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この百合マンガがすごい!2023

 

みんな元気~? ローラだよ~。

2022年も数多くの良質な百合マンガが私達の身体の上を通り過ぎていきました。

この記事では2022年内に刊行された百合マンガ作品の中から、筆者のおすすめ作品を筆者独自の【各部門別】に表彰して紹介させていただきます(コミカライズ・翻訳作品・新装版・今年以前刊行作品の続刊を除く)。

(あくまで筆者の好みをで紹介しているため「あの作品が入っていない!」といったような見当違いな意見は受け付けておりませんのであしからず)

 

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この百合マンガがすごい!2014

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この百合マンガがすごい!2022

 

世界中のあらゆる無益な戦争を一発で終わらせるのが「百合」。怪しい壺を叩き割る女子同士のイチャコラを読んで明るく新年を迎えましょう。(敬称略)

 

 

 

百合ハーレム賞

どれが恋かわからない(1~)/奥たまむし

 

【あらすじ】主人公・空池メイは高校の卒業式に片想いしていた友人に告白……しようとするも失敗してしまう。そのため「大学でぜったい彼女をつくる!」と意気込んで入学するのだが、なぜか次々とメイのもとに女の子たちがやってきて……!?

 

恋に落ちやすい主人公に好意を寄せるのは、清楚なアイドルに、大人の魅力漂う教授に、イケ女のバーテンダー、キス魔の先輩、ワイルド系美少女……最後は誰と結ばれるのかも気になる強烈なハーレム百合が本作。

 

傑作「明るい記憶喪失」での活躍も記憶に新しい奥たまむし先生に、暴走百合を描かせて面白くないわけがない! 欲望に正直な主人公を描かせても右に出るものがいません。

 

 

 

あたらしい自分賞

はなものがたり(1~)/schwinn

 

【あらすじ】長年連れ添った夫を亡くした、はな代。独り身で化粧品専門店を営む芳子。まったく違う人生を歩んできたふたりが、おばあちゃんの今だから出会い、惹かれ合い、互いを知っていくことに――。

 

学生百合、社会人百合があるなら、シルバー百合があってもいいじゃない……百合の花はいくつになっても咲き乱れるのです。百合ップルには共白髪まで幸せに暮らしてほしいと願ってやまないのですが、出会った時点で共白髪ながら逆にもうちょうどいい!

 

メイクを通じて高齢女性同士のコミュニケーションを描く本作は、主人公が「妻」や「母」として生きているうちに奪われた、または手放さざるを得なかった様々なものを取り戻す物語でもあります。一方で、主人公が想いを寄せる(実際は両片思い)芳子の物語やイケ女っぷりにも目が離せないところ。

 

 

 

大ツンデレ賞

スケバンと転校生(1~)/ふじちか

 

【あらすじ】転校生の神崎凛々の楽しみはスケバンの南雲あつ子に「かわいい言葉」を言ってもらうこと。あつ子も神崎がよろこぶ姿を見るうちに悪くないと思いはじめ…。不思議な組み合わせのふたりによるラブ&ハッピーな日々。

 

「可愛い言葉を聞くのが好き」という性癖を持ち、怖いものしらずな凛々のために、恥ずかしがりながらも彼女の欲望を満たしてあげるあつ子の姿は、今年の最優秀ツンデレ賞。両片思いの恋の行方も気になって仕方ありません。

 

なんでも今は80年代のジャパニーズカルチャーが流行っているそうなので、当時の日本を舞台にしている本作も若者のマストアイテムになるべきなのでは? 

 

 

 

 

くそっ…じれってーな 俺ちょっとやらしい雰囲気にしてきます!!賞

狛田さんを困らせたい(1~)/スズオ

 

【あらすじ】いつも何かに困ってる背が小さい女子高生・狛田さん。そんな彼女の後輩で色々とデカい加賀井さんは、いつも狛田さんを弄って弄って困らせるのだった!! 彼女が困らせる理由はただ一つ。だって加賀井さんは……。

 

「同じ学校の人からかう系漫画」(そんなジャンルがあるのかは知りませんが)の流れは百合業界にも。からかい上手の加賀井さんと振り回される狛田さんの(少しエッチな)やりとりに読者は悶絶必死。

 

明らかな両片思い、スキンシップも多め、にも関わらず一向に結ばれる気配のない二人。本に向かって「頼むから早く付き合え!」「早く結婚しろ!」と声援を投げたくなる作品です。

 

 

 

 

この日をずっと待っていた賞

これ描いて死ね(1~2巻)/とよ田みのる

 

【あらすじ】東京の島しょ・伊豆王島に住む安海相は、漫画が大好きな高校1年生。長年活動休止状態の憧れの漫画家☆野0先生がコミティアに出展することを知り、東京都区内に旅立つことに……そしてコミティア会場での思わぬ出会いが相の人生を変える!

 

デビュー作「ラブロマ」時代からのとよ田フリークを自称している私。いつかとよ田先生が百合を描いてくれないかな……という無謀とも言える願望が、まさか成就する日がくるなんて! 意識された百合として描かれているわけではないのでしょうが、女子が女子に憧れ、女子が女子を引っ張り上げ、女子が女子に執着し、女子同士がキスをする……誰がなんと言おうがこれは百合なんですよ。

 

すでにあらゆる漫画ランキングで名を馳せている本作。百合の魅力はもちろん、前作「金剛寺さんは面倒くさい」から地続きとなる著者の強烈な「マンガ愛」と「マンガの可能性を信じる心」は本作でも全く失われていません。

 

 

 

 

バブみ賞

甘えさせて雛森さん!(1~2)/tsuke

 

【あらすじ】「私をほめて! さっきみたいに優しくして!!」抜群の優等生である二年生・周防やや。テストは全教科トップ、頼まれごとは全て優雅にこなす……そんな先輩に、一年生の雛森いちごは憧れていた。ある日、ややが保健室で一人、号泣しているところを目撃。子供のようにぐずる彼女を勢いで抱きしめると、それ以来「甘えさせて」と、ややが付きまとうようになって……。

 

毎日嫌なニュースばかり流れて、仕事も忙しいし、百合マンガ読んでる時間くらい脳みそトロトロでいたいですよね。そんなときにオススメなのが本作。チルブームの今だからこそ読みたい甘えん坊系リラックス百合の爆誕です。

 

図らずもバブみを発揮してしまういちごに甘やかされているときのややの間の抜けた表情は、今年のダメ百合フェイス第1位。女子をダメにする女子も、女子にダメにされたい女子も、等しく尊いもの。

 

 

 

 

ベスト短編集賞

SAL/Sal Jiang

 

【あらすじ】心も体も、純情も欲情も――それぞれの愛のカタチ。ロマンスまでコメディまで、GLコミック新時代の旗手・Sal Jiang(サルチャン)の描いてきた短編作品を一冊に。webアクションの好評連載『彩香ちゃんは弘子先輩に恋してる』番外編も収録。

 

百合マンガの市場は拡大したものの、連載ものが増えて、いわゆる一人の作家の「短編集」の刊行が少なくなったのは寂しいところ。短編は作家の技量が最も垣間見せる物差しと言えます。そういった意味でも粒ぞろい短編が揃った本作は、『彩香ちゃんは弘子先輩に恋してる』で活躍する著者の魅力が遺憾なく発揮されています。

 

性別を偽って書店員と付き合う女子の葛藤と闇を描いた「秘密」や置き傘を巡る女子二人のユニークなすれ違いを描く「傘」などバラエティ豊かな収録群。私のイチオシはマシュマロ女子とドラマー女子の行き違いを描いた「見つめていたい」。才能のシャワーをたっぷり浴びることができます。

 

 

 

ベスト作家賞

ケイヤクシマイ(1~)/ヒジキ

 

【あらすじ】早藤香沙音はファミレスで働くアオヤマさんに会いに行くことを生きがいにしている。ある日、香沙音は雨の中で佇むアオヤマさんを助けることに。すると彼女は唐突に姉妹契約をもちかけてきて――。

 

夢でフラレてはじまる百合(1~)/ヒジキ

 

【あらすじ】どこにでもいる女子高生・月詩と、クールで美人だけどどこか隙の多い女の子・陽花は幼馴染。ずっと一緒にいた二人、これからもそんな日々が続くと思っていた……。陽花に告白してフラれる夢を月詩が見るまでは――。

 

今年、百合マンガ界で八面六臂の大活躍をした百合作家といえばやはりヒジキ先生でしょう。かわいい女子に爆弱なOLが、下心と戦いながら推しの女子高生と姉妹契約を結ぶ「ケイヤクシマイ」、陽キャ女子とクール美少女のじれったり両片思い百合を描いた「夢でフラれてはじまる百合」、ともに高アベレージを叩き出す佳作。

 

特に「夢でフラレて~」の悶絶具合は一級品です。また、シナリオの良さもさることながら、高い画力や表現力も注目したいところ。百合初心者からうるさ型まで満足させる実力は、これからの活躍に期待大です。

 

 

 

 

大賞

ROCA 吉川ロカ ストーリーライブ/いしいひさいち

(C)いしいひさいち

 

【あらすじ】寂れた港町に暮らし、ポルトガルの国民歌謡『ファド』の歌手を目指す女子高生・吉川ロカ。頼りがいのある友人や音楽教師、心優しい地元の人々に支えられながら、その才能を開花させていく……。

 

オススメの百合マンガを紹介する記事で、まさかいしいひさいち先生の名前を書くことになるとは思いませんでした。画歴50年、言わずとしれたマンガ界の大家が、ここにきてキャリアハイを更新する大傑作を刊行。しかも、これが濃密な百合マンガなんです。

 

本作の百合要素と言えば、やはり主人公のロカと年上の同級生・美乃の関係性でしょう。歌の才能がありながら間の抜けたところが多いロカを、粗暴な性格ではあるものの心根の優しい美乃が至るところでカバー。作中の節々に感じる美乃の愛情と、彼女を心から信じ、常にひっついて回るロカの姿は、みていてほのぼのとするもの。

 

すでに様々な場所で評判を呼んでいる本作を名作たらしめるのは、なんといってもラスト数ページの展開と最後の1コマ。今でも表紙を見ると涙がこぼれそうになります。何度でも読み返したくなる思い出の一冊が生まれました。都会へ向かうロカに美乃が投げた「お前はオレのシマだ」は本作随一の名台詞です。

 

実は本作、自費出版のため一般の書店では購入できず、特設サイトなどを経由しないと買えません。送料込みで1冊1250円ですが、「こんな大傑作がそんなに安くていいの……?」と驚きます。これまで「この百合マンガがすごい!」では自費出版や同人誌は紹介しないスタンスで更新していましたが、本作を紹介したいがためだけに今回は特例としました。

 

●あとがき

「この百合マンガがすごい!」も今年で10年目となりました。

アンソロ雑誌が刊行されては消えていくなど、まだ百合マンガ市場がそれほど大きくなかった2013年。百合マンガの素晴らしさを広めるために書き始めた記事ですが、今日に至るまでに市場の姿は大きく様変わりしています。

何年も前から、10年を区切りに更新を終わろう、と思っているのですが、今後のことはわかりません。来年の暮れもこの記事を、更新するかもしれませんし、しないかもしれません。

他方、コミック百合姫の「こじらせろ!百合妄想」も連載5年目に突入しました。ページの拡大もあったからか、最近は読者の方々の感想もだいぶ増えました。百合姫コラム最長連載を目指して頑張ります。いや~百合って本当にいいものですね。

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