この回は晴香の涙に集約するような水の演出*1が印象的だったほか、日常の小芝居にも力が入っていて見応えがあった。その中で特に好きだったのが小笠原晴香と中世古香織の間柄が表れていた芋と牛乳のシーン。
斎藤葵の退部表明を発端に、晴香は久美子やあすかへ当たり散らしてしまった自己嫌悪から学校を欠席。そんな彼女のもとに香織はお見舞いとして焼き芋を買ってくる。
晴香「何でこの時期に芋なの?」
香織「食べたかったの芋、牛乳で。合うでしょ?」
気兼ねなく芋を頬張ることで瞬時に「女の子の空間」が生み出され、辛かった時期を同じ橋渡し役として相談し合って来た二人の距離感がすとんと落ちてくる。*2
残像のおばけを取り入れてコミカルに描いたりして、二人の話題も重いはずなのに口調は冗談交じりで険悪になることがない。
一連のやりとりを経てなお、この先も晴香はあすかへの劣等感を消せないだろうし、真面目な性格からまた様々な問題に直面する度に悩み立ち止まるかもしれない。
それでも香織のように自身に共感し支え合ってくれる仲間がいる。その唯一絶対の事実こそがここで晴香を立ち直らせた最大の要因なのだと思う。
葵や過去退部した部員といった晴香の傍から零れ落ちてしまったものや、あすかのような完璧*3な存在へのわだかまりに一度折り合いをつける。そんな晴香の気持ちが表れているのが次の牛乳描写だった。
ここでは晴香がわざわざ香織の牛乳に手を伸ばしている。相手の意見を飲む,留飲を下げる際に飲み物を口にする描写は多々あるものの、自身の麦茶ではなく勧められた牛乳を手に取ることで香織の気持ちを飲み込むことを強調しているのが稀有なポイント。
晴香が牛乳を飲む姿は直接映されはしないけど、最後の香織のカットで「んくっ…んくっ…」と気持ちよく喉に流し込むSEが挿入されていて、ここは音響さんがすごくいい仕事をしていた。*4
また、時を同じくして一年生の三人がポテトフライを食べるシーン。これはまだ晴香と香織の焼き芋ほど腹を割ってはいなくても、それと同質の関係を築き上げている過程を描いているのだと思う。
先輩たちの過去と同時に後輩たちの未来にも言及する繋げ方であり、ただならぬ芋と牛乳の活用法だと瞠目させられた。
なお、今作における芋とは「芋っぽい(イモい)」という言葉があるように野暮で垢抜けない彼女らの様子を代弁しており、作中に登場する芋ジャージひいては青春のメタファーであると考えられる(嘘ですごめんなさい)
『響け!ユーフォニアム』第7話「なきむしサクソフォン」
監督:石原立也 脚本:花田十輝 作画監督:西屋太志 音響監督:鶴岡陽太
絵コンテ演出:武本康弘 シリーズ演出:山田尚子