今回は小津安二郎監督の傑作コメディ「お早う」(1959年)をご紹介します。すごく面白かったですね。
"Good Morning" photo by Craig Duffy
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ザ・昭和です。ノスタルジーが溢れてきますね。
林家の子ども達、実と勇がかわいらしい。
2人のタートルネックセーター(トックリセーター)の柄と茶色は昭和の茶色ですね。
白黒テレビや洗濯機などの家電がまだまだ高価な代物だった時代、多摩川沿いの新興住宅地が舞台です。
地域のコミュニティがしっかりしている分、隣近所の付き合いやら噂話といった面倒なことも多い。
特にハイカラな都会人には住み心地が悪いものがあります。
勝手な思い込み、悪意ある噂を流すおばさま達( 杉村春子がいい味出している)とか、あるあるです。
近所付き合いに限らずこういう人たちはいますね。
現代の都会は近所付き合いはありませんが、学校や職場では相変わらず。今ならSNSでしょう。
人間という生きものは3人集まるとロクなことしませんが、それは昭和も令和も同じです。
人間は変わらないからですね。
「余計なことばかり言うな!」と笠智衆演じるお父さんに叱られた林兄弟は、文字通り何も喋らないというレジスタンスを始める。
でも、おやつや給食費の請求もお母さん(三宅邦子)に伝えられず、兄弟は腹が減っちゃう。
コミカルで大笑いの連続です。
林兄弟が指摘したように、交わす時候の挨拶、「いい天気ですね」をはじめ、確かに大人たちは無駄だらけなことにがんじがらめ。
節子(久我美子)にそういう無駄なことは言えるけど、肝心の「好きです」の一言が言えない平一郎(佐田啓二)。
人は皆無駄なことに振り回されているんですね。
同時に楽しみといった類は、皆無駄と言えば無駄ですが、それはそれで意味がある。
時候のあいさつは当たり障りなく互いが暮らすための潤滑油。
そして子どもにとっても無駄とは、健康的な成長に必要不可欠な寄り道です。
そういう矛盾を生きる庶民の姿を小津安二郎は、笑いと皮肉、少しのペーソス、何よりもあたたかな眼差しで描いています。
Untitled photo by Craig Duffy
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…「お早う」を観終えてふと思ったんですが、平一郎は小津安二郎で、節子は本作には出演していない原節子なんじゃないかな?と。
尊敬しあう監督・女優という関係だけでなく、小津にとって原節子は特別なひとだった気がします。
もし小津安二郎が原節子に肝心のことを言えていなかったら?
小津監督は平一郎に自分自身を重ねて大事なことが言えない姿をコミカルに描いたのでしょうか。
あるいは小津は2人の関係について噂する世間を悪戯心で揶揄ったのかも知れません。
…などという僕の下世話な連想こそが「お早う」的な無駄話ですね。
「晩春」の原節子
Untitled Photo by bswise
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2023年も暮れようとしています。
今年も当ブログに訪れて下さりありがとうございました。
次回は年が明けたら記事をアップしようと思います。
皆様、良い年末年始をお過ごし下さい。
それでは新しい年も気分はネコ年で😺