全社員の“eco ideas”
パナソニックの従業員は、胸に「Panasonic」のロゴをあしらった社章とともに、緑色の「eco ideas」の社章を付けている。
従業員がこのバッチを付けはじめたのは、中村邦夫会長の号令によるものだった。
当初、環境本部では数100個のバッチを製作したが、中村会長の狙いは、全従業員が、このバッチをつけることにあった。
すぐさま、幹部向けに数1000個のバッチを追加製作。2007年10月5日の環境経営戦略の発表時には、国内のグループ全従業員がバッチを身につけることができた。発表のわずか2日前のことだ。
さらに、2007年度中には、全世界のグループ従業員30万人が、eco ideasのバッチをつけることになった。
2008年10月1日の社名変更にあわせて、三松葉の社章から、Panasonicの社章に変更しても、eco ideasのバッチは、そのまま継続的に採用されている。
グループ全従業員が、常に環境を意識して事業活動を推進することを肝に銘じるためだ。
「環境負荷の小さい商品の開発は当然の取り組みであり、それ以上に、商品企画から設計、調達、製造、物流、販売、サービス、リサイクルに至るまでのモノづくりのすべてのプロセス、あるいは従業員個人のすべての活動において、環境への配慮を忘れてはならない」と、大坪社長は呼びかける。
環境意識が、パナソニックの経営活動の根幹にあること、そして、生活までを含めた従業員個人のすべて活動においても、環境を意識することを徹底しているのだ。
eco ideasが打ち出された当初は、訴求目的が第一義にあったことは否めない。だが、それは、瞬く間に、PDCAサイクルに落としこまれ、実行力、効力といった点に知恵が集まり始めた。
これだけ全従業員が、同じ方向に一気にベクトルを集約することができるのは、パナソニックならではのものだといえよう。
3年間で総量で30万トンのCO2削減は、従業員のベクトルが一致するからこそ実現できるものといえる。
今後の課題は、これを外に対して、いかに訴求していくかだろう。そして、外に向けた継続的な活動も求められる。
eco ideasに対する認知は高まっているが、これがパナソニックと結びついていないとの指摘もある。競合他社のメッセージとの明確な違いとして認識されるところには至っていないのだ。
テレビCMや販促物による訴求だけでなく、一部商品では、eco ideasのロゴを貼付するという例も出ているが、さらに、こうした動きも加速していく必要があるだろう。
社名変更後のパナソニックは、これまで以上に環境に配慮したメーカーであるという認識を定着させることが、パナソニックの環境戦略にとって、ひとつのゴールになるといえよう。

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