私たちは売りたくない! “危ないワクチン”販売を命じられた製薬会社現役社員の慟哭

若くしてコロナワクチンのためにこの世を去った同僚の死を無駄にしないためにも、一人でも多くの読者に真実の情報を知らせたい。そして自らの意思で正しい未来を掴んでほしい。
狂気の政策の同伴者であることを拒否しようと叫ぶ、医療業界内部からの熱き良心が形となった1冊。

確かにこれを読むと、レプリコンワクチンは怖くなるし、コロナワクチンも打つのが怖くなる。予防接種健康被害救済制度の認定数がどんどん増えているのだとか。

「勤労青年」の教養文化史 (岩波新書)

かつて多くの若者たちが「知的なもの」への憧れを抱いた.大学はおろか高校にも進めなかった勤労青年たちが「読書や勉学を通じて真実を模索し,人格を磨かなければならない」と考えていた.そんな価値観が,なぜ広く共有されえたのか.いつ,なぜ消失したのか.地域差やメディアも視野に入れ,複雑な力学を解明する.

戦後まもなくのころに農村で広がった青年学級、都市部の定時制高校、そして広く読まれた人生雑誌の3つに焦点を当てている。どれも今では、定時性を除けばなじみのないものなので興味深かった。教養主義が廃れてしまったのは、世の中の情報量があまりにも増えてしまったからのようにも思う。

戦死 インパール牽制作戦 (文春文庫)

昭和21年2月9日、元陸軍大佐棚橋真作はGHQからの出頭命令に接して、古式通りの割腹自殺をとげた――著者は、その死に疑問をいだき、間近に迫っていたインパール作戦の陽動作戦として実施された「ハ号作戦」に参加した第55師団の生き残りの人々の証言や日録を克明に調べていくうちに花谷正師団長の部下への自決強要の問題が浮かび上がってくる。軍隊という巨大な組織の冷酷無残な非人間性を描いた戦記文学の傑作。著者のインパール五部作の一冊。

高木俊朗のインパール作戦5部作のうちの1作。数年前に文春文庫から他の4作品は復刊されたが、なぜかこの作品だけは復刊されていない。第一次アキャブ作戦、第二次アキャブ作戦を扱っていて、当時の棚橋連隊長が戦後すぐに割腹自決したことから始まっている。作戦中、とにかく攻撃を命令する第55師団の花谷師団長と折り合いが悪かったことが述べられ、その後、花谷師団長の暴虐ぶりが描かれる。師団長から暴力を振るわれて自殺したり、撤退したことで自決を強要されたりした何人もの将校・兵士が、公報上では全て戦死として書かれている。これがタイトルとつながっていることに気づいてぞっとした。師団司令部では師団長に殴られることが日常茶飯事で雰囲気が悪かったようだ。もっとも、殴ったり自決の強要は極端にしても、周囲が何もできなくなるのは日本の組織の根っこにある問題のようにも思う。これだけ復刊されていないのは、花谷師団長の遺族への配慮か、それともあまりに生々しすぎるからか、どちらなのだろう。

国商 最後のフィクサー葛西敬之

日本の政界、財界、霞が関、マスメディア、鉄道業界すべてを騒然とさせる、今年最後にして最大の話題作!
国鉄分割民営化で革マルと手を組み、右派・日本会議の黒幕として安倍晋三を裏で操ったJR東海「総帥」の実像。
日本最大級の広告主ゆえに、これまでテレビ新聞はもちろん、文春砲を含む週刊誌ですら取り上げることができなかった「タブー」の扉がいま開く。

題材はとても興味深いが、根拠がなにもない記述が多く、著者の憶測ではないのか、どこまで信用できるのかと感じてしまう。官邸の葛西人事というが、葛西の勉強会に来ていた人間が副長官になったらそれが葛西人事なのか。日本会議の黒幕、靖国神社の崇敬者総代というのも、田久保という評論家の言をそのまま書いているだけでなにか根拠が書いてあるわけではない。週刊誌のコラムの切り貼りという印象。

ことばの番人

日本最古の歴史書『古事記』で命じられた「校正」という職業。校正者は、日々、新しいことばと出合い、規範となる日本語を守っている「ことばの番人」だ。ユーモアを忘れない著者が、校正者たちの仕事、経験、思考、エピソードなどを紹介。「正誤ではなく違和」「著者を威嚇?」「深すぎる言海」「文字の下僕」「原点はファミコン」「すべて誤字?」「漢字の罠」「校正の神様」「誤訳で生まれる不平等」「責任の隠蔽」「AIはバカともいえる」「人体も校正」……あまたの文献、辞書をひもとき、日本語の校正とは何かを探る。校正者の精緻な仕事に迫るノンフィクション。

本の雑誌で紹介されていて興味をもったが、なんというか雑多な印象。

寒い国から帰ってきたスパイ

ベルリンの壁を境に展開される英独諜報部の熾烈な暗闘を息づまる筆致で描破! 作者自身情報部員ではないかと疑われたほどのリアルな描写と、結末の見事などんでん返しとによってグレアム・グリーンに絶賛され、英国推理作家協会賞、アメリカ探偵作家クラブ賞両賞を獲得したスパイ小説の金字塔!

ルカレの小説は読みづらいのが多いが、これは一度読み始めるとすっと読めてしまう。イギリス情報部から二重スパイとして東ドイツに潜入する諜報員が、作戦の本当の目的を知ったときが悲しい。そしてイギリスの小説らしく、救いようがない最後。60年以上前の作品だが全く古びた感じがしない。

日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実 (中公新書)

310万人に及ぶ日本人犠牲者を出した先の大戦。実はその9割が1944年以降と推算される。本書は「兵士の目線・立ち位置」から、特に敗色濃厚になった時期以降のアジア・太平洋戦争の実態を追う。異常に高い餓死率、30万人を超えた海没死、戦場での自殺と「処置」、特攻、体力が劣悪化した補充兵、靴に鮫皮まで使用した物資欠乏……。勇猛と語られる日本兵たちが、特異な軍事思想の下、凄惨な体験を強いられた現実を描く。アジア・太平洋賞特別賞、新書大賞受賞。

日本人犠牲者の9割近くが1944年1月以降の犠牲者だという。これはドイツも同じで、敗勢著しくなるほど被害が拡大する。そして日本軍に独特なのは捕虜になることを禁じ、味方を殺すこと。クルスクに派兵された北朝鮮軍と同じ構造になっている。