東芝、“CELL REGZA”を12月上旬発売。実売約100万円

-「テレビの革命」。Cell超解像/LED制御、3TB HDDなど


12月上旬発売

標準価格:オープンプライス


発表会場の模様。東芝ブースはCELL REGZAを全面展開

 株式会社東芝は5日、10月6日に開幕するCEATEC JAPAN 2009会場となる幕張メッセで、メディアプロセッサ“Cell”を搭載した液晶テレビ「REGZA」のフラッグシップモデル「CELLレグザ 55X1」を発表した。

 12月上旬発売で、価格はオープンプライス。店頭予想価格は100万円程度の見込み。月産台数は1,000台。

  PlayStation 3にも搭載している高性能メディアプロセッサの「Cell Broadband Engine」を搭載した液晶テレビで、REGZAシリーズ最上位モデルと位置付けられる。アルミボディのディスプレイ部と、Cellを中心としたメディア処理回路や、11系統の地上デジタルチューナ、3系統のBS/110度CSデジタルチューナ、1系統の地上アナログチューナ、3TB HDD搭載したチューナ部から構成される。


CELLレグザ 55X1LEDバックライトを採用したディスプレイ部

チューナユニット

 ディスプレイ部は55型で、LEDバックライトを採用。Cellの処理能力を活かした新超解像技術や色超解像、自社開発のLEDバックライトアレイやエリア制御技術の採用などで、ダイナミックコントラスト500万:1というハイコントラストを実現するなど、画質を徹底的に追求。

 超解像については、1枚の映像の近似した部分を検出して、その画像を重ね合わせて新たな画像を生成する「自己合同性」の超解像処理を導入。「おまかせドンピシャ高画質3」などの機能も搭載する。

 さらに、専用設計のデジタルアンプ/オーディオシステムや、地デジ8番組同時マルチ表示、大容量HDDに地デジ8チャンネルを1日分常に録画する“タイムシフトマシン”録画など、Cellを活かしたアプリケーションや潤沢なハードウェア資産を活かした様々な新機能を搭載している。

 CELLレグザ「55X1」の機能詳細については別記事で紹介。ここでは発表会やCEATEC JAPAN 2009会場におけるデモの様子をレポートする。

REGZA 55X1をブース全面展開チューナユニットには大型のインシュレータチューナユニットの背面
CELLレグザ 55X1専用設計のスピーカーを搭載薄型のディスプレイ部

 


■ CELL REGZAは「テレビの革命」。「カラーテレビ誕生時のような感動を」

東芝デジタルメディアネットワーク社 大角正明社長

 発表会では、東芝デジタルメディアネットワーク社の大角正明社長が「CELL REGZA」への思いや戦略について説明した。なお、CEATEC JAPAN 2009の東芝ブースでは、展示をCELL REGZAのみに絞って機能や将来像などを紹介。他のREGZAシリーズやVARDIA、ノートパソコンなどの展示は行なわない。

 大角社長は、「ついにこの日がやってきました。開発構想以来ほぼ4年を要し、昨年、一昨年来いろんな機会でお話してきましたが、ついに発表できます。東芝は、テレビという家電のど真ん中にある製品を、1957年以来1億8,000万台作ってきた。私は、初めて家にテレビがやってきた時を覚えていますが、それは大きな感動だった。そうした感動を伝えるのは映像の東芝の使命だ」とCELL REGZAに込めた思いを説明した。

 CELL REGZAが目指したものとして、「東芝が追求しているテレビ。それはわくわくさせること。驚き、感動、喜び。さまざまな感動を実体験のように適用するそれがテレビだと思っている。CELL REGZAの圧倒的な高画質は受動的なWatchする機械から能動的なExperienceする機械、五感を震わせるものにする。録画とネットワークにより、コンテンツもレシーブから、ディスカバーに変えていく。ユーザーは好きな時に好きなだけコンテンツを楽しめる。これはテレビの革命。東芝の総合技術力の結集で、最高のエンターテインメントマシン」と紹介した。

東芝のテレビの歴史CELL REGZAの3つの特徴
メガLEDパネルで輝度1,250cd/m2を実現メガLEDパネルは512ブロックのエリア分割駆動を実現色超解像処理も新搭載
3TBのHDDで録画機能を充実

 その後、ビデオでCELL REGZAの新機能を紹介。CELLプラットフォームや、新開発したLEDバックライトシステムを使った「メガLEDパネル」、オーディオシステムなどを紹介。メガLEDパネルについては、パネルは他社のものだが、ドライブ回路やバックライトアレイなどを自社開発したことで、こう命名している。

 録画機能については、3TB HDDの搭載と新しいコンテンツ検索システム「ローミングナビ」を紹介。「放送時間、テレビを見るという概念を変え、時間の軸を変える。新しいテレビの見方、操作の仕方だ」と紹介。「ネットサーフィンならぬ番組サーフィンが可能になる」とアピールした。

 また、Operaと共同開発したWebブラウザの「フルHDブラウザ」やYouTube機能などは「ソフトウェアアップデートで対応していく。CELL REGZAは進化するテレビ(大角社長)」と説明。「東芝がCELL REGZAを世に生み出したのは、TVで世の中に新たな喜びを生み出すため、カラーテレビ誕生の時のような驚き、感動、興奮を再び感じていただけるだろう」と自信を語った。

 


■ CELL REGZAの機能を普及価格帯に落とし込む

 新機能を紹介したのちに、CELL REGZAの同社テレビ戦略上の位置付けを説明した。

なぜ、コモディティ時代にCELL REGZAなのか?

 大角社長は、「なぜ、コモディティの時代といわれる今、CELL REGZAなのか?」と問いかけ、「東芝は昨年販売額は前年比150%になったが、価格では120%で下落が続いている。しかし、こうした低価格、コモディティ化というのはイコール時代のニーズに応えること。それは重要な使命で責務である。しかし、それだけでこの時代新しいものを生み出さなくていいのか? そこを、どうしてもこのCEATECの会場でこの製品1つに絞ってお伝えしたかった。コモディティだけでない高付加価値、ダウンスパイラルからアップスパイラルにという流れをこの商品によって作り上げたい」と語った。

 続けて、「価値が無いものを高く売るのは詐欺ですが、私は詐欺師ではありません。この商品は、いまのテレビのスタンダードとは違うものと感じていただけたのではないか」とCELL REGZAの魅力をアピールし、「テレビは、今の時代誰でも作れる。しかし、CELL REGZAを作れるのは東芝しかない。この機能の多くは、これがスタンダード化される時代が必ず来ると確信している」と述べ、将来的に機能の多くを普及価格帯の製品に落とし込むことを説明した。

 また、「テレビ=エンジン」というキーワードを掲げ、「東芝のテレビ事業は水平分業といわれている。確かにパネルという部分ではそうだが、今日の価値というものはパネルよりも、エンジンにあると思っている。そういった意味では、ソフトウェアと半導体技術によって、我々なりの垂直統合を実現できると思っている。それは過去のアナログ時代を継承した技術がデジタル、ソフトウェア化され、半導体に組み込まれたもの。われわれの研究所の技術、テレビの技術などが一体化した中でCELL REGZAが作り上げられた。この財産は必ず継続、蓄積されていく。それがわれわれの垂直統合、われわれのテレビのポイントだ」と訴えた。

 CELL REGZAの将来像については、「今年で終わりではない。ハイクオリティ化という点では、3Dや4Kといった差異化にCELLエンジンを使って取り組める。ハリウッドが作ったコンテンツを再生するだけではなく、2Dを3Dにソフトウェアに変換するということもやっている」と高機能化について紹介した。

 他方で、シンプル化についても、「ダウンサイジングという方向と高集積化により、コスト低減も図っていく。今日のCELL REGZAが明日の普通の商品になる日が必ず来る。そのための技術革新を怠らない。単なる東芝トップエンドではなく、東芝のTV事業の核となるように、技術革新を強化していきたい」と言及。高画質、高機能の追求とともに蓄積した技術を下のモデルに展開していくことで、テレビの製品力を強化していく姿勢を示した。

CELL REGZAの機能が徐々にスタンダードに進化の方向性

 市場の手ごたえについては、「特に流通の現場から凄い支持の意見をいただいた。コモディティだけでなく、新しい基軸の商品“違うテレビ”をプロモートしたいという意見が強かった。それがわれわれの技術、営業を刺激したこともあり、日本の市場にこれを問いたい、と思った」という。

 海外展開については、「2010年にはアメリカで発売する。環境に応じた仕様の変更は必要だろう。アメリカに続いて欧州でも発売するが、商品としては今日ここにあるものとはかなり変わったものになるだろう」とした。

 


■ CEATEC東芝ブースは「CELL REGZA一色」

CEATEC東芝ブース

 CEATEC JAPAN 2009の東芝ブースでは、CELL REGZA一色で展開。専用のシアタールームを設けて、CELL REGZAと55ZX8000との比較デモを実施している。

 さらに、オーディオの体験コーナーや、「ローミングナビ」やネットワーク機能の体験デモなども実施するなど、各機能紹介に力を入れている。


ローミングナビのデモオーディオデモYouTube機能もアップデートで対応
55X1(左)と55ZX8000(右)の比較
3D CELL REGZA

 また、将来のCELL REGZAの機能「CELL REGZA NEXT」も紹介している。3D CELL REGZAは、120Hz駆動の55型CELL REGZAを使って、左右の眼に60枚づつの映像をする「フレームシーケンシャル方式」の3D表示を行なうもの。シャッターメガネと組み合わせて、映画コンテンツなどの3D表示が体験できる。

 加えて、3D CELL REGZAの特徴は、通常の2D映像をリアルタイムで3D変換して表示できること。現時点では風景や、一定の動きのある動画ではきれいに3D化できているという。

 また、距離センサーを用いた空間モーション操作もデモを行なっている。手の動きなどで、画面表示表示された3Dの操作パネルに触れることで、番組選択や停止/再生などの操作が可能となる。この操作も3D化されているため、メガネをかけたまま操作から視聴までの一連の動作を行なえる点が特徴となる。

 4K/2K(3,840×2,160ドット)パネル搭載のCELL REGZAも展示。フルHD映像を再構成法で超解像処理して、4K/2Kパネルに表示するデモを行なっており、フルHDと超解像処理後の画質比較もできる。なお、1月のCESでは2009年度内の4K CELL REGZAの発売を予告していたが、「不況の影響で、パネルメーカーの4Kへの投資が落ち込んでいるため、コンシューマ機器で使える価格帯まで落ちてくるのに時間がかかりそう」(同社説明員)とのことで、現時点での発売予定は未定。ただし、4K対応に向けた超解像処理などの技術研究は続けているという。

4K CELL REGZA。超解像ON(左)/OFF(右)のデモも実施

 CELL REGZAのチューナユニットをDLNA/DTCP-IPサーバーとして、2系統のデジタル放送番組を同時配信するというデモも実施。55X1はDTCP-IPクライアントとしては動作するが、サーバー機能には現時点では対応していない。後日のアップデート対応できるかどうかについても、「未定」としている。

 さらに、CELL REGZAを低価格化したイメージの「オールインワンCELL REGZA」も展示。チューナとモニタを一体化したもので、将来的には“CELLが普通のテレビ”になるというイメージで製作したという。

CELL REGZAのDTCP-IPサーバーデモオールインワンCELL REGZA

(2009年 10月 5日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]