地方の病院に務めるアイドルオタな産婦人科医師・ゴローのもとに双子を妊娠したお腹を抱えて訪れた少女は、彼が熱狂するアイドル・アイ(16)だった。驚きショックを受けたゴローだったが、身近に接するアイの人柄に魅了され、彼女の出産を全力でサポートしようと決意する。
だが出産予定日の当日、ゴローはアイのストーカーに殺害される。驚くべきことに、ゴローはアイが出産した男女の双子のうち一人として転生する…
「かぐや様」の赤坂アカの作話を「クズの本懐」等の横槍メンゴが作画、という期待作。
要約すると二周目人生は伝説のアイドルの双子の子どもだった転生チートな芸能界サクセスストーリー、ミステリー付き。
双子のアクア(元医師・♂)とルビー(♀)も高校受験する年齢に。ルビーはアイドル志望でオーディションに応募し続け、アクアは自分たちの父親を突き止める目的のために芸能界デビュー。
ちょっと内容に触れにくいエピソードなんで、自分が思ったことを中心に書きます。
一昨年にこのエピソードを読んでいたら自分はたぶん絶賛しただろうなと思います。でも残念ながら自分は2021年にこのエピソードを読んでいて、ちょっと虚心に娯楽を楽しもうという気にはなれません。
自分は社会派の漫画も結構好きですが、漫画が必ずしも社会派である必要はないと思っています。自分にとって漫画の第一義は教科書的な正しさでも政党のマニフェスト的な課題意識でもなく、娯楽だからです。
でも、社会派のテーマに取り組むのであれば、問題に対して真摯で誠実であって欲しいなとも思います。
そういう意味でこのエピソードは社会派のテーマなんですけど、娯楽としての漫画としては十分面白いんですけど、テーマに対する取り組む姿勢がなんとも中途半端で、「それでいいんでしたっけ?」という気持ちになります。
作中で勃発した事件に対して、主人公が「なろう小説」のような鮮やかな手腕でこれを鎮静化させ、ある意味ご都合主義で解決して一件落着のハッピーエンドです。ひどい目に遭ったヒロインが救われてよかったです。スカッとしました。
でもそうはならなかった。ならなかったんだよ、ロック。
意義としては
①ニュースに触れない層に現代社会の問題の存在を届けた
②風化するニュースと違い歴史に遺っていく作品でこの問題を切り取って遺した
③原作者が別作でも度々描いてきたように「困った時は1人で抱え込まずに誰かに頼る」を再び描いてみせた
④暗い話題が多い中、漫画本来の意義として、妄想のifであっても「こうあって欲しかった別の結末」をフィクションで描いてみせた
と、描かれた意義は十分あったと思います。
でもなんか、すっきりハッピーエンドに逆に自分はモヤモヤしてしまいました。あの問題はスッキリしてしまってはダメで、かと言って「だからこの話はここでお終い」にしてしまってもダメで、関係者も関係ない人も、この先ずっとモヤモヤし続けること自体が大事なんじゃないかな、と思ってしまうんですよね。
バカコメや全然関係ないテーマの漫画ならこんなこと思わないですけど、今回のテーマは途中まであまりに現実の事件に対して生々しすぎて、ついそう思ってしまいます。
受け手としての自分の問題なんですけど、内容は面白かったのに「面白い」と思ったことに後ろめたさを感じてしまって、次巻以降は娯楽に走るなら純粋にエンターテインメントとして作品の内容に集中して一喜一憂できると良いな、と思います。
もしくは社会派のテーマを描くのであれば、もっとじっくり掘り下げて、我々が知るべき問題や切り口を白日の元に曝け出すような描かれ方をされると良いなと思います。
いや、漫画としてとても面白かったのよ。本来、漫画に教条的なテーマを強要するのは自分も嫌いなはずなんですけど。なんかこう「やるならガッツリやれよ」的な…作者の優しさな気もするし、俺の雑念が多すぎるのかね…結果的にモヤモヤしてんならそれでいんじゃねえかという気も…
aqm.hatenablog.jp
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