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本格ホームシアタールームを“借りる”新体験、「横浜アバック座」に行ってみた
2018年4月6日 08:00
家に本格的なホームシアターを用意し、好きなコンテンツをじっくり楽しみたい……。AVファンならずとも夢見る事だが、スピーカーやプロジェクタなどの機器を買ったり、専用の部屋を用意するのはかなり大変な事だ。そんな中、“シアタールームをレンタルする”というユニークなサービスがスタートしている。AV機器専門店としてお馴染み、アバックが手がける、その名も“アバック座”だ。3月23日にオープンしたばかり「横浜アバック座」に実際に行ってみた。
「アバック座」って何?
アバックと言えば、北海道から沖縄まで、全国に20店舗以上を展開するホームシアター機器販売店としてAV Watch読者にはお馴染みだろう。アバックは機器の販売だけでなく、ホームシアターの設計施工も行なっている。そんなアバックが手がけた、本格的な映像観賞用のレンタルシアタールームが「アバック座」だ。
1店舗目として、昨年大阪の梅田に「梅田アバック座」がオープン。2店舗目として「横浜アバック座」が2018年3月23日に、「博多アバック座」が3月31日にそれぞれオープンした。
いずれの店舗も「映画館を貸し切る」をコンセプトに設計されており、部屋によってサイズは異なるが80~130型の大型スクリーンと、最新の4Kプロジェクタを配置。映画館と同様の音響透過型スクリーンや、最大15本のスピーカーで形成される立体的なサラウンド環境も用意されている。
再生したいコンテンツはユーザーが持参、プライベートな環境で、高音質・高画質で好きな映像が楽しめるシアタールームというわけだ。
横浜アバック座は、JR根岸線の関内駅から徒歩6分ほどの場所にある。横浜市営地下鉄ブルーラインの伊勢佐木長者町駅からも近く徒歩3分、京急本線・日ノ出町駅からも徒歩8分程度だ。住所は神奈川県横浜市中区長者町3-8-13 TK関内プラザの地下1階。ちなみに1階には、アバックの横浜関内店がある。お店の地下が横浜アバック座というわけだ。
実際に行ってみた
地下に降りると、ゴージャスな雰囲気の扉が。くぐると大きく「AVAC座」のロゴと受付がある。なお、利用の際は事前の予約が必要。部屋の空き状況チェックと予約はWebから可能だ。
利用規約に署名をすると、部屋の中でAV機器のリモコンとして使えるタブレットを渡される。これがかなりのスグレモノ。大きな「スクリーンシアター ON」アイコンをタップするだけで、プロジェクタ、AVアンプ、Ultra HD Blu-rayプレーヤーの電源が全てONになり、さらにUHDプレーヤーのトレーが出てくる。
ボリュームの増減、部屋の照明の操作まで、このタブレット画面で操作できる。AV機器に慣れていない人は、「シアタールームを借りても操作が難しそう」と心配になるかもしれないが、これならば迷わず操作できるだろう。実際に、AV機器に詳しくないという女性が来店した際も、すんなり使えていたそうだ。
このシステムは、複数のAV機器のリモコンを学習し、それをアプリから一括操作できる機器で実現している。AV機器に詳しい人でも、アプリで一括操作環境を構築していない人は多いので、その“便利さ”を体験できる施設としても面白い。なお、各機器の純正リモコンも用意されているので、その方が使いやすいという人にも対応できる。
部屋に入る前に、受付にはお菓子やジュースが販売されているので、コンテンツを見ながら食べたい時は購入するといいだろう。“映画と言えばポップコーン”という人にも対応している。利用者による持ち込みは不可だ。
通してもらったのは一番広い、120インチスクリーンの「シアタールーム3」。取材時の機材は、プロジェクタがJVCの4K「DLA-X590R」、スクリーンはサウンドスクリーンのEASTONE×KIKUCHI「E8K-KP120HD/PB」。AVアンプはIntegra「DRX-R1」、UHDプレーヤーはOPPOの「UDP-203」だ。なお、iPadなどのスマホ/タブレットを接続するためのケーブルも用意されている。
フロントとセンタースピーカーは、アバックが扱っているUnisonicの「AHT-650SQIW」。サラウンド、サラウンドバック、トップフロント、トップリアはいずれもUnisonicの「AHT-40R」。サブウーファも同ブランドのAHT-80Sを2台使っている。スピーカーは合計15本。Dolby Atmos、DTS:Xに対応するほか、3D再生にも対応。3Dメガネも用意されている。
気兼ねなく、ごろ寝で高画質&高音質を堪能
では映像を楽しもう……と、ペアのシートに座ると、座り心地の良さに驚く。幅広のリクライニングシートで、サイドテーブルも完備。最近では映画館のシートもゴージャスになっているが、アバック座の場合は120インチスクリーンの広い部屋に、2席のリクライニングシートのみなので、スペース的な余裕はこちらの方が桁違いに広い。
フットレスト、背もたれ、ヘッドレストも電動で可動。ほぼフラットにする事もできるので、まるで“自分の家で寝っ転がりながらスクリーンを見る”感覚が楽しめる。個室で他人の目も無いので、思いっきりくつろいだ格好で鑑賞できるのも、レンタルシアタールームならではの利点と言えるだろう。もちろん再生中の一時停止や早送りも自由にできる。
なお、横浜アバック座がオープンする前、ここはバンド練習などに利用できる施設だったそうで、アバック座を作る際には元々完全防音だった部屋を活用。気兼ねなく大音量が出せるのも魅力だ。ただ、防音部屋の室内音響はデッド過ぎたため、アバックのカスタムインストールスタッフがルームアコースティックを調整。シアタールームとして最適な環境を構築したという。
実際にAtmosのコンテンツを鑑賞してみると、各スピーカーの音の繋がりが良く、広い音場が展開。戦闘機の音や虫の羽音など、小さな音像が周囲をグルグルと回るような作品でも、移動感がスムーズに描写されて自然だ。トップスピーカーが完備されているので、空から雨が降り注ぐDolby Atmos作品でも、音場に上から横から、まるごと包込まれる感覚が味わえる。サブウーファ×2基による重低音も、ズシンとお腹に響く深さと量感を兼ね備えており迫力満点だ。
使われているUnisonicのスピーカーは、「AHT-650SQIW」が1台44,800円(税込)、「AHT-40R」がペアで14,800円(税込)と、比較的リーズナブルな製品だ。だが、AVアンプの「DRX-R1」(45万円)でしっかりドライブすると、見事な音が出る。アンプやスピーカーは小音量では持ち味を十分に発揮できない事があるが、ある程度の音量を出せる環境を用意する事が、機器のポテンシャルを引き出すには重要だと改めて感じる。あまりに高額なスピーカーだと、初めてホームシアターを体験した人が「自分の家にも導入したい」と考えた際、価格に驚いてしまうかもしれないが、“導入しやすい価格の製品でも十分に楽しめる事”が実感できるのも嬉しいポイントだ。
また、音が透過するサウンドスクリーンが使われているので、フロント/センタースピーカーがスクリーン裏に隠れ、映像と音の一体感が楽しめるのも特徴だ。照明を落とせば映像以外は目に入らなくなるので、没入感も高くなる。
90インチスクリーンの「シアタールーム1」もチェック。部屋のサイズやスピーカーの数は異なるが、使用機材やリクライニングシートは「ルーム3」と同じで、7.2.4ch対応の環境となっている。
利用料金
横浜アバック座は3部屋構成で、利用料金は部屋のサイズによって異なる。一番小さい部屋はスクリーンが90インチで、料金は1幕2時間30分で平日3,000円、土日は5,000円。100インチの部屋は3,500円/5,500円、120インチの一番大きな部屋は4,000円/6,000円と、500円ずつ違う設定。定員はいずれの部屋も2人(小さな子供は膝の上であれば2人以上も可能)だ。
つまり、平日に90インチスクリーンの部屋を2人で利用した場合は、1人あたり1,500円となる。ただ、博多アバック座のオープン記念キャンペーンとして5月31日までは各部屋が1,000円引きだ。
さらに、5月31日までは横浜アバック座オープン記念として、1幕(2時間30分)の利用でもらえるポイントスタンプが、通常の1個から2個へ倍増。3個貯まると1,000円引き、6個貯めるとVIPカードがもらえ、VIPカードを提示するとキャンペーン後も常時1,000円引きで利用できる。
映画館とホームシアターの“いいとこどり”
アバック座をスタートした狙いについて、アバックの営業企画部 取締役部長の関桂良氏は、「これまでも、ホームシアター用機器のポテンシャルの高さを店舗でお客様に伝えてきましたが、やはり一店舗で発信できる情報は限られています。例えば住宅展示場でホームシアターを紹介するなどの取り組みも行なってきましたが、それらは製品の販売という我々の本筋の流れの中の取り組みでした。より多く、一般層の皆様にも、ホームシアターの魅力を伝えたい。しかし、実際は製品を購入しようというお客様以外は、なかなか専門店には来ていただけない。そこでホームシアターの“部屋貸し”をするプランを考えました」と説明する。
「映画館を貸し切る」をコンセプトとして掲げるアバック座。製品に触れるだけであれば、量販店でも可能だが、その性能をフルに引き出せる環境で体験するのは難しい。「そこで完全に作り込んだホームシアター、コンシューマ機器の性能を引き出せる環境を、手頃な価格で体験できる事を重視しました。(コンシューマ機器でも)“映画館に迫れる”という事を知っていただきたいのです」。
こうした想いで大阪からスタートしたアバック座。開始からしばらくはアバックを知っているAVファンが、“有料の試聴室”のような気分で使うケースが多いのではと予想していたが、実際は、「AV機器に詳しくない、ホームシアターをやっていない、けれど映画やライブが好きというお客様に多く来ていただき、驚きました」と関氏。
アバックの店舗に来るのは男性が中心だが、アバック座には女性客が目立ち、ファンの友達と一緒に、アイドルのコンサート映像を楽しむといった使い方も多いと言う。「iPadなども繋げられますので、そうした端末内の映像を楽しむ方もいらっしゃいます。中にはカップルで来られて、プロポーズのために作ったムービーを再生したお客様もいらっしゃいました」と、まさに使い方はアイデア次第だ。
利用者の反応も上々、「サウンドスクリーンが実際にどのように見えるのかをチェックしに来たというような、AVファンの方もいらっしゃいますが、ほとんどの方はAV機器の知識を持たずにいらっしゃいます。そしてコンシューマ機器でも、こんなクオリティで楽しめるのかと、皆さん驚いて帰られます。我々が今までリーチできなかったお客様にも、ホームシアターの魅力を伝えたいというアバック座の想いと、合致してきたという手応えを感じているところです」(関氏)。
“ミニミニ映画館”を目指し、機材や設備にもこだわりがある。スピーカーをスクリーンの後ろに隠せるサウンドスクリーンを導入し、映像と音声を完全にシンクロさせた。内装にもこだわり、照明を落とすとスクリーンだけが目に入り、それ以外は真っ暗になるよう遮光も徹底。いずれも、主役である作品への没入感を最大限に高めるための工夫だ。「アバックのスタッフも、ワクワクするような設備にしたかった」と関氏は語る。
映画館を超える設備と言える部分もある。例えば、広々と使える電動リクライニングチェア。「エアボリュームでは映画館にかないませんが、ニアリスニング環境ですので、“映画館よりも細かな音が聴こえた”という声もいただいています。あとは、作品に感動して泣いたり、声を出しても大丈夫です(笑)。一時停止も早送りも自由にしていただける。こうしたプライベート感は、映画館にはない魅力です。そうした意味で、映画館とホームシアターの“いいとこどり”を目指しました。我々が今まで培ったホームシアターのノウハウで作った環境ですので、もちろん“同じような環境を自宅に作りたい”といったニーズにもお応えできます」(関氏)。
現在は梅田アバック座、横浜アバック座、博多アバック座の3つが存在するが、各地のアバック店舗に近い場所に、今後もアバック座を展開していく構想があるという。今年の予定としては、5月に新潟、6月上旬に東京・新宿、6月下旬に大阪・心斎橋が計画されている。