じゃがめブログ

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M-1グランプリ2010 決勝大会 感想


M-1グランプリ、2010年大会をもって無事に10年間の歴史に幕をおろしました。
「結成10年以内のコンビのみ参加可能」という制約上、どうしてもヒーローとなるコンビが枯渇していくことになります。ここ数年で大会の魅力が薄れていきつつあったのも事実。終了するという判断は残念ですが、やむないのかも知れません。

そんなM-1グランプリですが、最後の大会でこれほど見せてくれるか、と大盛り上がり。大きくスベったユニットもなく、またヒーローも生まれ、結果、大団円。最後にふさわしい大会だったと思います。

それでは、各コンビとネタについて、Twitterに呟いたことを振り返りつつ残していきたいと思います。

1組目 : カナリア (よしもとクリエイティブ・エージェンシー 東京)

ドレミの歌ネタ
元々キャラクターで押し切るタイプのコンビだということもあって、対比されづらい初弾というのはちょっと難しいかも、という印象でしたが、そこそこ笑いを産んでいたようです。しっかりとスリムクラブまでの基準w となっていた様子。既に定番ですが、今のタイミングで髪型が水嶋ヒロに似てるのはちょっとズッコイな、と思いました。ネタには使わなかったですけれどね。
ここでドレミの歌ネタってのが解った瞬間、銀シャリにとって旗色が悪いんじゃないかという印象でした。銀シャリ、ABCの歌のネタで来る確率が高いから、マルッ被りするぞ、と。その懸念はマルッと当たってしまうのですがw

2組目 : ジャルジャル (よしもとクリエイティブ・エージェンシー 大阪)

メタ漫才+音ネタ
ジャルジャルが選びうる中で、一番選ぶ可能性が高くてかつ一番スベるであろうメタ漫才。これは見た瞬間、アチャーとなりましたね。音ネタはコントでもよくやっているネタの一つでもあるので、自信があるのでしょう。実際、ジャルジャルらしさ全開で良かった。
ただ、メタ漫才をやるにはジャルジャルは若すぎる&順番が悪かった。正統派漫才コンビ(ナイツ・銀シャリ)の後でやったら、もうちょっとウケたかも。
ジャルジャルらしさがしっかりと出て、その上で漫才でも通じる地力を見せたのは良かったと思います。今後調子に乗らずにw ネタを高めて欲しいものです。

敗者復活決定

ここで敗者復活コンビの発表。私的にはウーマンラッシュアワーに来て欲しかったのだけど、可能性としてはパンクブーブーだろうな、と。そして当たって欲しくない方の予想が当たってしまうw
パンクブーブーの事は嫌いではないのですが、あまりに演出過多っぽくなってしまうのがちょっとつらかったですね。

3組目 : スリムクラブ (よしもとクリエイティブ・エージェンシー 東京)

どこかで逢ったことありますよねネタ
今回のダークホース。スリムクラブについては実力があることは解ってましたし、結構期待していたところもありました、が、その遥か上に行ってくれました。ヤラれた。M-1と言う大舞台で個性を消さずにやり切ったところは素晴らしい。っていうかやり過ぎてその後の銀シャリがおかしくなっとるがなww

正統派漫才でボケをなるべく多く放り込む方が有利、というM-1の風潮を完全に無視して空気を作った辺りは流石。どうしてもそのネタの運び故にPOISON GIRL BANDと比較されるかも知れませんが、間の作り方などはまったく異質。この辺りが、今回のM-1でスリムクラブを「見つけた」人にどう伝わるか、が一つ気になるところです。

敗者復活の報を受けて、全体的にふわっとした雰囲気になるかと思いきや。その空気ではスリムクラブはやりづらいだろうし、最終決戦進出は難しいかな、と予想していたのですが、大きく覆されてしまいました。ほんと、やってくれたなw

4組目 : 銀シャリ (よしもとクリエイティブ・エージェンシー 大阪)

ABCの歌ネタ
最終決戦進出候補筆頭、銀シャリ。という予想が大きく覆ることに……っていうか事故に遭ったとしか思えないww
やはりというべきか、用意していたネタはABCネタ。カナリアが『ドレミの歌ネタ』を出した時点でちょっと嫌な予感はしていたのですが、見事に的中。更に、スリムクラブでおかしな空気になる、と銀シャリにとって逆風中の逆風w 勝負はナマモノなのでこう言ったこともあるのでしょう。ネタ自体は良かったです。いつものネタですが、いつものネタを安定したクオリティで出せる辺りが、銀シャリの良いところ。
以前からその実力はメキメキ出てきてますし、もしM-1が続いていたら近年中に優勝した可能性が高いコンビでもあります。これからに期待です。今回の結果を受けてタクシー運転手にならないでね!

5組目 : ナイツ (マセキ芸能社)

時事ネタ+自己カブセ
こことハライチは新しい要素を入れてこないと最終決戦まで残るのは難しいかな、と考えていました。結果だけ見るとその通りで最終決戦まで残らなかったのですが、新しい要素はありました。
ネタを半分に分けて、前半のネタを振りにして後半を被せるというスタイル。M-1では初参戦時の麒麟がやりましたね。お笑い全体では割とポピュラーな手法で、底抜けAIR-LINE・古坂大魔王の当て振りなどもそうです。この手法は寄席向けではないと思います。老人にとって、ネタの半分を覚えていてそれとの対比で笑う、というのはちょっと難しいでしょう。こう言った手法を取り入れてきた辺り、M-1にしっかり照準を合わせてきた感と自分たちの長所を活かしつつ捻ってきた感で、好印象でした。
時事ネタが多いとどうしても笑いが陳腐化する、という残念な現象もあり、敗退。だけど面白かったです。Wコロンに負けないでw

6組目 : 笑い飯 (よしもとクリエイティブ・エージェンシー 大阪)

サンタウロスネタ
やってくれたw
前回の「鳥人」の爆発力を受けてのことか、同テイストのネタ。しっかりと前回の「繋ぎ目の部分」を活かすなどというテクニックも見せつつ、笑い飯らしいクリエイティブな笑いでした。
笑い飯の二人は大喜利が得意なタイプ。面白いフォーマットさえあれば、それを捏ねくり回して幾らでも面白いネタを作ることができる。前回のM-1は、笑い飯が鳥人という一つのフォーマットを手に入れた場でしたが、今回はそのフォーマットを活かす能力があることを魅せつけた大会でもありました。
どうしても鳥人の印象が強いために、劣ってしまったと感じる人もいるかも知れませんね。そこは、このフォーマットで今後新しい笑いを生み出すことでグゥの音も出ないように魅せつけて欲しいと思います。

7組目 : ハライチ (ワタナベエンターテインメント)

刑事ネタからの言葉いじり+天丼
最初の方が前回と少し異なる流れだったことと、天丼を取り入れたこと以外に大きな変化はなかったように思います。ナイツとハライチについては大幅な変化が欲しかったところですが、ちょっと惜しかったかな、と。
前回同様、澤部くんのボケかたの安定感は見ていて安心なのですが、そのボケてる間の岩井くんが惜しい。もうちょっとやれることがあったんじゃないか、というのと、そこがハライチの味なのかも、というところで揺れます。また最初のフリの戦場のカメラマンが有効に活かせてたら、もうちょっと行けたんじゃないか、という所です。ネタ自体は面白かったですし、ハライチらしさも出てて良かったですけどね。M-1という場では難しかった。
今後、徐々にでも力を付けて出てきて欲しいです。澤部くんのボケ、結構好きなんですよ。

8組目 : ピース (よしもとクリエイティブ・エージェンシー 東京)

吸うネタ
ピースの持ってる漫才ネタの中で、一番良いネタだと思われます。
「たましいぃー!」「ジジィとババァのたましいぃー!」などの又吉らしい言葉選びもさることながら、吸う・舐めるといったアクションを交えることで言葉数以上にボケを詰め込んだ良いネタ。ただ惜しくも決勝には届きませんでした。
見る限りではミスも無かったし、ピースらしさも出ていたので、かなり良かったと思います。声を出して笑いました。恐らく、あのネタがピースの持ってる漫才ネタの中で一番面白いのでしょう。良いものを見せてもらいました。
センスは魅せつけてくれました。今後に、更に期待が持てます。楽しみです。

敗者復活 : パンクブーブー(よしもとクリエイティブ・エージェンシー 東京)

見せ掛けるネタ
ややメタ漫才っぽい方向。よくも悪くもM-1っぽいな、という印象。このネタなら最終決戦まで残れる可能性は高いな、と冷静にネタを見てしまいました。笑うというよりも、感心する、という。ネタはうまい、ボケをたくさん放り込んでくる、ツッコミが丁寧、と申し分ないですし、M-1という舞台で最も求められているパターン。が、それ故に冷静に観てしまいました。
予想通り審査員ウケは抜群で、そのまま最終決戦へ。
パンクブーブーはちょっと今後危ういかもですね。ノンスタイルと同じく、トークで持って行けるだけの実力はまだ無い。かと言って東京だからネタ番組も関西に比べて少ない。そこら辺が閉塞する可能性に繋がってます。どうなるんでしょう。
恐らく、本人たちもそれを理解しての再出場だとは思いますけれども。

最終決戦1組目 : スリムクラブ

葬式ネタ
これでも言葉選びと間が光ってました。ドッカンドッカンといった爆笑ではありませんでしたが、確実に笑いは積み上げていましたね。優勝する可能性は結構あるなあと思いつつ、優勝しなくてもいいなあ、とも思ってました。2年前、準優勝だったオードリーが優勝したノンスタイルよりも売れたことがちょっとよぎったんです。スリムクラブは優勝しなくても、しっかりと印象を視聴者に残しました。他のコンビがM-1スタイルで勝ち抜く中、己等のスタイルであそこまでやり切ってくれたのは良かった。
「高い教育」「土」のくだりは彼らの定番でしょうか。違うパターンのボケで来られたら大爆笑してたかも知れません。

なんにせよ、相当笑わせてもらいました。ほんと、良かったです。

ネタの途中で民主党のくだりがありましたが、できれば「沖縄出身者が民主党ネタ」っていうイジリ方だけはしないで欲しいです。今回優勝しなかったことなども含めて、どうしても政治に絡めた話題にしたがる人は居ると思います。それもお笑いの楽しみ方ではありますし、否定するつもりはありません。が、スリムクラブの良さはそこではないでしょう。スリムクラブのネタが面白い、と思ったかたは、願わくば政治批判につなげるのはやめていただきたいと思います。

最終決戦2組目 : 笑い飯

小銭の神様ネタ
上半身がえべっさんで、下半身が、えべっさんwww
前回の鳥人で新しい強力なフォーマットを手に入れて、決勝でも同じことをやっちゃうのか……と見せかけるw 笑い飯は自分たちのそれまでのネタ運びをしっかりネタに織り込んでくれる。細かいところですが、嬉しいです。
ネタは小銭の神様から大阪人に移動したり、小銭の神様にバリエーションを持たせるなど。笑い飯らしさが出ていました。バランスも良かった。
スリムクラブと比較してどちらがいいか、となるとこれはとても難しいですね。どちらも面白かった。ただ、完成度という点で、私は笑い飯を推しました。
スリムクラブの方が、普通に観てる分にはウケたと思います。笑い飯のネタは、彼らのネタ運びが好きな人にはウケると思うんですけどね。なので、この時点でどっちが優勝してもおかしくないな、と思ってました。ゴメン、パンクブーブーw

最終決戦3組目 : パンクブーブー

見せ掛けるネタ
1本目と同じと見せかけて違うネタ、というのはこれまでもフットボールアワーが掴みに使った(カメラのネタをのんちゃんが振る、など)ことがありますが、それの真反対です。これはちょっと驚いた。一本目と同じと見せかけて違うネタと見せかけて同じネタww 完全に裏を突かれました。が、そこまでだった印象。
ネタの完成度は高い。練習量も、もしかしたら全コンビの中でも最も多いのかも知れない。1本目では日常ありそうなキャラクター設定だったものを、「馬に乗ったモヒカンババア」と色も変えてきた。実は称賛すべき点はたくさんあったはずです。ただ、どうしても、残り2組が異色だったことや、皮肉なことに上手すぎることによって「地味」になってしまってたように思います。

残念ながら評価はされませんでしたが、良いネタだったのは事実。1本目と同じネタを被せたことを批判する人も居るかも知れませんが、私は良かったと思います。

結果発表

正直、誰が優勝しても納得できるな、と思っていました。スリムクラブは確実に爪痕を残しましたし、笑い飯は完全に貫禄を魅せつけた。パンクブーブーはM-1のネタとしては最もうってつけだった。納得できる、というより納得するしかないな、という。

で、結果。

笑い飯:松本・南原・大竹・渡辺
スリムクラブ:紳助・宮迫・中田

松本は最後までどちらを選ぶか悩んだ模様。M-1のこれまでの経緯を松本が鑑みたために出た結果とも言えます。ただ、そこをもって「M-1とはその場で一番面白い人を選ぶのではなかったのか」というのはナンセンスだと思うのです。
今回の結果は、ネットの上で真上に弾き上がったテニスボールのように、どちらに落ちてもおかしくはなかった*1。松本をして、笑いの量は同じと言うほどであるから。いわば運命の神の手が働いたわけです。その運命の神の手が笑い飯を選んだ。それで良いじゃないですか。どっちも、その場で一番面白かったのですから。

総括

色々物議を醸しそうな終わり方だったけど、私的に大満足でした。各芸人の良いところが出てたし、ドンスベりしたコンビもなかった。唯一無名だったスリムクラブはヒーローへの足がかりを掴みました。スリムクラブは、前述のとおり、まったく優勝する必要がなかったですしね。これ以上無く大団円だし、かつてなく楽しめたM-1でした。願わくば、スリムクラブが優勝しなかったことと政治を結びつけるような論調が出ないことと、スリムクラブと比較して笑い飯を貶めるような論調が生まれないこと。それだけを願います。お笑いでそんなことが有って欲しくない、と思うのです。

決勝に残った9組へ。ありがとう! 年に一度の大会、本当におもしろかった!
これまでの10回大会で決勝まで残った全漫才師のみなさん、ありがとう! みなさんのおかげで東京での年末のお笑いライフが物凄く満ちたものになっていました。

なんだかんだで中弛みしていたM-1グランプリでしたが、思い返してみればやっぱり楽しかった。
今後、いつになるか解りませんが、再開を期待しつつ、こっそり待ちたいと思います。

アデュー。

*1:解んない人はスティール・ボール・ランを10回読むこと。