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多くのエンタープライズ企業が、複雑なWebアプリケーションと複数サイトのホスティングや運用を最適化し管理する上で、スケーラビリティ、コスト、サポート面での課題を多く抱えています。たとえば、急速なトラフィック増加に対応できないまたはコストが急増するようなホスティング環境では、サイトのパフォーマンスが低下し、ビジネスの信頼性に影響を及ぼします。また、クラウド環境の認証やコンプライアンスへの対応が不十分だと、法的リスクやビジネスの停止につながる可能性があります。この記事では、Acquia、AWS、そしてamazee.ioの3つのホスティングオプションを比較し、エンタープライズ企業が最適なホスティングを選択するためのヒントを得ることができます。

アプリケーションサポートの違い

エンタープライズ規模のDrupalホスティングを選択するに当たりAcquia、AWS、amazee.ioの3つの代表的なサービスがあり、それぞれが異なる特徴を持つアプリケーションサポートを提供しています。

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AcquiaはDrupalに特化したサポートを提供しており、特にDrupalに関連する運用環境やツールが整っていますが、Drupal以外のアプリケーションには最適化されていません。

AWSは幅広いアプリケーションのサポートを提供しており、自由度が高く、どんな種類のアプリケーションでも構築・運用が可能です。しかし、その自由度の高さゆえに、設定やセキュリティ管理に専門知識が必要で、構築・運用に多くの手間がかかることが課題です。

一方、amazee.ioはDrupalだけでなく、WordPressやLaravel、Node.jsなど異なるアプリケーションを同じプラットフォームで管理することができます。Kubernetesを利用した自動コンテナオーケストレーションにより、コードをプッシュするだけでデプロイが完了するため、構築・運用の手間を大幅に削減できます。特に、複数の技術スタックを効率よく管理したい企業にとって有利です。

サービスサポート対象特徴
AcquiaDrupal専用Drupalに特化した環境とツールが整っており、構築・運用の手間は中程度
AWS全アプリケーション対応高い自由度、設定や管理に専門知識が必要で、構築・運用の手間が大きい
amazee.ioDrupal、WordPress、Node.js等Kubernetesを利用した自動デプロイ、柔軟な運用管理で、構築・運用の手間が少ない

CDNとWAFの統合によるパフォーマンス向上

amazee.io、Acquia、AWSの各プラットフォームにおいて、CDN(コンテンツデリバリーネットワーク)とWAF(Webアプリケーションファイアウォール)の統合によるパフォーマンス向上に関するサポートは大きく異なります。

CDN-WAF

amazee.ioはフルマネージドで統合されたCDNを提供し、ユーザーは一貫した高いパフォーマンスを享受できます。ビルトインのキャッシュタグサポートにより、キャッシュ管理が容易で、追加のキャッシュツールも不要です。

一方、Acquiaは選択したCDNを利用する形であり、Varnishのような追加ツールが必要になる場合があります。AWSはCloudFrontを用いたCDNとWAFの統合が可能ですが、設定はユーザー自身で行う必要があり、フルマネージドの利便性はありません。

また、WAFに関しては、amazee.ioは機械学習や行動ベースでの次世代の防御機能を提供しています。Acquiaは次世代WAFに未対応だが、AWSは次世代WAFを使用可能です。

特徴amazee.ioAcquiaAWS
マネージドCDN◯◯△(自分で設定が必要)
ビルトインのキャッシュタグサポート◯××
Varnish不要◯×◯
パターンベースのリクエストブロッキング、IPブロッキング◯◯◯
次世代WAF(機械学習、行動ベース)◯×◯

カスタマーサポート

amazee.io、Acquia、AWSはそれぞれ異なるスタイルのカスタマーサポートを提供しています。

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amazee.ioは特に企業固有のニーズに対応したサポートに力を入れており、テクニカルアカウントマネージャー(TAM)が顧客と直接対話します。さらに、Slackによる24時間365日のチャットベースサポートで、迅速な問題解決が可能なため、運用上のストレスを軽減できます。特に迅速な対応が必要な企業にとって魅力的な選択肢となっています。

AcquiaもTAMを通じたサポートを提供しており、顧客のニーズに応じてサポートを行っていますが、指名制のサポートには高額な費用がかかる場合があります。また、サポートが提供されていますが、柔軟な対応が求められるケースでは制約があることもあります。

AWSは広範なサポートオプションを持ち、多様なニーズに対応可能です。サポートプランは有料で選択可能であり、セルフサービスのオプションから専任のサポート担当者を持つプランまで幅広く用意されています。ただし、AWSのサポートは主にセルフサービスに依存しているため、企業が即時対応を求める場合には他の選択肢と比較してやや時間がかかることがあります。

これらの比較から、amazee.ioは個々の企業に対した迅速な対応に優れ、特に独立したプラットフォーム運用の支援や透明性のある価格設定も含め、顧客のビジネスニーズに応えるカスタマーサポートの点でおすすめできます。

既存アプリのスムーズな移行

既存アプリの移行プロセスは、企業がホスティングプロバイダーを選ぶ際の重要なポイントです。

cms-migration

amazee.ioは、既存のサイトやアプリケーションをそのまま移行できる点で優れています。既存の環境を再構築する必要がなく、シンプルなプロセスで既存の技術スタックをそのまま維持しながら移行が可能です。これにより、移行時のリスクや運用停止時間を最小限に抑えつつ、迅速にプラットフォームの変更が可能になります。

一方、Acquiaの場合、他のCMSからDrupalへの移行が必要になる場合があり、既存アプリの移行プロセスは手間がかかることがあります。AcquiaはDrupalに特化しているため、異なる技術スタックを使用しているアプリケーションをそのまま移行することは難しく、再構築や大幅な調整が必要です。このため、Acquiaへの移行には追加のコストや時間がかかることが多いです。

AWSは、自由度が高いため、ほぼすべての既存アプリを移行することが可能です。しかし、その自由度の高さは同時に構築と運用の複雑さも意味し、移行プロセスには専門的な知識が求められます。特に、セキュリティ設定やインフラ管理に関する専門性が必要であり、移行作業が煩雑になる可能性があります。

これらを総合すると、amazee.ioは既存のアプリケーションをスムーズに移行したい企業にとって、最も手間が少なく効率的な選択肢と言えます。再構築の必要がないため、移行コストやダウンタイムを抑えることができます。

認証とコンプライアンス対応の比較

amazee.io、Acquia、AWSは、それぞれ主要な規制や基準に準拠し、高い信頼性とセキュリティを提供しています。以下の表に、各サービスの対応する認証とコンプライアンスの状況をまとめました。

認証・規制amazee.ioAcquiaAWS
GDPRコンプライアンスとEUクッキー規制◯◯◯
カリフォルニア消費者プライバシー法(CCPA)◯◯◯
HIPAA◯◯◯
PCI DSS◯◯◯
ISO 27001◯◯◯
SOC 2 Type II◯◯◯
CSA STAR2024年第4四半期予定◯◯
FedRamp / FISMA顧客と協力×◯
Infosec Registered Assessors Program(IRAP)◯◯◯

このように、amazee.io、Acquia、AWSの各プラットフォームは主要な認証に対応しており、特に情報セキュリティに関して高い基準を維持しています。amazee.ioは顧客と協力して追加の認証取得を進める柔軟性があり、AWSはすでに広範な認証を取得しているため、特定のニーズに応じた選択が可能です。

価格体系の比較

価格設定の特徴amazee.ioAcquiaAWS
最低契約期間年間契約年間契約なし
CPUとRAMに基づかない価格設定○ヒット数のみに基づく価格設定×
オートスケーリング対応○ 従量課金 無制限のCPUとRAM、リクエスト数の上限なし△ Enterpriseプランのみ。小規模プランでは同時リクエスト過多でサービス停止の可能性あり○ 従量課金 無制限のCPUとRAM、リクエスト数の上限なし
24/7サポート◯◯◯
日本語サポート◯ 日本の営業日10:00〜18:00での提供非公開◯
実質総コスト中高高

3つのプラットフォームは、それぞれ特徴的な価格設定モデルを採用しています。

amazee.ioは年間契約を基本としながら、リソース使用量に応じた従量課金制を組み合わせています。価格体系の透明性が高く、顧客は事前にコストを正確に見積もることができます。特筆すべき点として、amazee.ioは24時間365日の英語サポートに加え、Drupalに精通した専門家による8x5の日本語サポートが含まれています。

Acquiaも年間契約制を採用していますが、価格体系の詳細は非公開となっています。サポートはレベル制を採用しており、要求される対応レベルによって費用が変動します。リソース追加時の課金体系も非公開のため、長期的なコスト予測が比較的難しい面があります。

AWSは最低契約期間を設けておらず、完全な従量課金制を採用しています。価格は公開されており透明性が高く、日本語サポートも利用可能です。AWSは多くの場合ベンダーを通じて導入することになり、その際にベンダーのマージンが上乗せされます。また、適切な構成やセキュリティ設定のために専門的な知識が必要となり、これらの管理コストや人件費を考慮すると、実質的な総コストは高額になる傾向があります。

これら3つのプラットフォームを総合的に比較すると、実質総コストの面ではamazee.ioが中程度、AcquiaとAWSが比較的高めとなっています。特にamazee.ioは、Drupal専門家による日本語サポートを含む包括的なサポート体制と価格の透明性の高さにより、予算管理とスムーズな運用の両面で、日本の企業にとって魅力的な選択肢となっています。ただし、各プラットフォームにはそれぞれ特徴があり、企業の具体的なニーズや規模、技術要件に応じて最適な選択は変わってくるため注意が必要です。

まとめ

エンタープライズDrupalホスティングの3つの主要なプラットフォーム(amazee.io、Acquia、AWS)を比較検討した結果、それぞれに特徴的な強みと課題が明らかになりました。

Acquiaは、Drupalに特化した専門的な環境とツールを提供する一方で、他の技術スタックへの対応に制限があり、移行時のコストが比較的高くなる傾向にあります。

AWSは、最も高い自由度と幅広いアプリケーションサポートを提供していますが、構築・運用に専門的な知識が必要で、管理コストや人件費を含めた総コストが高くなりやすい特徴があります。

amazee.ioは、以下の点で特に優位性を示しています:

  • Kubernetesを活用した自動デプロイによる効率的な運用
  • 複数の技術スタックに対応した柔軟なプラットフォーム
  • 既存アプリケーションの容易な移行
  • フルマネージドCDNと次世代WAFの統合
  • 24/7の英語サポートと日本の営業時間内での日本語専門サポート
  • 透明性の高い価格体系

選択に際しては、企業の具体的なニーズ、技術要件、運用体制を考慮する必要があります。特に日本企業にとっては、amazee.ioの日本語サポートと総合的なコストパフォーマンスは、検討に値する要素となるでしょう。すべてのプラットフォームが主要な認証やコンプライアンスに対応しており、セキュリティ面での信頼性は確保されています。

amazee.io 
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この記事を書いた人: ANNAI株式会社

ANNAIは、2009年からDrupal専門のWebシステム開発会社として、世界規模で展開するグローバル企業や大学・自治体を中心に数多くのWebソリューションを提供。
CoreやModuleのコントリビューターなど、Drupalエキスパートが多数在籍。国内ユーザーコミュニティへも積極的にコミットし、定期的なセミナーの等の開催を通じて、オープンソース技術の普及や海外コミュニティとの緊密な連携を図っている。
Webシステムの企画・開発〜デザイン、クラウド運用までをワンストップで提供する他、Drupalのコーディングを評価する"Audit業務"や最適なモジュールの調査・選定等、幅広いコンサルティングを行っている。Drupalアソシエーション公式パートナー。

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