今回はアン・ハサウェイ主演の異色作「シンクロナイズドモンスター」(2016年)をご紹介します。
"Colossal Review!" Photo by Ant-Man
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ニューヨーク。失業中でアルコール依存症のグロリア(アン・ハサウェイ)は、恋人のティムに家から追い出されてしまいます。
グロリアはニューハンプシャーの田舎町に帰郷、幼馴染みで酒場経営者のオスカーと偶然再会します。
世間を騒がしている韓国ソウルに現れた怪獣が自分の動きとシンクロしていることに気づいたグロリア。
一方、怪獣と同時に出現した巨大ロボットにシンクロしているのはオスカーだった!…というお話。
荒唐無稽ですが、この映画は怪獣ものではありません。
グロリアは酒に酔って馬鹿なことをして後悔します。
自分の振る舞いにシンクロしている怪獣によって多大な被害を街にもたらしたわけですから。
しかし、オスカーは全世界が巨大ロボットに注目し、SNSでバズっていることに快感をおぼえてしまう。
オスカーもまた田舎で燻る自分を惨めな存在と感じていたんですね。
巨大ロボット騒ぎで承認欲求が満たされたんです。
同じく駄目人間を自認するグロリアと彼の違いが明らかになります。
最初は承認欲求をめぐるSNS社会を皮肉った映画かと思いました。
確かにそれもありますが、メインテーマは男性に支配される女性の物語なんです。
グロリアはエリートのティムからは人格否定されて説教をくらい、オスカーからは嫌がらせをされる。
グロリアは男性から横暴に支配される女性なんですね。
グロリアは「相手は自分をものにしたいからだろう」と、好意からしていると解釈していたんですが、全く違うことに気づく。
やはり相手からの支配を断ち切るには思い切って生き方を自ら変えるしかありません。
支配-被支配関係では幸せにはなれないですから。
でも相手の対人パターンの変化を期待することは出来ません。支配したがること自体はその人の問題ですから。
だから自分が今までと違う対人パターンで誰かと新たに人間関係を作り、新しい生活を始めるしかない。
生き方を変えるということなんですね。
変えるには断固たる決意と行動が必要で、グロリアのラストの闘いはそのことを象徴しています。
本作は賛否両論のブラックコメディですが、意外にも僕はよい映画だと感じました。
でも正直途中まで観ていて困惑しましたが、アン・ハサウェイの演技に引っ張られた感じです。
「レ・ミゼラブル」(2012年)以降出演作がアレな感じでしたが、やはりぐぐっと惹きこむ力のある女優さんだな、と思いましたね。