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“テレビ離れ”はウソ? ホント? レグザが実データ公開「5年前と変化なし」
2023年10月3日 07:00
TVS REGZAは2日、2023年のテレビ市場を総括したプレス向けのセミナーを開催。昨今メディアで取り上げられている“テレビ離れ”に関して、全国300万台の視聴データを引き合いに「1日の平均テレビ画面利用時間は、2022年で6.6時間。実はこの数字は5年前のデータと同じだ。視聴スタイルの変化はあるが、テレビ画面の視聴時間そのものは5年前と比べて大きな変化はない」との分析結果を示した。
大画面ユーザーが増加。大型のスタンダードは“65型”へ
セミナーには、取締役副社長の石橋泰博氏と営業本部ブランド統括マネージャーの本村裕史氏が登壇。テレビ市場における3つのトピックを紹介した。
まずは「大画面モデルの伸長」。テレビの“大画面化”はここ数年見られる傾向だが、実際に50型以上の大画面モデルを購入するユーザー数は増えており、業界全体での出荷構成比は拡大傾向にあるという。とくにレグザでは、2020年に比べ、2022年は65型サイズの出荷量が倍増。この流れは加速しており、65型以上のモデル販売はさらに増えると予測している。
本村氏は「10~13年経ってテレビを買い替えるお客様の場合、今使っているサイズは32型や37型、大きくても40型程度がほとんど。ですから、55型でも十分大画面だし『大画面テレビ買ったな』という満足感は得られますが、だいたい2週間もすると『ああ、もっと大きくてもよかったかも……』と感じる方が多いのも事実。テレビは一度買えば、10年は使うもの。ブラウン管時代は28型が大型、プラズマの50型テレビが出た時は“50型は趣味のもの。一般人は買わないし、リビングに入らない”と言われた。常識は変わるもの。行く行くは75型でさえ、普通と感じ始める時期が来るはず」と話す。
実は“テレビ離れ”してなかった。1日の視聴時間は5年前と変わらず
2つ目のトピックとして示したのが、「テレビ視聴スタイルの変化」だ。
同社は全国で稼働するレグザ300万台の視聴データを分析。すると、1日の平均テレビ画面利用時間は、最新データ(2022年)で6.6時間となり、5年前の2018年データと同じであることが分かった。
ただ、テレビの利用時間が5年前と変わらない一方、テレビで観るコンテンツには変化が見られた。それが、テレビでのネット動画視聴時間。集計を始めた'20年4月の時点では1日平均70分程度だったものが、直近('23年8月)のデータでは、1日平均98分もテレビでネット動画を観ているという。
さらに、大型テレビ(50型以上)でのネット動画視聴時間が、3年前に比べて2割も増加しているのもポイントだと分析。石橋氏は、この理由について「リビングでのネット動画視聴が定着したことに関しては様々な要因があるとは思うが、シンプルに、大画面でネット動画を楽しむことの感動に気が付いてもらえた事も一つの理由ではないか。だからこそ、ネット動画を高画質化する技術であったり、動画配信サービスを一発起動するダイレクトボタンはより重要になってくる」と話す。
また“録画離れ”についても言及。下の写真は、1日のテレビ利用時間6.6時間の中から、「録画(通常/タイムシフト)」と「ネット動画視聴」の2項目を抜き出したもの。
タイムシフトマシンのないモデルのユーザーはテレビ番組視聴が大きく減少している一方で、タイムシフトマシンのあるモデルのユーザーは、「ネット動画と同じくらい、テレビ番組を楽しんでおり、結果的にテレビの総視聴時間が伸びている」という。
本村氏は「放送をまるごと録画するタイムシフトマシンは、ネット動画を観るような感覚で、地上波が観られるような機能になっている。タイムシフトマシンのユーザーからは『一度体感すると手放せない』という意見をいただいているが、この視聴データからも、興味のある番組を“ついついたくさん観てしまう”傾向が読み取れると思う」と分析する。
“画質で選ぶなら有機EL”はもう古い? ミニLEDが好調
3つ目のトピックが、「ミニLEDテレビ」の躍進だ。
レグザは'22年6月に、同社初のミニLED搭載機「Z875L/Z870L」シリーズを投入。今年春には第2世代として「Z970M」「Z870M」シリーズを発売しているが、そのミニLEDモデルの販売構成比が急速に加速しているという。
ミニLEDテレビは、ミニLEDバックライトと量子ドットパネルを組み合わせた液晶テレビ。一般的なLED素子よりも、より小さい“ミニLED”をバックライトに緻密に配置・制御することで高い輝度と暗部を両立。さらに広色域量子ドットシートが、青色LEDの光をロスすることなく緑・赤へ効率よく波長変換。高コントラストと純度の高いRGB光によって、従来よりも液晶テレビの画質が底上げされた。
事実、これまでは“有機EL一択”と考えていた高画質重視のユーザーも、ミニLEDモデルを選ぶシーンが増えてきているのだという。
本村氏は「'21年、'22年の初め頃は『画質で選ぶなら有機ELでしょ』という声が大半だった。でも、ミニLEDの登場で液晶テレビの画質が更に進化した。映画であったり、花火や夜景といった暗めのコンテンツであれば有機ELの圧勝だと思うけれど、大半の時間視聴する標準的なコンテンツ……例えば、ドラマやニュース、スポーツ、バラエティなどを観るなら、鮮やかで明るいミニLEDが適している。高画質モデルは有機ELとミニLEDの液晶が選ばれる時代になってきた」とコメント。
さらに価格対画面サイズという点でも、ミニLEDモデルが支持される理由を説明。「一般的な相場では、55型4K有機ELテレビを購入する価格で65型の4KミニLED液晶テレビが、そして65型4K有機ELテレビを購入する価格で75型の4KミニLED液晶テレビを入手することができる。どちらの選択もアリだとは思うが、大画面ならではの感動に魅力を感じて、同じ予算でより大きな画面のミニLEDを選ばれるユーザーが増えているのも、業界全体でミニLEDモデルが伸長している事の理由だと思う」と話した。
なお、レグザは現在“衝撃”のミニLEDモデルと有機ELモデルの開発に着手しているとのことだ。
セミナーの最後に、石橋氏は「大画面の迫力というものは、我々は正義だと捉えている。やはり大画面化というのは、テレビにとっての本質ではないか。我々レグザは引き続き、『何がテレビの本質なのか?』を追い続けていく」と、レグザ事業の今後の意気込みを語った。
液晶&有機ELレグザをぶっ壊す。完全分解動画公開
新製品の情報や、テレビの使いこなしなどを紹介している公式YouTubeチャンネル「レグザチャンネル」の最新回(10月2日17時公開)では、4KミニLED液晶レグザ「Z870M」と4K有機ELレグザ「X9900M」を分解する様を撮影。
回路やスピーカー、パネルを取り外しながら構造の違いを説明。楽しくレグザの中身が学習できる内容に仕上がっている。