを紹介する。
これらの「核のゴミ」は原発事故後に国が定めた基準(1キロあたり8000ベクレル)に満たないと説明するが、その8000ベクレル基準についての「胃のX線検診の1/3」という安全面を強調した解説ぶりには首をかしげざるを得ない。
これは明らかなミスリードで、本来は原発事故前の基準(クリアランスレベル=100ベクレル)を紹介し、事故後に成立した基準が事故前の80倍に引き上げられた「二重規制」になっている現状がこの問題の最大のポイント、と解説すべきではないだろうか。
番組は、その後も関東の「核のゴミ」の実態を取材していく。群馬県前橋市には42000ベクレルの汚染ゴミが、前橋市以外にも45箇所に汚染ゴミ(浄水発生土や下水汚泥)が保管されていることを紹介する。
横浜市は8000ベクレル以下だが処分できない汚染ゴミを3万立米保管中で、横浜市は100ベクレル(=事故前の基準)を下回らないかぎり処分しない方針だという。さらに汚染濃度が100ベクレル以下に下がるためには150年以上の時間が必要だとも。
場面は再び東北に移動し、宮城県加美町の最終処分場候補地の住民反対運動を取材する。反対運動が続く加美町では住民の8割が農業を営み、8000ベクレルを超える放射性廃棄物が漏れたらどうなるのか、と心配する農家のコメントを紹介する。
宮城県には8000ベクレル以上の指定廃棄物が3千トン以上も野積みだが、最終処分場の建設が予定されている関東・東北5県で計画が進んでいる地域は一つもなく、国の計画に異議を唱える自治体(栃木県塩谷町)も出てきた、と紹介する。
一方で番組は、被災地にもかかわらず最終処分場建設計画がない岩手県も取材。岩手県一関市にも8000ベクレルを超える汚染ゴミが発生しているが、一関市では普通のゴミと汚染ゴミを混ぜて薄めて燃やす「混焼方式」で処理している、と紹介する。
これは震災がれき広域処理で、焼却灰を100ベクレル以下に薄めるために受入自治体がやった手法と同じだが、総量規制が無いので薄めても放射性物質の総量は変わらない。
ここから番組の後半。後半は汚染ゴミの「減容化」にスポットをあてて、被災地の除染をすすめるきっかけを作った児玉教授を取材し、児玉教授が一押しの「減容化焼却炉」のステマのような場面も登場する。
そして「電力を消費している東京も含めて広い地域で引き受けるべき」と児玉氏のコメントを紹介する。東京も含めて広い地域で議論することには私も異論ないが、環境省の方針を一方的に押しつける従来のやり方だと、震災がれき広域処理問題の再燃が危惧される。
番組のラストは再び福島に場面が移動し、原発事故から5年目を迎える汚染の象徴として「希望の牧場」が登場する。この命を繋いでいるのが他地域から送られてくる「汚染牧草」だ。「牛たちと運命を共にする」という牧場主のコメントを紹介して番組は終了する。
番組終了後は「東電や政府の責任には触れずじまい」「まるで天災か何かのような報道」「住民に押し付けようというプロパガンダ」等の感想も少なくなかった。確かに汚染の原因を作った東電が一度も番組に出てこなかった事は大いに疑問と言わざるを得ない。
一方、この問題についてこれまで余り関心を持ってこなかった国民が大多数の中、まずは「核のゴミ」問題の現状を認識してもらうという意味では良いきっかけになったと思う。おそらく今のNHKでは、あの番組構成が限界なのだろう。
ところで、この番組のテーマは「汚染された土や稲わらなどのかたちで発生した廃棄物(ゴミ)は全国でおよそ3千万トンを超えると国は推計してきた。処分の方策すら見つからないこうしたゴミとどう向き合えばよいのか、考える」と紹介されている。
つまり視聴者に『処分の方策』を問いかけるための番組ということなので、その視点で番組内容を今一度検証してみようと思う。
番組の前半では溢れかえる「核のゴミ」の実態と難航する「中間貯蔵施設」や「最終処分場」計画の困難性をアピールし、番組の後半では「減容化焼却炉」により燃やしてゴミの総量を減らすことがベターな『今後の方策』だとアピールしているように思える。
関東・東北5県に計画されている「最終処分場」だが、私は近い将来「指定廃棄物は発生県内で処分する」という「基本方針」が見直されるだろうと予測する。その場合、各地で保管中の「核のゴミ」は福島の「中間貯蔵施設」に運ばれるのが最有力だ。
しかし、各地から「核のゴミ」をそのまま「中間貯蔵施設」に運んで処理するのは流石に地元の理解が得られないので、「減容化焼却炉」を出来る限り多く設置して量を減らしてから「中間貯蔵施設」に運ぶ、政府はこういうスキームを作りたいのではないだろうか。
そしてそれは、とりもなおさず環境省が所管するゴミ焼却炉メーカー(≒原子炉メーカー)の利権と合致する。なにしろ各地で保管中の「核のゴミ」920万立米(約900万トン)は震災がれき(約2000万トン)の半分だが、これでもまだ全体の3%に過ぎない。
ということは、震災がれき処理(約1兆円)の少なくとも15倍(約15兆円)以上の予算を必要とする大規模公共事業になるのだから、ゴミ焼却炉メーカーが手ぐすね引いて待っている状況がどうしても目に浮かぶ。
まもなく各省庁の2016年度予算内示が明らかになる頃だが、環境省の予算内示を細かくチェックしてみれば、彼らが進めたい『今後の方策』がうっすらと見えてくる気がする。
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東京電力福島第一原発の事故によって東日本に降り注いだ放射性物質。
汚染された土や稲わらなどのかたちで発生した廃棄物(ゴミ)は全国でおよそ3千万トンを超えると国は推計してきた。ところが、どこに、どのような状態で置かれているのか、これまで全体像ははっきりしてこなかった。
それが今回、大規模な自治体へのアンケートで初めて明らかになった。
処分の方策すら見つからないこうしたゴミとどう向き合えばよいのか、考える。
果てしなく広がるフレコンバッグの山。NHKが全国の自治体にアンケート調査や情報開示請求で入手したデータに基づき、原発事故によって汚染された「核のゴミ」が岩手県から静岡県までの広い地域に今も保管されたままの実態をテレビで報道した。
これらの「核のゴミ」は、除染で出た汚染土壌や汚染された牧草、下水汚泥など、様々な形で存在している。その総量は920万立米にのぼり、東京から出るゴミの約4年分に相当する。その多くが除染で出た汚染土壌で、特に多いのが福島県の飯舘村だという。
こうした「核のゴミ」は処分しようにも持って行き場が無く、「仮置き場」に貯めているが「仮置き場」もすぐに一杯になるので「仮仮置き場」を作り、そこもすぐ一杯になるので現在は「現地保管」しているという。
そして福島県に整備予定の「中間貯蔵施設」について環境省を取材し、地権者2364名中わずか14名しか合意がとれていない現状を報告する。このあたりの取りあげ方は「中間貯蔵施設」の必要性アピールが目的の「プロパガンダ」にも思える。
ただし番組では「除染などで回収された放射性物質は降り注いだ量のわずか3%にすぎない」という衝撃的な事実も伝える。これは多くの国民がこれまで把握していなかった重要な情報ではないだろうか。
というのも、これまで「核のゴミ」処理に費やした時間は約5年、費用は数兆円にのぼるため、その成果がわずか3%にすぎないということは、全てを回収するためには150年以上の時間と100兆円を超す予算が必要ということになるからだ。
そして場面は福島県から横浜に移動する。横浜市の学校敷地内に原発事故由来の汚染ゴミ(汚泥)が保管されている現場を取材し、「本来の保管場所ではないので早く処分して欲しい」という関係者のコメントを紹介する。
これらの「核のゴミ」は原発事故後に国が定めた基準(1キロあたり8000ベクレル)に満たないと説明するが、その8000ベクレル基準についての「胃のX線検診の1/3」という安全面を強調した解説ぶりには首をかしげざるを得ない。
これは明らかなミスリードで、本来は原発事故前の基準(クリアランスレベル=100ベクレル)を紹介し、事故後に成立した基準が事故前の80倍に引き上げられた「二重規制」になっている現状がこの問題の最大のポイント、と解説すべきではないだろうか。
番組は、その後も関東の「核のゴミ」の実態を取材していく。群馬県前橋市には42000ベクレルの汚染ゴミが、前橋市以外にも45箇所に汚染ゴミ(浄水発生土や下水汚泥)が保管されていることを紹介する。
横浜市は8000ベクレル以下だが処分できない汚染ゴミを3万立米保管中で、横浜市は100ベクレル(=事故前の基準)を下回らないかぎり処分しない方針だという。さらに汚染濃度が100ベクレル以下に下がるためには150年以上の時間が必要だとも。
場面は再び東北に移動し、宮城県加美町の最終処分場候補地の住民反対運動を取材する。反対運動が続く加美町では住民の8割が農業を営み、8000ベクレルを超える放射性廃棄物が漏れたらどうなるのか、と心配する農家のコメントを紹介する。
宮城県には8000ベクレル以上の指定廃棄物が3千トン以上も野積みだが、最終処分場の建設が予定されている関東・東北5県で計画が進んでいる地域は一つもなく、国の計画に異議を唱える自治体(栃木県塩谷町)も出てきた、と紹介する。
一方で番組は、被災地にもかかわらず最終処分場建設計画がない岩手県も取材。岩手県一関市にも8000ベクレルを超える汚染ゴミが発生しているが、一関市では普通のゴミと汚染ゴミを混ぜて薄めて燃やす「混焼方式」で処理している、と紹介する。
これは震災がれき広域処理で、焼却灰を100ベクレル以下に薄めるために受入自治体がやった手法と同じだが、総量規制が無いので薄めても放射性物質の総量は変わらない。
ここから番組の後半。後半は汚染ゴミの「減容化」にスポットをあてて、被災地の除染をすすめるきっかけを作った児玉教授を取材し、児玉教授が一押しの「減容化焼却炉」のステマのような場面も登場する。
そして「電力を消費している東京も含めて広い地域で引き受けるべき」と児玉氏のコメントを紹介する。東京も含めて広い地域で議論することには私も異論ないが、環境省の方針を一方的に押しつける従来のやり方だと、震災がれき広域処理問題の再燃が危惧される。
番組のラストは再び福島に場面が移動し、原発事故から5年目を迎える汚染の象徴として「希望の牧場」が登場する。この命を繋いでいるのが他地域から送られてくる「汚染牧草」だ。「牛たちと運命を共にする」という牧場主のコメントを紹介して番組は終了する。
番組終了後は「東電や政府の責任には触れずじまい」「まるで天災か何かのような報道」「住民に押し付けようというプロパガンダ」等の感想も少なくなかった。確かに汚染の原因を作った東電が一度も番組に出てこなかった事は大いに疑問と言わざるを得ない。
一方、この問題についてこれまで余り関心を持ってこなかった国民が大多数の中、まずは「核のゴミ」問題の現状を認識してもらうという意味では良いきっかけになったと思う。おそらく今のNHKでは、あの番組構成が限界なのだろう。
ところで、この番組のテーマは「汚染された土や稲わらなどのかたちで発生した廃棄物(ゴミ)は全国でおよそ3千万トンを超えると国は推計してきた。処分の方策すら見つからないこうしたゴミとどう向き合えばよいのか、考える」と紹介されている。
つまり視聴者に『処分の方策』を問いかけるための番組ということなので、その視点で番組内容を今一度検証してみようと思う。
番組の前半では溢れかえる「核のゴミ」の実態と難航する「中間貯蔵施設」や「最終処分場」計画の困難性をアピールし、番組の後半では「減容化焼却炉」により燃やしてゴミの総量を減らすことがベターな『今後の方策』だとアピールしているように思える。
関東・東北5県に計画されている「最終処分場」だが、私は近い将来「指定廃棄物は発生県内で処分する」という「基本方針」が見直されるだろうと予測する。その場合、各地で保管中の「核のゴミ」は福島の「中間貯蔵施設」に運ばれるのが最有力だ。
しかし、各地から「核のゴミ」をそのまま「中間貯蔵施設」に運んで処理するのは流石に地元の理解が得られないので、「減容化焼却炉」を出来る限り多く設置して量を減らしてから「中間貯蔵施設」に運ぶ、政府はこういうスキームを作りたいのではないだろうか。
そしてそれは、とりもなおさず環境省が所管するゴミ焼却炉メーカー(≒原子炉メーカー)の利権と合致する。なにしろ各地で保管中の「核のゴミ」920万立米(約900万トン)は震災がれき(約2000万トン)の半分だが、これでもまだ全体の3%に過ぎない。
ということは、震災がれき処理(約1兆円)の少なくとも15倍(約15兆円)以上の予算を必要とする大規模公共事業になるのだから、ゴミ焼却炉メーカーが手ぐすね引いて待っている状況がどうしても目に浮かぶ。
まもなく各省庁の2016年度予算内示が明らかになる頃だが、環境省の予算内示を細かくチェックしてみれば、彼らが進めたい『今後の方策』がうっすらと見えてくる気がする。
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by azarashi_salad | 2015-11-22 16:41 | 政治 <:/p>