超能力一家の長男・春日恭介は、双子の妹たちの超能力バレの影響による7度目の引越しで高陵学園中等部に転校。転校初日、不良っぽい少女2人がタバコを吸うのを見とがめた恭介は、余計な説教をしてビンタを食らう。ビンタしたのは恭介のクラスメイトで、前日に公園の「99.5段」の階段で言葉を交わした少女、鮎川まどかだった。
で始まる、80年代の週刊少年ジャンプの三角関係ラブコメ。
気が狂ったように長い記事なのでヒマな時に読んでください。1万字ぐらいあります。
「きまぐれオレンジ★ロード」なのか「きまぐれオレンジ☆ロード」なのか、★と☆はどっちが正しいんだろうか。Wikipediaをはじめネットの大半の記事は☆なんですけど、Amazonは★なんですよね。単行本の表紙のロゴを見る限り文字と同色の塗りつぶしなので、★が正しそうに見えるけど。
「はっちゃけあやよさん」並に語呂・語感が良いというか印象的なタイトルで、TVアニメ版の主題歌の歌詞にもフレーズが引用されてイメージが補強されてますけど、「きまぐれ」「オレンジ」「ロード」のいずれも作中にほとんど登場しなくて、井上陽水の歌詞みたいに意味不明なんですよね。
通読して数えたんですけど、MOBのセリフで「オレンジ」が1回出てきただけでした。
意味がわかりません。
作者が生きてる間に「★?☆?」「なにが『きまぐれ』で『オレンジ』で『ロード』なの?」と訊いてみたかった。わけのわからない良いタイトルだ。
今だったら「超能力者の俺が元ヤン美少女2人と三角関係な件」とかでしょうか。だっせえなwww
訃報
「きまぐれオレンジ★ロード」の作者のまつもと泉先生が、この10月6日に永眠されたとのことです。
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漫画家が亡くなった直後に追悼記事を書く、というのはいかにも便乗な感じで嫌悪される向きもあろうかと思いますが、訃報をきっかけにいろんな記事に触れると、思春期に心の深いところに刺さった作品の作者であるだけに、いろいろ書きたいことが溢れてしまってこう、アレなんですよね。自分の気持ちも供養してやりたいというか。
80年代当時にクラスで好きだった女の子の顔なんてもうとっくに忘れてしまいましたけど、漫画のヒロインに対する気持ちの記憶は、再読できてしまうことで再現どころか強化されてしまって、困ったものです。
好きだった子の訃報に触れるような気持ちを、鶴ひろみの訃報で味わい、今またまつもと泉の訃報で味わってしまうのも、困ったものです。
ご多分に漏れず、自分も鮎川まどかが好きでした。
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漫画家 まつもと泉について
まつもと泉は富山県高岡市の出身で、高校卒業後、ロックミュージシャンを夢見て上京するも、楽譜が読めないので断念しデザイン専門学校に入学、当初は友人と二人組で漫画を描き始めたとのことです。
割りと野放図ですね。サザンオールスターズの桑田佳祐も譜面が読めず・書けずでハミングかなんかを原由子が代筆したと聞きますので、そういうもんなのか。
ちなみに「オレンジロード」の舞台は作中明確に語られていませんが、作者の出身地の富山県高岡市がモデルになってるっぽいらしいです。作中の中高一貫校の「(たぶん私立)高陵学園」に対しては「市立高陵中」などが存在し、また「99.5段の階段」のモデルになった公園や「アバカブ」のモデルになった喫茶店も実在するんだそうです。
ペンネームはその友人と考えたものだそうで、本名と全然関係ありません。
各社編集部に持ち込みの末、週刊少年ジャンプの編集者の目に留まり、2年間程度の下積みを経て1984年に「きまぐれオレンジ★ロード」でジャンプ本誌で連載デビュー。
二人組の相方は下積み期間中に低収入に耐えきれずリタイヤし、連載開始時にはソロになっていました。
担当した編集者・高橋俊昌はその後も萩原一至(「BASTARD!!」)、冨樫義博(「てんで性悪キューピッド」)など、なんだかその後休載が多いような気がする大ヒット作家の面々を「発掘」・担当した後、2001年に週刊少年ジャンプの7代目の編集長に就任し、
2003年、「ワンピース」劇場版の製作発表会見の席上、くも膜下出血で倒れ44歳で亡くなりました。「ジャンプの現役編集長の急死」としてニュースになったのでご記憶の方も多いかもしれません。
まつもとは1984年〜1987年にかけて週刊少年ジャンプで「きまぐれオレンジ★ロード」を連載、TVアニメ化・劇場アニメ化されるなど、大ヒット作になります。この連載期間後半に原因不明の体調不良で半年間休載。
本作終了後は、1988年〜1992年、スーパージャンプで「せさみ★すとりーと」を連載。タイトルに★入れるの好きやな自分。つのだ☆ひろか。この作品は電子書籍化されていますが、版元が集英社から「WAVE STUDIO」(まつもとの個人会社?)に変わっており、またAmazonの商品登録名がローマ字に変わっていて「せさみ★すとりーと」で検索しても出てきません。電子版で全4巻。
「オレンジロード」と「めぞん一刻」と「冬物語」を混ぜて打ち切りにしたような漫画で、正直割りとグダグダです。
1999年、新連載企画が原因不明の体調不良で頓挫。
2004年、4歳の頃の事故が原因の脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)であることが判明。以降、まつもとの後半生は病気との闘いになります。原因から考えると、「オレンジロード」連載中の長期休載もこれが原因だったであろうと考えられ、また心臓にも持病があったとされます。
代表作「きまぐれオレンジ★ロード」の他には「せさみ★すとりーと」とわずかな短編集を残すのみの、作家生活のほぼすべてを病に蝕まれながらの、才能に対してあまりにも寡作な作家に、結果的になってしまいました。
時代背景
「きまぐれオレンジ★ロード」は極めて時代性の強い漫画だと思うんですが、この「時代性」というのがやっかいで、割りとその人の当時の年齢や居住地、立ち位置によって同じ時代でも見え方が違ったりします。「バブルがいつ終わったか」議論とかね。時代性って結構書く人の匙加減でどうにでもこじつけられるので。
「きまぐれオレンジ★ロード」連載開始の1984年で見ると、内閣総理大臣は中曽根康弘(自由民主党)、「コアラブーム」、「禁煙パイポ」発売、「エリマキトカゲ」流行、「新語・流行語大賞」開始、「グリコ・森永脅迫事件」、「フライデー」創刊。
オリコンの年間シングルチャート上位はこんな感じ。
1位 わらべ:「もしも明日が。」
2位 安全地帯:「ワインレッドの心」
3位 松田聖子:「Rock'n Rouge」
4位 チェッカーズ:「涙のリクエスト」
5位 チェッカーズ:「哀しくてジェラシー」
6位 中森明菜:「十戒 (1984)」
7位 芦屋雁之助:「娘よ」
8位 チェッカーズ:「星屑のステージ」
9位 中森明菜:「北ウイング」
10位 中森明菜:「サザン・ウインド」
オタ的には「風の谷のナウシカ」が劇場公開された年で、サンライズのロボットアニメ枠は「重戦機エルガイム」でした。
前年の1983年に東京ディズニーランド開園、任天堂から「ファミリーコンピュータ」発売。
マス文化はTVがとても強い時代で、1981年「オレたちひょうきん族」、1982年「森田一義アワー 笑っていいとも!」放送開始と、なんというか「バブルの途中」というかポップで軽薄で笑えるコンテンツと、そのアンチテーゼ的にド反対の「おしん」や中森明菜などの重くて暗いコンテンツ(翌1985年が富野の「Zガンダム」です)が両極端に好まれた時代だったように記憶してます。なんというか目まぐるしく入れ替わる流行を追い続けること自体がステータスみたいな時代というか。
時代の空気を色濃く反映した「きまぐれオレンジ★ロード」も80年代特有の軽薄さやサムさみたいなものは避け難く有って、この作品の評価におけるリアルタイム世代とその後の世代の温度差けっこうあるんじゃないかなと思います。
ただし刺さった世代が思春期を迎えていた団塊ジュニア世代だったこともあり、リアルタイム世代の人口がとても多い作品です。
また主人公の恭介やまどかは「1969年生まれ」と設定されていて、時代的な普遍性をきっぱり捨てて「80年代に青春を過ごす若者たち」の物語として強く意識された作品です。
ラブコメ史・ジャンプ史における「オレンジロード」
「きまぐれオレンジ★ロード」をもって「少年ジャンプラブコメの始祖」とする向きがあります。「高橋留美子とあだち充を擁する小学館・サンデー勢に対抗すべく…」みたいな。
間違いだとは思わないんですけど、瑕疵がないかというとそうでもなくて…という。
「ジャンプラブコメの始祖」を称するには
・「キックオフ(ちば拓)」(1982年〜)は無視か
・「ウイングマン(桂正和)」(1983年〜)はラブコメか否か
・男の娘同居ラブコメを80年代初頭にやった「ストップ!! ひばりくん!(江口寿史)」(1981年〜)がオーパーツ過ぎて頭が痛い
などの諸問題をどう解釈するかが結構難しいですよね。
その辺のラブコメ史は語り出すと長くなるので割愛するとして、こことか割りと納得感ある感じでまとめてらっしゃるので参考までに。
middle-edge.jp
80年代当初の週刊少年ジャンプ編集長だった西村繁男が他誌のラブコメ路線を揶揄して茶化すためのパロディ作品として「キックオフ」「ひばりくん」が描かれた、という話はまことしやかにいろんなところで目にしますけど、実際どうだったんですかね。それに対して前述の高橋俊昌やその先輩の鳥嶋和彦が反硬派路線の急先鋒だった、的な。
ちなみに、「きまぐれオレンジ★ロード」が始まった1984年の週刊少年ジャンプ連載陣の顔ぶれは、
「こちら葛飾区亀有公園前派出所」
「Dr.スランプ」→「男坂」
「ブラック・エンジェルズ」
「キン肉マン」
「キャプテン翼 」
「キャッツアイ」→「バオー来訪者」
「ハイスクール!奇面組」
「よろしくメカドック」
「北斗の拳」
「銀牙-流れ星銀-」
「シェイプアップ乱」
「天地を喰らう」→「海人ゴンズイ」
「ウィングマン」→「KIDウィングマン」
「機械戦士(メカバトラー)ギルファー」「Mr.ホワイティ」「キラーBOY」
「あした天兵」→「きまぐれオレンジ★ロード」
「ボギー THE GREAT」→「ガクエン情報部HIP」
「とっても少年探検隊」
となってます。
全体的にバトルとスポーツ中心なのは今も変わらないですけど、より硬派イメージな作品が多いのと、「こち亀」の異常性が目につくな。
便利なサイトがあるもんですね。
sites.google.com
このサイト見ると、「きまぐれオレンジ★ロード」以降にラブコメ枠が固定で常設されたわけでもないんですよね。しばらく桂正和が孤軍奮闘しつつ、冬の時代もありつつ、という感じ。
勘案すると「きまぐれオレンジ★ロード」は「少年ジャンプが他誌対抗のために真剣に取り組んで初めて成功した、美少女ラブコメ作品のパイオニアだった」ぐらいが落としどころかしらん。あんま変わんねえなコレ。
話逸れるんですけど、TVアニメ「きまぐれオレンジ★ロード」の恭介役の声優・古谷徹が「ストップ!! ひばりくん!」の耕作役もやってたの発見してなんか笑ってしまいました。
TVアニメと「オレンジロード」
鏡の中のアクトレス
- 中原めいこ
- ポップ
- ¥255
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「きまぐれオレンジ★ロード」の成功はTVアニメと切り離せないところがあって、別に「オレンジロード」に限った話ではないですけど、日本中の金払わないガキでも観れるってのはやっぱデカいです。特に80年代はTVが強い時代でした。自分もTVで「オレンジロード」を知った田舎のガキでした。
TVアニメ「きまぐれオレンジ★ロード」は1987年4月〜1988年3月、日本テレビ系列で全48話が放送されました。
自分の地元では確か毎週水曜日の19時から「きまぐれオレンジ★ロード」、19時半から「めぞん一刻」を放映してた(順番逆だったかも)のを、ジャンプ本誌は買わずにお気に入りの漫画だけ単行本派だった田舎のガキの自分は、家族で食事の前後の一家団欒で観てた覚えがあります。いやー、気まずかったね!
うちの母親は優柔不断な男が主人公のこの2作品の区別があんまついてなくて、ヒロインの鮎川まどかのことを「若い頃の管理人さん」と呼んでました。たぶん「オレンジロード」を「めぞん一刻」の長い回想シーンだと思ってたと思う。
自分はそれまではやっぱジャンプの連載ラインナップに準拠してバトルしたりスポーツしたりのアニメを見ることが多かったので、「オレンジロード」は絵のクオリティ高くて、主題歌とかも「ザ・ベストテン」で聴く歌のようにかっこよくて、テーマが男女の恋愛で、「おしゃれな」というより「大人が観るドラマみたいなアニメ観てるわ〜」感が強かったです。
それまでは「恋愛ものは少女漫画とかで女子が観る(読む)もの」という固定観念が馬鹿ガキ男子的にあったんですけど、「ジャンプでやってるから男子が観ていいもの!」みたいな、エポックメイキングというか、なんか開眼するものがありました。
あれ…こうして書くとやっぱこの漫画がなければ俺クソオタになってなかったんじゃねえか…?
主題歌や挿入歌もよくて、この番組きっかけで和田加奈子のファンになって、CDアルバム出てるやつ全部買ったりして、今でも聴いてたりして。
声優陣の演技も好きでしたけど、特にメインヒロインの鮎川まどかを演じた鶴ひろみさんのあの「お姉さんっぽい同級生」声、子ども心に割りとメロメロでした。あと古谷徹はなんであんな「北の国から」みたいなことになったのか今でもわからない。「なわけで…」じゃないが。
マイフェイバリットすぎて後年DVD-BOXを買ったものを今でも後生大事に持ってまして、
別にプレミア化とかしてないっぽい。
一枚ぐらいひかるちゃん表紙にしたれよ、と思わんでもない。
キャラデザの高田明美が「クリムゾンがティファを描くような」ものすごい勢いで版権絵描いたので、「オレンジロード」のビジュアルといえば「高田明美の鮎川まどか」のイメージも強いですよね。
初回特典に鮎川&ジンゴロのフィギュア付き。
今どきはDVDなんかなくてもネットのSVODでディスクの入れ替え不要でいくらでも観れるし、 と思ったら、dアニメ、NETFLIX、アマプラ、Huluと巡回して検索したんですけど、いまどこも「オレンジロード」置いてないんですね。置けや。
大体原作準拠ながら、最終回周りが違うのと、アニメオリジナルの回もあるんですよね。恭介が鮎川以外の年上の女性(まどかのバンドの先輩)と一夜を共にして童貞卒業したことを匂わすエピソードとかもあって、
後でなにかで監督だか脚本家だかが「だいぶ周囲の顰蹙を買った」「しばらく周りの白い目が痛かった」と書いてた記憶があります。
また続編にあたる劇場版の「あの日にかえりたい」は、大多数の「まどか派」ですら観ててツラいものがありながらも心に刺さる作品でしたけど、先日その監督が衝撃発言したりしてましたね。
檜山ひかる
「約束された負けヒロイン」とでも言うか、不憫な子でした。恭介とくっつくことに何の障害も無かったことが最大の障害でした。この子なんっにも悪いことしてない。
メインヒロインのまどか人気は凄まじく、描いてる作者も作ってる製作陣も読者も自分も、恭介がひかるを選ぶとたぶん誰も思ってなくて、ある意味全員が共犯でした。
恭介と鮎川が一緒にいるための「子は鎹(かすがい)」の鎹扱いですらあったように思います。ノー天気でいい子だったんだけどね。
「きまぐれオレンジ★ロード」は1987年の42号で連載が完結しましたが、最終巻の18巻が出版されたのは約1年後の1988年7月と、異例の遅さでした。
作者の体調不良もあったかもしれませんが、遅れた原因について作者はこう語っています。
「主人公が最初に出会った」「長い黒髪」のヒロインに負ける「ショートカットの(モノクロ表現上)白髪」のヒロインという、「オレンジロード」自身が作ったかもしれないジンクスに負けたヒロイン。
余談ですけど、2005年の「いちご100%」の完結に際して西野つかさがこのジンクスに18年越しのリベンジを果たし、東城派の自分は「げぇっ!」ってなりました。
まあ勝ち負けじゃねえんですけど、便宜上。
恋に破れたヒロインにもちゃんと愛情を込める作者が好きでした。
春日恭介
モタモタした主人公を演じたら天下一品、当時だとアムロ、星矢も演じた大正義・古谷徹の演。
バトルか、エッチなことか、の両極端だった少年漫画の超能力界において「円滑に二股する」ために超能力を使うという新境地を開いたクソ野郎。
シュッじゃないが。
勉強も運動も苦手で優柔不断なものの、1巻時点でヒロインたちに好かれる人柄の素養は見せている。
よく「超能力の無駄遣い主人公」と揶揄されるけど、嵐の山小屋、吹雪の雪山遭難、無人島漂流などの普通のトラブル(普通とは?)の他、超能力のおかげでタイムリープ、タイムトラベル、パラレル世界行き、時間停止、身体入れ替わりなど、ラブコメで起こりそうなトラブルを網羅する、トラブル巻き込まれ系主人公界の巨人。
行動原理はエロと「悲しませたくない」なのでどこか憎めないが、
それが最悪の事態をも引き起こし、また何の免罪符にもならないことを80年代の馬鹿ガキたちに身を持って教えてくれた。
優柔不断な上にルックスも似てて前述のうちの母は「めぞん一刻」の五代くんと区別がついてなかったっぽい。
鮎川まどか
「鮎川や ああ鮎川や 鮎川や」と松尾芭蕉が生きていたら詠んでいたかもしれません。(詠みません)
王道でベタなこの作品自身が「王道」や「ベタ」を作った側面もあるかもしれませんが、そうした王道でベタなラブコメを力ずくで成立させてしまった強力なヒロイン。
2nd主題歌「オレンジ・ミステリー」の影響もあって「ミステリアスな」と形容されがちですが、アホの恭介目線ではミステリアスかもしれないですけど、読者目線だと結構わかりやすいヒロインかなと思います。
クールな不良キャラ改め大人っぽいお姉さんヅラしてる割りに露骨にヤキモチ妬くし幽霊怖いし、ギャップが可愛い。「ツンデレ」って言葉まだなかったのよね、この頃。
ひかるとの友情優先っぽいこと言いながら
恭介が自分のこと好きなことにも割りと早い段階から自覚的で、
恭介と隠し事を共有したり、
ヤキモチ妬いたりと、
結構ずるいっちゃずるいんですよね、この人。理性で恋心を制御できてない感じが滲み出てて、そこが好きだわ。「この子、俺のこと好きなんじゃね?」感ハンパないわ。
メタな話をすればTVアニメのイメージとも不可分で、高田明美の絵とか鶴ひろみの声とかも愛着に一役以上買ってますけど、集団制作である程度安定してるTVアニメと比べて、漫画版の鮎川まどかはとにかく「顔」が不安定なのが一番ミステリアスに感じます。
連載開始時点でキャリアの浅かったまつもと泉が、連載中に猛烈に絵が上手くなっていくので自然と顔が変わっていく、というのもあるんですけど、体調不良などでアシスタントが代わりに描いていたりするのも混じって、キャラデザが違うというかもう別人レベルで顔が不安定なのが、逆に魅力に感じます。鮎川まどかは概念。
初登場時。
このぐらいの、
このぐらいの頃が一番好きだわ。
これも好きだけど違う顔だわ。
萩原一至などがアシスタントだったことも有名ですけど、
この鮎川、萩原一至が描いてるわ。
誰だ君は。
誰だ君は。
作者が自分で言うんじゃねえよwww
と、描く人によって七変化する不安定さがとても好きでした。どの鮎川も好きだわ。
あと鮎川まどかに「ヤクザ・不良」ってカテゴリータグ付けるの、我ながらどうかと思うわ。
描き換えられてきた「オレンジロード」
作者の存命中、というか闘病中に、万が一にもご本人の目に触れることのないよう、書けなかった話をします。
「きまぐれオレンジ★ロード」には3つのバージョンが存在します。
①週刊少年ジャンプ連載版
②ジャンプコミックス(紙)版
③愛蔵版/文庫版/kindle版(モノクロ)/ジャンプコミックスカラー版
①は読んで字の通りです。自分は読んだことがありません。今から入手するのは実質不可能に近いと思います。少なくとも、前述の18巻の「ひかるのための45ページ」が存在しないはずです。また、ラスト周辺の描写がコミックス版と異なる、という噂を聞きます。
②も読んで字の通りです。絶版かと思いますが、中古市場で入手は可能です。一部プレミア価格化してます。連載版に若干+αの加筆修正、「ひかるのための45ページ」が収録されています。自分は文庫版購入時点で手放し、文庫版の内容を見て18巻だけ中古で買い戻しました。
③愛蔵版を元に同じ原稿で文庫版、電子版、カラー版などに展開されているものです。現在もっとも入手がしやすい版です。「ひかるのための45ページ」にプラスして、愛蔵版の出版時に作者のまつもと泉が特に最終巻周りの一部のコマを描き直しています。ラスト数ページのページ構成も若干変更されています。
現在一番入手しやすい③ですが、作者の画風がまったく変わってしまった後年に思い入れの強さ故に描き直したコマの絵、特に顔が、自分の思い入れの強さ故にどうしても好きになれません。しかも作者の思い入れ故に重要なコマほど描き直されて「しまって」います。
作品は作者のものなので「元に戻せ」と文句を言うわけにもいかず、増してやご本人が亡くなってしまわれました。電子書籍への移行を進めた自分のスカスカになった物理的な本棚には、黄ばんだ「きまぐれオレンジ★ロード」のジャンプコミックス18巻が一生居座ることになりました。
まつもと泉先生が病気を克服されて元気になって、遠慮なく「元に戻して!」と文句を言うか、遠慮なく「もう一度描き直して!」と文句を言えたら良かったのに、あるいは近年多く見られる過去の名作のリバイバルのように続編が出てくれればブツブツ文句言いながら読めたのにな、と思います。
一生「オレンジロード」をちょいちょい読み返しながら生きていきます。
まつもと泉先生のご冥福を心からお祈りします。
aqm.hatenablog.jp