君と、A列車で行こう。

旅行などで訪問した場所に関することを綴るブログ。鉄道などの交通に関することが多めです。主にX(旧twitter)では書きにくいような長文を書きます。当面は大阪・関西万博がメイン。

【大阪・関西万博】「TECH WORLD」に込められた言葉

TECH WORLDパビリオン(2025年4月19日)

※本記事は、下記の記事から抜粋して再構成、加筆を行ったものです。

a-train.hateblo.jp

サイバー感溢れるエントランスと、渡されるウェアラブルデバイス

4月19日の15:30に、台湾の玉山デジタルテックが出展している民間パビリオン「TECH WORLD」を訪ねました。

エントランスに入ると、1人1人スマートウォッチのようなウェアラブルデバイスを渡されて装着します。これは後で使います。

サイバー感溢れるTECH WORLDのエントランス

巨大な木のオブジェとタブレット群で描かれる台湾の自然と生物

次の部屋に案内されると、出迎えるのはスクリーンを兼ねる巨大な木のオブジェ、そしてその周囲を取り囲む無数のタブレット端末。

木のオブジェのスクリーンでの映像に、タブレット端末も連動して動作する

台湾の自然と生物を紹介するスクリーンの映像に合わせ、周囲の端末も色を変えたり向きを変えたり、連動して動作します。かなり壮観です。

最後には、端末1つ1つに描かれた蝶にタッチすると、その蝶が木の幹を飛んでいくという趣向もありました。今のデジタル映像技術ならだいたい何だってできてしまうと、言ってしまえばそうなのですが、体験としての面白さはあります。

台湾の高山地帯の風土、そして蘭の道

その後、エレベーターで4階まで上がり、高山地帯に来たという設定で、高山地帯の自然や風景が紹介されます。

巨大スクリーンで紹介される高山地帯の自然や風景

そして、台湾が世界有数の生産地域であるという蘭の道へ。一部には、花用のスプレーで万博の文字や「TECH WORLD」の文字が描かれているという芸の細かい演出もありました。

蘭の展示。一部には花用のスプレーで描かれた文字も。

デジタル技術や半導体を主題とした展示。TECH WORLDの本領へ

この次からがTECH WORLDの本領に入っていきます。

8K大型ディスプレイによるデジタルアートの展示。映像がどんどん変化していくのですが、全くドット感がなくぬるぬると動いていくのが凄いのです。

8Kディスプレイによるデジタルアートの展示

そして、おそらくはメインテーマであるICチップの話。未来の社会において、ICチップがあらゆる問題の解決に貢献する、という話が描かれます。

TECH WORLDが誇る半導体技術が、未来の問題解決に貢献するというストーリー

そして隠してもしょうがないので書いてしまうと、最後に、半導体技術で世界に貢献していくという趣旨のメッセージが、ずっと「TECH WORLDは」という主語で語られていた中に、「台湾は」という言葉を忍ばせていたのを聞き逃しませんでしたよ。

ウェアラブルデバイスで計測した展示に対する反応

さて、最初に付けたウェアラブルデバイスは何をしていたかというと、各展示に対する反応を調べていたようです。「ライフ」「ネイチャー」「フューチャー」の3分野で、私の場合は「ネイチャー」に最も反応が大きかったという結果になりました。そして、その関心に応じた台湾のおすすめ訪問地が表示されたりしました。

デジタル技術を活かした、インタラクティブな要素が多くて楽しめるパビリオンでした。

展示に対する反応の度合いを、ウェアラブルデバイスで取得して表示

神農生活が出店するショップとテイクアウトメニュー

パビリオンの最後にあるショップは、台湾の神農生活が出店しています。テイクアウト型の飲食物もあるので、定番のかき氷とかタピオカとかではなくなるべく経験がない物を購入し、近くの大屋根リング下のベンチでいただきました。

ルーローハン(1650円)は日本でも割とおなじみのメニュー。炒めた豚バラと漬物、煮卵を盛り付けた丼料理です。

餅のシロップ煮棗包み(1450円)は日本ではそこまでメジャーではないような気がします。その分だけ値が張るのかも。台湾では「心太軟」と呼ばれるそう。棗の風味と餅の組み合わせが面白かったです。

四季春ミルク(850円)は、台湾のウーロン茶「四季春」のミルクティー。スッキリした飲み口で、これは紅茶のミルクティーよりいいなと思いました。暑かったせいかもしれません。

ルーローハン(1650円)
(左)餅のシロップ煮棗包み(1450円) (右)四季春ミルク(850円)

Tech World=TW=台湾?

このパビリオンは実質的に台湾パビリオンと言ってもいい存在だと思いますが、台湾はBIE(博覧会国際事務局)に加盟していないので、国あるいは地域として出展することはできません。

玉山デジタルテックは、台湾の貿易当局の外郭団体が出資し、日本で登記された企業であるため、民間企業として出展できる、ということなのだそうです。

toyokeizai.net

玉山デジタルテックの設立は2021年10月。2022年2月に会社のWebサイトを立ち上げ、5月には大阪・関西万博へのパビリオン出展基本構想を発表しています。

他に事業の実態がほとんど見られないことから、実質的に、この万博への出展のためだけの企業なのだと思います*1。

大阪・関西万博の会場においては、海外パビリオンはすべて大屋根リングの内側に配置されています。これは、「多様な世界、いろいろな価値観、いろいろな伝統を持った国々、人々が一つに集まる。そして一つにつながる。そこから未来が生まれてくる」という、大屋根リングを設計した藤本壮介氏が込めた理念の表現です。

www.sankei.com

しかしながら、民間企業パビリオンであるTECH WORLDはその外側に置かれることになりました*2。

つまり、日本や多くの国が台湾を国家承認できず、BIEの加盟もできないといった現状が、万博会場においてもそのまま表現された形となっています。

私がTECH WORLDを訪問した際には、最後にオリジナルデザインの荷物タグをいただきました。夏ごろから、最後にいただける品物(ランダムに1つが選ばれるらしい?)にトートバッグが加わったとかで、それが評判となって、予約なしで入れるのが数時間待ちというような状態になっていったようです。

お土産に惹かれて並ぶのもよいのですが、TECH WORLDの存在が映し出す国際社会の現状が、この万博の特徴の1つとして認識されていれば、というように感じています。

*1:下記Webサイトより、「会社概要」「お知らせ」「事業内容」を参照。

tamayama-digital.jp

*2:大屋根リングの内側に置かれているのは基本的にはシグネチャーパビリオンと海外パビリオンのみであり、これに該当しないパビリオンは、参加国の撤退によって急遽設けられたものです。