今回は「クリード 炎の宿敵」(2018年)。 「ロッキー4/炎の友情」の因縁が息子の代で再び相まみえます。
アドニス・クリード(マイケルB・ジョーダン)はついに世界チャンピオンに登り詰めます。
恋人にプロポーズ、さらには父親になることが分かるアドニスは公私共に絶好調。
対して肉体労働で日銭を稼ぎ、薄暗いリングで闘うヴィクター 。
ヴィクターの父はイワン・ドラゴ(ドルフ・ラングレン)。
四半世紀前アドニスの父アポロがリング上で命を落とした試合の相手がイワン。
この試合でアポロのセコンドを務めたロッキー(シルヴェスター・スタローン)は、タオルを投入しなかったことを悔やみ、今も罪悪感を引きずっています。
そしてロッキーに負けたイワンは一夜にして全てを失い、以降どん底の暮らし。
イワンは息子ヴィクターを鍛え上げて虎視眈々とロッキーへの復讐の機会をうかがっていたんです。
(しかしヴィクターは父親の恨み辛みを晴らす道具として育てられて気の毒)
ヴィクターに目を付けたプロモーターに招かれてアメリカにやって来たドラゴ父息子。
彼らに挑発されたアドニスは、ロッキーの反対を押し切ってリングに上がるが…という展開。
映像がスタイリッシュ。余計な説明をせずに対照的な両者を淡々と撮す前半も佳い。
アドニスが今やリッチな環境でトレーニングしているのに対して、ヴィクターは親父さん相手にアナログなトレーニング。
「ロッキー4」と立場が反対なんですね。
アナログなトレーニングが結果を生むというのはロッキーシリーズの哲学?ですね。
相変わらず試合シーンは迫力満点。観ているこっちの左脇も痛くなるくらいでした。
ロッキーは疎遠な息子ロベルトに電話さえ出来ないんです。
「ロッキー・ザ・ファイナル」でいい感じになったかと思いきや…。親子関係は難しい。
ロッキーは、きっと息子に拒否されるのが怖いんだと思います。
そして喪失感と病、過去に囚われ中々前を向けないロッキー。
怒りに燃えるイワンはもっと過去の奴隷。
そしてそれぞれの過去と過去、因縁がぶつかる。
若さと甘え故にロッキーに酷いことを言ってしまうアドニス。
ロッキーがかつてそうだったように。
しかし、ボロボロになったアドニスは、ロッキーの言葉に再び耳をかたむける。
アドニスは前を向くために、己のために闘うことを決意した時、周りの期待や怖れを乗り越えてヴィクターの待つリングに向かう。
アドニスとロッキーの関係は理想的ですが、血が繋がっていると逆に難しい気がしました。イワンとヴィクターみたいに。
親子関係は業が深い。
アドニスとロッキーは、いわば他人だからこそ出来た希有な絆です。
「ロッキー4」の出来がアレだったので(僕の評価では)、その系譜を直接継ぐ本作を観るのはちょっとためらいがありましたが、観終えて感動しましたね。
特に決戦後にロッキー、そして ドラゴ父息子にも救いがあるエンディングが僕は好きです。
やはり物語はハッピーエンドに限りますよ。
「ロッキー」シリーズは第一作のプロットが基本です。長寿シリーズは皆そうですが。
ファンもそれを期待しています。だから定番の流れは守りつつ、いかに飽きさせないかが難しい。
「クリード 炎の宿敵」はその点も良かったですね。胸アツでしたよ。