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2012年コミック装丁あれこれ

このエントリーをはてなブックマークに追加 カテゴリ:この装丁がすごい!  »2013年03月24日 更新

作品単体と違った視点で、1年間のコミック装丁のあれこれをはじめてまとめてみたのが『2011年コミック装丁あれこれ』。2012年についても1個の記事にするぐらいにはネタがたまっていたのでここに公開します。2013年になってちょこっと増えたネタを混ぜつつ、なんとか年度内に間に合った2012年記事をどうぞご覧ください。



沢山紹介したデザイナー/デザイン事務所




『この装丁がすごい!2012』で紹介した作品は、2011年版とほぼ同じ規模で300+α。
2011年のあれこれに習って、事務所、またはデザイナーさんの紹介数を多い順に、
4作品以上紹介しているところをリスト化すると下記のような結果になりました。

デザイナー/デザイン事務所紹介数 (増減)デザイナー/デザイン事務所紹介数 (増減)
名和田耕平デザイン事務所26 (-7)GENI A LOIDE6 (+3)
ベイブリッジスタジオ24 (+1)crazy force 竹内亮輔6 (+2)
NARTI;S18 (+1)5GAS 6 (-2)
川谷康久13 (+2)葛西恵5 (+2)
セキネシンイチ11 (0)note 芥陽子5 (+2)
VOLARE10 (-3)ARTEN5 (0)
BALCOLONY9 (-7)コメワークス5 (+2)
コードデザインスタジオ8 (+4)井上則人デザイン事務所4 (0)
里見英樹8 (-1)8823design 内田圭祐4 (+3)
hive7 (-4)arcoinc4 (-)
L.S.D. シマダヒデアキ7 (+2)--



紹介数右、カッコ内の数字は前年からの増減数になっています。紹介数が通年で±4程度に収まっていて、だいたい同じバランスになっているのが自分で作った記事ながら少し驚きです。


以下、事務所・デザイナー単位で語りを補足します。


名和田耕平デザイン事務所


きょうの思春期(1) (KCデラックス)2まいめ(1) (ワイドKC)原作さん (アクションコミックス(コミックハイ!))

1年を通して数多く生み出される名和田デザインの中でも、シギサワカヤ作品、水谷フーカ作品、びっけ作品など相性が良くコンスタントに目立つ組み合わせがいくつかあります。その中でも最近面白いことになっているのが 一條マサヒデ作品。『殺し屋さん』や『4ジゲン』など、一条氏が原作として参加しているいくつかの作品はこれまでも名和田耕平デザイン事務所が担当していました。そしてここ最近は、イラストをテープで継ぎ合わせたような装丁の『原作さん』、帯がいかがしい感じにモザイク処理されている『きょうの思春期』1巻、カバーを外しすと渾身のオチが待ち構えている『2まいめ』1巻など、デザイン性とユーモアを両立させた作品が特に目立っていました。2012年発売の漫画系デザイン本『クールジャパンデザイン』(別項で紹介します)のBookDesignの項では、1ページ1作品で合計7作品名和田さんの装丁が紹介されていますが、上記3作品が全て掲載されています。聞いたことのない作者名とこなれた作画、独特の安定した匂いのギャグを感じる一條氏原作の作品がふと現れたら、その単行本の装丁がどなうなるか、あわせて期待が高まります。


VOLARE


猫なんかよんでもこない。 (コンペイトウ書房)地図苔の森 (ビームコミックス)機動戦士ガンダム サンダーボルト 1 (ビッグ コミックス〔スペシャル〕)

2011年に引き続き、中野キャンパスOPEN記念としてVOLARE関善之氏によるマンガのデザインの講座が開かれました。上記掲載の3作品など具体的な作品を例に、ロゴの製作過程やボツ案、選択肢にあった背景の別カラー案など、装丁をさらに楽しむことが出来る興味深いお話が満載で、貴重な時間を過ごすことができました。第3回もやるしかないですね(希望)。


セキネシンイチ制作室


さきくさの咲く頃Sunny 2 (IKKI COMIX)よるくも 3 (IKKI COMIX)

大人びた安定感を持つと同時に、どこか挑戦していて
埋もれないデザインがいつも素敵なセキネシンイチ制作室。
最近気づいたこととして、西村ツチカ『かわいそうな真弓さん』に続き、
ふみふみこ『さきくさの咲く頃』ではそのクレジットに、事務所と共に
担当者として森敬太氏の名前が記載されていました。自主制作漫画誌
『DIORAMA』の主催者でもあります。セキネシンイチ制作室の新しい流れに注目です。


hive


暗殺教室 1 (ジャンプコミックス)暗殺教室 2 (ジャンプコミックス)暗殺教室 3 (ジャンプコミックス)

『暗殺教室』の装丁をhiveで担当されたことは久持氏のツイートで知ったわけでありますが、週刊少年ジャンプの単行本で冒険しているデザインの単行本が登場して、そのデザイナーが明らかになるというのは結構なニュースのように感じられました。強いブランド維持の目的もあってか、週刊少年誌の単行本のなかでもジャンプコミックスのデザインの縛りは結構強い方ですが、こういった新しい流れを機に幅ができるといいな、と思う次第。『暗殺教室』の表紙については、「憤怒の表情」がどう調理されるか気になるところです。


L.S.D. シマダヒデアキ


クレムリン(6) (モーニング KC)月曜日の空飛ぶオレンジ。 (1) (まんがタイムKRコミックス)むかしむかしのきょうのぼく 2 ?週刊はじめての初音ミク? (ヤングジャンプ愛蔵版)

東京喰種トーキョーグール 3 (ヤングジャンプコミックス)犯罪王ポポネポ 1 (ヤングジャンプコミックス)へうげもの(14) (モーニング KC)

奇抜なデザインで作品の個性が引き出されて、面白そうだなと思って手に取ったときに名前を見て納得するのがこちら。デザインのタイプとして遊び系とスタイリッシュ系が多いと認識していて、その境界はあいまいですが、上の6作品のうち上段を遊び系、下をスタイリッシュ系としてまとめてみました。最近刊行が始まった文庫版『魔人探偵脳噛ネウロ』もこちらのデザインとのことで、手に取らない範囲にはあるのですが、文庫版のデザインもいつの間にか面白い方向に進んでいるのでしょうか。

魔人探偵脳噛ネウロ 1 (集英社文庫-コミック版)魔人探偵脳噛ネウロ 2 (集英社文庫ーコミック版)魔人探偵脳噛ネウロ 3 (集英社文庫―コミック版)


そんなシマダ氏率いるL.S.D.では、現在求人募集を行っているようなので、未来のデザイナーさんはふるってご応募ください(ブログにリンクが貼ってあって判明しました)。野生のL.S.D.広報担当、良いコミックです。

⇒L.S.D.求人募集


草野剛


エウレカセブンAO (2) (カドカワコミックス・エース)エウレカセブンAO ~Save A Prayer~ (1) (カドカワコミックス・エース)交響詩篇エウレカセブン ニュー・オーダー (1) (カドカワコミックス・エース)

2012年は『エウレカセブン』の続編『エウレカセブンAO』が放送され、そのコミカライズ作品も展開も始まっていました。装丁はもちろん、草野氏が担当。2012年発売開始の2作品は白枠+銀色と、白帯+ピンク色。そして2013年発売の『ニュー・オーダー』は風景系。デザインのタイプを大きく変えて作品毎に個性を出しつつ、フォントや巻数位置など文字情報の雰囲気を揃えてシリーズとしての統一感も出しています。同時展開する複数作者のコミカライズ系作品郡が増えていますが、やはりエウレカ系のデザインはスタイリッシュで一味違います。


川谷デザイン


僕らはみんな河合荘 3 (ヤングキングコミックス)リュウマのガゴウ 1 (ヤングキングコミックス)タイニープリニウス (ヤングキングコミックス)

少女漫画系を中心に活動している川谷デザインですが、谷川史子『清々と』あたりからヤングキングコミックスでのお仕事も確認。そろそろ記事をまとめたいところです(ノープラン)。




注目のデザイナー/デザイン事務所




arcoinc


あんずのど飴 (IKKI COMIX)3年2組の呪い屋さん (4コマKINGSぱれっとコミックス)ふわふわのきもち (ひらり、コミックス)

「2011年あれこれ」の記事では名和田耕平デザイン事務所のメンバーとして紹介した楠目智宏氏。2012年6月1日よりarcoincを独立開業しておられました。『ふわふわのきもち』や『さろめりっく』に見られるふわっとした文字組みなど、名和田さんとはまた違った個性を発揮しつつ、2013年初頭にはIKKIレーベルの冬川智子2作品を担当し、レーベルに新しい風を起こしていました。今年も沢山手に取る予感がします。


I.S.W DESIGNING 柊椋



BLACK★ROCKSHOOTER THE GAME (1) (角川コミックス・エース 365-1)極黒のブリュンヒルデ 1 (ヤングジャンプコミックス)父がロリなもので1 (REXコミックス)

同人媒体の作品やライトノベル作品などを対象に、多種多様のロゴを生み出し続けているデザイナー、柊椋氏。新しいデザイナーの起用などから装丁に新しい流れの見えるヤングジャンプ作品、その中でも注目度の高い岡本倫先生の(←正しいステマ文章)『極黒のブリュンヒルデ』の装丁を手がけられていました。こういう、名前を覚えている方が守備範囲に現れるというのはフラグになることがしばしば。その動向に注目です。
(ブログをご覧になれられたことがあったようなので、コミティアで本を買ったときにお話するのを躊躇したことをちょっと後悔。「「良いコミック」というブログはご存知ですか?」「良いこ、ミクさんですか?」「えっ・・・・」「えっ・・・・」(想定し得る恥ずかしいパターンその1))



ツノッチデザイン 角田正明


かくかくしかじか 1 (愛蔵版コミックス)いいなりゴハン 1 (ヤングジャンプコミックス)リーチマン(1) (モーニング KC)

L.S.D.に在籍し、ジャンプSQの『月下美刃』などの装丁で名前をお見かけしていた角田正明氏。L.S.D.時代からの東村先生の『主に泣いています』(講談社)から『かくかくしがじか』(集英社)へと繋がり、さらにその弟、森繁先生の『いいなりゴハン』も担当。今後のお仕事の広がりが期待できます。


成見紀子


ジョジョリオン 3 (ジャンプコミックス)ロンジコーン 2 (ヤングジャンプコミックス)見てる。―ストーカー (魔法のiらんどコミックス)

ジョジョリオンなど、現在のJOJO関係のデザインに携わっている方で、「紙面の広告が面白いですよ!」などとウルトラジャンプの編集さん経由でその名前を覚えたデザイナーさん。名前を覚える、ということは結構フラグになることが多く、彼女に関しても知った瞬間世界に現れたかのように情報が集まってきました。一味違う、その芸術家肌的な装丁は、目にする機会が増えていきそうです。




他方面系デザイナーの装丁




名久井直子


坂道のアポロン BONUS TRACK (フラワーコミックス)チキュウズィンマダムGの館 黒猫篇 (フラワーコミックス〔スペシャル〕)

装丁家・グラフィックデザイナーとして「2005年に装幀家として独立して以降は、「名久井の装幀」であることが読書家へのアピールになるほどの人気を得ており、年間にデザインを手がける本は100冊を超える。」(wiki)と書籍全般の装丁を手がけ、情熱大陸で特集を組まれた実績もある名久井氏。2012年は、担当の『坂道のアポロン』の大団円に、ウルトラジャンプのコラムネタを探しているときに一目見て迷わず選んだ『チキュウズィン』、『トモネン』から7年以上開けて刊行された大庭賢哉先生の新作『郵便配達と夜の国』など、 装丁を手がけられた漫画作品のラインナップがとても印象的でした。『チキュウズィン』など、メジャー⇔マイナーの枠からはみ出たような、さらに文化の違う、しかし漫画の枠に収まる作品は、名久井氏に適役。しかし、この辺の作品とのめぐり合わせには運も絡んできそうです。(下手すると文芸の棚に並んでいます)

note 芥陽子


ウツボラ(2)(完) (エフコミック) (エフコミックス)SHI RI TO RI伏 少女とケモノの烈花譚(1) (ビッグガンガンコミックス) (ビッグガンガンコミックススーパー)

「他方面系デザイナー」と括っていいのか迷うほど、漫画関連の装丁も精力的に手がけられていた芥氏。せっかくなので、2010年版「すごい!」で1巻を紹介でいたので2012年版で掲載を控えつつ、装丁と内容が相まって良い2冊完結作品になった「ウツボラ」など、紹介しきれなかった作品をここに並べておきます。漫画装丁の多様性の意味も含めて、一般書籍と漫画装丁を行き来する芥氏のお仕事には今後も注目です。




雑誌デザインあれこれ




コミック百合姫 2012年 01月号 [雑誌]コミック百合姫 2012年 03月号コミック百合姫 2012年 05月号 [雑誌]

コミック百合姫 2012年 07月号 [雑誌]コミック百合姫 2012年 09月号コミック百合姫 2012年 11月号 [雑誌]

2012年、装丁で話題になっていた雑誌と言えば『コミック百合姫』。 01月号から始まった、なもり先生のイラストのカバーで物語を展開させる「カバーストーリー」は、窓の仕掛けやプリズム、鏡面的な光沢など巻ごとの面白い装丁も手伝って、まとめサイトに取り上げられるなど雑誌単体で異例の盛り上がりを見せていました。装丁を担当しているのはBALCOLONY.で、こちらは月刊アフタヌーンの装丁デビューもしていました。さらに、別冊マーガレット新増刊『bianca (ビアンカ)』についてもデザインを担当。


bianca (ビアンカ) 2012年 06月号 [雑誌]bianca (ビアンカ) volume.2 2012年 11月号 [雑誌]

少女漫画のコミックデザインにもいずれ参入?と面白いことになりそうです。


コミックキューガール No.1

こんな雑誌も現れ、そして消えました。内容紹介で木緒なち氏の名前を出す
くらいデザイン重視の姿勢を表に出したコミックキューガールでしたが…チーン。


アオハル “sweet” (スイート) 2012年 3/20月号 [雑誌]アオハル “bitter” (ビター) 2012年 4/20号 [雑誌]アオハル 0.99号 2013年 3/10号 [雑誌]

号数が一向にNo.1にならないアオハルは、相変わらずアオハルです。




注目のレーベル




モブサイコ100 1 (裏少年サンデーコミックス)モブサイコ100 2 (裏少年サンデーコミックス)ゼクレアトル~神マンガ戦記~ 1 (裏少年サンデーコミックス)

ヒーローハーツ 1 (裏少年サンデーコミックス)ヒト喰イ 1 (裏少年サンデーコミックス)ヒト喰イ 2 (裏少年サンデーコミックス)

世界鬼 1 (裏少年サンデーコミックス)ケンガンアシュラ 1 (裏少年サンデーコミックス)オエカキスト! 上 (裏少年サンデーコミックス)

「掟破りの無料WEBマンガサイト」「脱獄型WEBコミックサイト」と題し、週刊少年サンデー編集部が2012年4月18日より配信開始した無料コミック配信サイト(WIKI)裏サンデー。2012年11月から「裏少年サンデーコミックス」のレーベルで単行本が順次発売されています。無料WEB漫画の単行本としての差別化・付加価値化もあって青年コミックサイズの選択やカバーの特殊加工の多用など、少年サンデーの名を掲げながら、その装丁には別レーベルとしての文化が形成されています。主なデザイン担当は、ベイブリッジスタジオの面々や佐々木暁氏など。そのビジネスモデルの先行きも含めて、要チェックのレーベルです。




1人の漫画家×沢山のデザイナー




複数の作品を生み生み出す漫画家さん。
作品が変わってもデザイナーさんが同じ場合もあれば、違う場合もある。
ここでは特に、作品毎に違うデザイナーさんの違う装丁で、
変わるものと変わらないものが面白いと思った作品について並べてみました。

ヤマシタトモコ


サタニック・スイート (アフタヌーンKC)ひばりの朝 1 (Feelコミックス)裸で外には出られない (マーガレットコミックス)

芥陽子氏、ジェニアロイド、川谷デザイン。
出版社は全部違い、そのレーベルに馴染みのあるデザイナーさんが起用されています。
ヤマシタトモコ作品は普通が許されないというルールがあるかのうように、
どれもこれも強い個を放っています。


有永イネ


さらば、やさしいゆうづる (KCx(ITAN))最果てアーケード(1): 1 (KCデラックス)かみのすまうところ。(1) (KCデラックス)

川谷デザイン、釣巻デザイン室、VOLARE・関善之氏。
全て講談社少女系レーベル。
BE・LOVEでのVOLARE起用が渋いというか、
関氏の乙女な引き出しをもっと見てみたいところです。


西島大介


Young,Alive,in Love 1 (ヤングジャンプコミックス)小さな王子さま~世界の終わりの魔法使い(4)すべてがちょっとずつ優しい世界

五十嵐卓也氏、プリグラフィックス・川名潤氏、佐々木暁氏。
世界の終わりの魔法使い公式サイトにて「すごい!」に触れていただいておりますが、一文をお借りすると

>自分では着色をしない僕にとってデザイナーさんの存在は
>担当編集さんと同じくらい常に大きい存在です

と思わぬこぼれ話を聞くことが出来ました。


タカハシマコ


それは私と少女は言った (KCx(ITAN))荒野の恋(1) (KCデラックス)魔女系~タカハシマコ短編集~ (アクションコミックス(コミックハイ!))

コードデザインスタジオ、ベイブリッジスタジオ・黒木香氏、神楽坂マガジン社・古谷昌博氏。
コードデザインスタジオは、コードデザインスタジオっぽさ全開。
過去作品の遍歴を合わせ、タカハシマコ先生は
デザインにかなりのこだわりを持っていると勝手に信じている
漫画家の一人です。


天堂きりん


きみが心に棲みついた(1) (KCデラックス)キミニ恋シナイ―天堂きりん短編集 (マッグガーデンコミックス EDENシリーズ)そして、晴れになる 1 (オフィスユーコミックス)

NARTI;S・新上ヒロシ氏、コードデザインスタジオ、川谷デザイン。
こちらも、コードデザインスタジオを含めデザイナーさんのデザイナーさんっぽさ全開。
過去作品の名和田さん装丁も名和田さんっぽさ全開。
すっきりと可愛らしい絵柄は、どれももう一つの個性で色を変えています。
4月発売の『プッタネスカの恋』、こちらが早くも気になります。




気になったジャンル




百合


魚の見る夢 (1) (まんがタイムKRコミックス つぼみシリーズ)彼女×彼女(カノカノ) (ひらり、コミックス)コレクターズ 1 (書籍扱い楽園コミックス)

さろめりっく (ひらり、コミックス)百合男子 2巻 限定版 (百合姫コミックス)わがままミルフィーユ (百合姫コミックス)

今に始まったことではありませんが、かなりの確率でカバーに拘りが見られる百合作品。雑誌デザインあれこれで触れた百合姫を筆頭に、休刊になったもののいくつかの作品の継続が予定されているつぼみシリーズなど、このジャンルではコンスタントに繊細な内容を扱うのに適した丁寧なデザインの単行本が生み出されています。そんなジャンルに新たに参入したピュア百合アンソロジー「ひらり、」コミック。現時点では先に紹介しているarcoincの独擅場になっていて、その多彩な引き出しをお披露目する展覧会状態。

全体的にも、上手い方のお仕事が集まる、見ごたえのあるジャンルかもしれません。


エッセイ


バンギャルちゃんの日常いなみさんちのネコ召しませキモノ

暴れん坊本屋さん・完全版 ~棚の巻~ (ウィングス・コミックス・デラックス)いとしのこけし人生モグラたたき!

コミックエッセイというと、主婦層周辺をターゲットにした内容と、実用書やハウツー本に近いクセのないカバーデザインの本が多い、という漠然としたイメージを持っていましたが、一般形式の漫画とコミックエッセイを行き来する漫画家さんなどをきっかけにそのジャンルを意識すると、扱える内容の広さもあって、エッセイと一言でいってもかなり多様な作品が存在し、装丁的にも気になるものが多いことに気づきました。しかも、さらっと描けたり、説明を挟むのに適したキャラが多いこと、表紙には扱う内容を的確に表すイラストが必要なこと、そこに目を引く個性を持たせるためのデザイン的な工夫が合わさって、このジャンルは、一般コミックのものとは少し違った進化をしているようにも感じます。

そう思って手に取った作品の装丁は、よく知っている事務所が担当されていることが多く、手に取るべくして手に取ったと思うこともしばしば。注目してみると意外と面白いジャンルかもしれません。




気になったデザイン




紹介作品の中にデザイナーさんの偏りがあれば、レーベルの偏りもあり。
そして偏りのタイプとして存在するのがデザインの偏り。
その時気になるデザインというのは結構あって、
300作品も紹介すると、系統としていくつか集まって、
分類してみると改めて自分の好みを再確認するきっかけにもなります。
以下、気になったデザインのタイプ3種類を紹介します。


帯+背景


TARI TARI(1) (ガンガンコミックスJOKER)NieA7 Recycle (カドカワコミックス・エース)エバーグリーン 1 (電撃コミックス)

風景込みのイラストを採用しつつ、イラストの構図に左右されることなく作品タイトルをはっきりアピールできるこのタイプ。まずは帯が上に来るタイプ。

いとしのムーコ(1) (イブニングKC)あしたの今日子さん 1 (電撃コミックス)いなみさんちのネコ

こちらは帯が下にくるタイプ。帯下の場合は、帯は英字で描かれ、イラストエリアにさらにロゴが配置されることも。汎用性が高く、このタイプのデザインはもう少し増えるかもしれません。


ゲーム画面系


恋愛しませんか? 1 (カドカワコミックス・エース)いんてる先輩 (2) (REXコミックス)NOT LIVES 01 (電撃コミックス)

ゲーム系、オタク系作品に相性が良く、
デジタルな色彩のイラストとの相性も良いゲーム画面系。
小ネタも仕込みやすく、結構ネタストックも多そうで、
ボツボツ面白いものが登場しそうに思います。


横並び二人


喰う寝るふたり 住むふたり  1(ゼノンコミックス)いとしのこけし純情ドロップ (マーガレットコミックス)

鈴木さん(1) (ガンガンコミックスONLINE)14歳の恋 2GANGSTA. 3 (バンチコミックス)

式の前日 (フラワーコミックス)兄が妹で妹が兄で。(1) (KCx(ARIA))デイドリームネイション 4 (アライブ)

南国トムソーヤ  1 (バンチコミックス)ホリミヤ(1) (Gファンタジーコミックス)ハイスコアガール: 1 (ビッグガンガンコミックススーパー)

構図の基本単位的なところもあるので、分類してみると
数が多い「横並び二人」構図の表紙イラスト。
むしろ、「横並び二人」という構図をお題に、
タイトル位置や巻数、背景、トリミングの範囲など、それぞれの作品がどう個性
を作っているかが浮き彫りになります。
次もこのタイプを沢山紹介するかもしれません(予感、もとい予防線)



I Care Because You Doなのはな (コミックス単行本)霧の中のラプンツェル (アクションコミックス)

色が付くだけでそこには何かが存在するという感覚というか、白と白以外と個人的に分類していて、毎年結構多く紹介している白系。2012年は特に白いカバーが目に入ってきました。白と銀の『なのはな』、白と黒の『霧の中のラプンツェル』。白いクリアカバーの影でタイトルを再現する『I Care Because You Do』、こちらはこれ以上ないくらいに白。白、やっぱり好きですね~。ここまで極端なことになりそうなもので、ちょっと思いついたのが『おやすみプンプン』。最終巻あたりで真っ白になったりするかも…と思いましたが、真っ黒で終わりそうな気もします。




アニメ関係デザインあれこれ




となりの怪物くん(1) (デザートコミックス)となりの怪物くん(10) (KC デザート)となりの怪物くん FAN BOOK (KC デザート)

となりの怪物くん 2(通常版) [DVD]となりの怪物くん 1(完全生産限定版) [Blu-ray]

「すごい!」の方でも触れましたが、2012年、『となりの怪物くん』がアニメ化されました。単行本の装丁を行っている名和田耕平デザイン事務所が、同じくアニメのロゴやBD、DVDのパッケージデザイン、また同時期に発売されている公式ファンブックの装丁を担当。メディアの異なるアイテムのデザインのエッセンスの統一も期待でき、「原作」が尊重される流れのようにも感じられました。


あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。 1 【通常版】 [DVD]あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。 1 (ジャンプコミックス)あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。 2 (ジャンプコミックス)

『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』、こちらは2012年コミカライズということで、
逆パターン。DVD,BDデザイン担当のベイブリッジスタジオの黒木香氏が、
コミカライズ作品の装丁も手がけました。大人びた書体のロゴはコミックのロゴとしても
違和感無しで非常に原作の雰囲気が出たコミック版のカバー。少年ジャンプ系のコミックに
黒木氏が登場するというレアな組み合わせの実現でもあります。


坂道のアポロン (9) (フラワーコミックス)坂道のアポロン 第1巻 Blu-ray 【初回限定生産版】坂道のアポロン 第4巻 Blu-ray 【初回限定生産版】

先に紹介しているように、原作の装丁は名久井直子氏。
そしてアニメについてはimagejack團夢見が、ロゴや各話タイトル、エンドマーク等を
デザインされているということで、こちらはバトンタッチの例。

坂ロゴ

文学チックでどこか懐かしく、品の良さを感じられる漫画版の縦書きロゴ(名久井氏)。
さりげなく音楽記号が混じって、落ち着きの中に楽しさの入ったアニメらしい横書きロゴ(團氏)。
媒体による細やかなデザインの最適化が良く現れている好例です。



神様はじめました 第1巻 (花とゆめCOMICS)神様はじめました (1) (豪華10大特典つき初回限定仕様)(スペシャルイベント優先購入申し込み券封入) [DVD]神様はじめました ドラマCD付初回限定版 13 (花とゆめCOMICS)

『神様はじめました』。
こちらのロゴデザイン&BD・DVDデザイン担当はコメワークス木緒なち氏。
原作のレーベル花とゆめCOMICSの単行本が
超固定型フォーマットなので、アニメで筆文字らしさと
きつねマークが可愛いオリジナルのロゴが登場。
ロゴは、逆輸入と言うかアニメ化に先駆けたコミックCD付初回限定版のパッケージ
にも使用されています。



マンガのその他のデザイン




プンプン販促2プンプン販促1

書店の壁に貼ってあって、ふと目に入った作品に興味を持つこともある販促広告。中でもとても印象に残っているが『おやすみプンプン』11巻発売時に展開されたダブルヒロイン起用の2枚組みポスターでした。上記のポスターは『花もて語れ』6巻に挟まれていた両面ミニタイプの広告でしたが、この特大サイズのものがデカデカと貼られていたときにはとても目立っていました。単行本の表紙が1色のエンボス加工になっているので普通の人物キャラのイラストが珍しいこととあわせて、1巻につき1色が割り当てられた単行本の書影紹介部分が上手にデザインとして組み込まれていて、見た目の要素と販促の要素のバランスが美しく、これは欲しいと思ったことを記憶しています。

当たり前の話かもしれませんが、雑誌や単行本以外にも、その作品に関する形あるものには全てデザインが存在してるわけで、マンガの装丁が面白くなっているといことは、マンガを取り巻く様々なもののデザインも面白くなっているんだろうなとふと思った、というお話です。



3冊のデザイン本




クールジャパンデザイン―Cool Japan Design マンガ・アニメ・ライトノベル・ゲームのデザイン特集アニメ・コミック・ライトノベル・ゲームのデザイナー集漫画・アニメ・ライトノベルのデザイン (アイデア・アーカイブ)


2011年に発売された漫画系デザイン本2冊に引き続き、漫画の装丁やデザイナーさんを重点的に紹介しているデザイン本として、2012年は初音ミクが表紙を飾る『クールジャパンデザイン』が発売されました。漫画の装丁を取り扱った、すぐ手に入る書籍の充実。良い傾向です。

これらの3冊の特徴を比べてみると、

●クールジャパンデザイン(左、表紙:初音ミクイラスト)
 ―主に映像化されている人気作品を中心に、BD/DVD、書籍、グッズなどのデザインを特集している
  トータルデザインのページが7割、漫画単行本の装丁を特集しているブックデザインのページが
  3割。どちらも、1つの作品について手厚く商品が見えるように構成されている
●アニメ・コミック・ライトノベル・ゲームのデザイナー集(中央、表紙:モタ先生イラスト)
 ―事務所、またはデザイナー単位で1ページ、2ページにその担当作品が紹介されている。
  比較的新しい作品が多く、とにかくデザイナーの網羅数がすごい
●漫画・アニメ・ライトノベルのデザイン(右、表紙:西島大介先生イラスト)
 ―コズフィッシュ、名和田耕平デザイン事務所、ボラーレなど
  漫画装丁界の大御所が手厚く特集されている。過去の「アイデア(デザイン本)」
  特集2冊分を1冊にまとめた書籍

とそのタイプが上手い具合にばらけています。
興味のある方は、その目的に応じてお選びください。
むしろ、全部お選びください。




良いコミック出張




ダ・ヴィンチ 2012年 11月号 [雑誌]まんがくらぶこのマンガがすごい! 2013


2012年はWEB以外での活動も精力的に行えた…と大げさに言ってみますが、ウルトラジャンプでのコラムの他、昨年は3つの雑誌に登場しました。『ダ・ヴィンチ2012年11月号』、『まんがくらぶ2013年01月号』、そして『このマンガがすごい! 2013』。ありがとうございます。文芸誌、4コマ漫画雑誌と、以外なところからお話をいただけて大変嬉しいビックリでしたが、『このマン』への参加は、管理人として目標としていることの一つであり、それをようやく達成できたということでその感慨もひとしおでした。

ウルトラジャンプでのコラムも引き続き継続中で、連載も1年を超えて
紹介した作品数も大分たまってきました。

【ウルトラジャンプ 今月のジャケ買い紹介作品】
年/月作品出版社装丁
2011/07ストレニュアス・ライフエンターブレインコードデザインスタジオ
2011/08神様の言うとおり 1巻講談社smack
2011/09I【アイ】 1巻小学館volare
2011/10百合男子 1巻一迅社balcolony.
2011/11草子ブックガイド 1巻講談社hive
2011/12寿司ガール 1巻新潮社ナルティス
2012/01ピコピコ少年TURBO太田出版DK 大橋一毅
2012/02山賊ダイアリー 1巻講談社アーテン
2012/03私がモテないのは
どう考えてもお前らが悪い!1巻
スクウェア・エニックス沢田雅子
2012/04東京メイト竹書房GENI A LOIDE 小林満
2012/05Prism 1巻芳文社平谷美佐子
2012/06霧の中のラプンツェル双葉社名和田耕平デザイン事務所
2012/07おもいでだま 1巻小学館GENI A LOIDE 小林満
2012/08チキュウズィン新人物往来社名久井直子
2012/09成程白泉社30A 柴田昌房
2012/10俺物語!! 2巻集英社川谷康久
2012/11竜のかわいい七つの子エンターブレインコードデザインスタジオ
2012/12さきくさの咲く頃太田出版セキネシンイチ制作室 森敬太
2013/01夜さん 1巻徳間書店crazy force 竹内亮輔



その月に「これは!」と思ったものを素直に選びつつ、連載が続く限りなるべく多くの出版社やデザイナーさんを紹介したいとたくらみながら、掲載は続いております(2013年2月現在)。

幾つかの雑誌で装丁について語る機会をいただけたということは、それだけ最近の装丁が面白いと感じている人や、装丁を気に留める人が増えてきえているのかな~と装丁好きとして心強くもあり、引き続き細く長くこのブログを続けていきたいと思う次第です。ではでは。









【おまけ】

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【裏表紙賞】 とよ田みのる短編集 CATCH&THROW
/ とよ田みのる 


キャッチアンドスロー

5篇の物語を収録した短編集。

キャラが横使いで一方向に向かっている視覚効果が特徴的な白系の表紙。
キャラそれぞれの主線や色使いが裏表紙の漫画のコマで描かれた
収録作紹介と対応していて、面白いと思ったカバー。

画像を用意したままコメントが間に合わなかったたため、
追加の機会を失って今に至ります。

短編の合間に、話の終わり方続くように、同じく漫画で描かれた
あとがきも地味に複数の短編を1冊としてまとめるのに効果を発揮しており、
トータルとして良い単行本デザインになっていたことをいまさらながら主張しておきます。


出版:小学館
装丁:ベイブリッジスタジオ 白山仁

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【背表紙賞】 14歳 完全版 全4巻 / 楳図かずお

14歳背表紙

奇抜を超えた装丁で、賛否両論当たり前のUMEZZ PERFECTION!シリーズ。全20巻を4冊にまとめた極厚仕様の本書では、タイトル、作者名を普通以上に小さく配置し、残りのスペースを、2行で構成したキャッチコピーに用いています。

「背表紙賞を選ぶなら14歳だな」的なツイートにうんうんそうだよねと同意しつつ、本書を購入したのはごく最近。今、並べます。

出版:小学館
装丁:祖父江慎
   セプテンバーカウボーイ 吉岡秀典


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じこまん~自己漫~ 1 (ニチブンコミックス)【もう一つのオチ候補】 じこまん~自己漫~ 1巻 / 玉井雪雄





探せば、素っ裸は年間で幾つか見つかるもんですね。
(笑)で扱うにはちょっとかっこよすぎました。

出版:日本文芸社
装丁:Boogie Design

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2013年03月24日 | この装丁がすごい! | コメント 0件 | トラックバック 0件 | TOP

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