キンドル以外の電子書籍サービスで漫画を読んでみた
どんな業界でも“競争”は大事で、ある一企業が市場を独占してしまえばその一企業が生殺与奪の実権を握ってしまいかねません。
Amazonに恨みはありませんけど、キンドルが上陸して「これで日本の電子書籍元年だー!」と言っている今こそ、「いやいや、Amazonのキンドル以外にも電子書籍をやっている企業はあるんですよ」と紹介することで、お互いに切磋琢磨していって欲しいなあと、今私はとても奇麗事を言っていることは自覚しています。
キンドル(Kindle)とは
自分は以前この記事で、「キンドルとは電子書籍販売サービスのことで、キンドル本を読むために必ずしもキンドルと名の付いた端末を買う必要はありません」と書きました……
その逆もまた真なりで、キンドルと名の付いたキンドルファイアHDも「タブレット端末」の一機種なので、キンドル以外の電子書籍サービスも楽しめるのです。「キンドルファイア買ったけどキンドルストアは品揃え良くないなー。電子書籍ってこんなもんかー」と思った人!他の電子書籍サービスを試すのも手ですよ!
もちろん、キンドルファイアHD以外の機種でも楽しめます―――iPadとかNexus7とかのタブレット端末や、各種のスマホはもちろん、今日紹介する2つのサービスはPCでも電子書籍が読めます。日本のキンドルはまだPC上で買った本を読めるソフトを提供していないので、ここは明確にキンドルよりも優れているところです。
だから、ホントね……お尻に火をつけて頑張ってよ、Amazonさん。という意味でもこの記事を書くのです。別にAmazonにケンカを売っているワケではないのです!
○ マンガでは世界最大級のダウンロードサイト『eBookJapan』
“級”ってのが若干のモヤモヤ感を感じなくもないですが……(笑)
キンドルと比べてもとにかくラインナップが豊富な印象の『eBookJapan』です。
自分は特に電子書籍では「もう新品ではなかなか手に入らない昔の名作」を中心に買いたかったのですが、キンドルはここはほとんど網羅されていません。例えば、「手塚治虫」でキンドル本を検索しても、手塚先生が描いた本は1冊も出てきません。eBookJapanだと400冊以上出てきます(2013年7月9日現在の話)。
ということで、『新宝島』購入してみました。315円。
Wikipediaによると、これは80年代に手塚先生本人が描き直したリメイク版みたいですね。「1947年にこんな近代的な漫画を描いていたのか!」と恐怖におののいたのですが、ちょっと安心したような残念なような(笑)。
購入にはもちろん会員登録が必要です。
支払い方法はクレジットカード決済はもちろん、過去にウチのブログでも取り上げたVプリカやWebMoneyなども使えます。WebMoney便利ですね。コンビニで2000円から買えて、手数料なしというのは非常に魅力的。
(関連記事:クレジットカードを持っていない人でもデータ商品をダウンロード購入する方法)
PCでも、タブレット端末でも、スマホでも、各機種に専用の「ブックリーダー」というソフト(アプリ)をダウンロードして読みます。
それぞれのソフト(アプリ)に自分の会員IDを照合することで、トランクルーム(キンドルでいうクラウド)から買った本をそれぞれダウンロード可能。好きな端末で読むことが出来るのです。この辺は、キンドル本の管理と同じような感覚かな。一つのIDで登録できる端末は5つまでだそうです。
キンドルファイア(HD)だけは、GooglePlayが使えないため特殊な方法でアプリをダウンロードしてください。ここに詳しい方法が書かれています。面倒なように見えるかもですが、最初の1回だけなんで頑張ってください。
さて、ここからはキンドルファイアHDで実際に読んでみたレビュー。
他のAndroid端末用のアプリも、同じ機能だと思われます。
最初、「見開き表示」にする方法が分からなかったのですが……
「Aa」と書かれているアイコンを押して表示方法を変更するだけでした。「細かい設定を自分好みに変えられる」分、キンドルよりも設定変更の方法がややこしいのは長所でもあり短所でもありますね。
右上の「+」ボタンを押すとしおりがはさめて、その後は写真の通りにゲージのどの辺りに挟んであるのかが直感的に分かるようになります。「しおりのページに飛ぶ」のも簡単です。
PerfectViewerのように一つの作品の複数箇所にしおりをはさむことは出来ないんですが、若干「デジタル機器に慣れていない人には難しそう」なPerfectViewerに比べて「比較的誰でも分かりやすく使える」かなと思います。
本棚はこんなカンジ。
何故か最初から「同梱版」として幾つか本が入っているという。『ちはやふる』1巻!千早がまだ「お姉ちゃんが私の人生の全て」とか言っている頃じゃないか!かわいい!もっと姉妹でイチャイチャしてくれ!
個人的にはキンドルファイアの本棚みたいに、アイコンを上下左右にズラッと並べるレイアウトが好きなので……そういう表記にも対応してくれたらなと思っていますが。キンドルファイアの本棚と違って「フォルダ」を作ってそこに好きに本をぶち込んでいけるのが、素晴らしいですね。
「立ち読み版」の後に「製品版」を買うと、その2つが2冊として本棚に並ぶのは謎……
ということで、まだ使い始めて1日目で言うのもアレなんですが(笑)、ほぼ不満なし。
「本棚を開くにもいちいちアプリを起動しなければならない」くらいですかね。それはeBookJapanの責任ではないですけど(笑)。
eBookJapanは2000年から日本での電子書籍配信事業を始めていたそうで、各プロダクションや出版社との締結も早い段階から行っていて(キンドルに手塚漫画が1冊もない理由もこれなのかな?)、去年日本にやってきたばかりのキンドルと比較してしまうのは可哀想な気もします。キンドルにはキンドルの優れた部分があると思うので、互いに競争して切磋琢磨して欲しいですねうんぬんかんぬん。
しかし、こんなに使いやすくてラインナップも豊富なeBookJapanでも会員数がまだ80万人ということで……電子書籍はまだまだメジャーじゃないですよね。日本市場に特化した電子書籍サービスだと思うんで、「電子書籍元年とか言われてるけど、キンドルはまだまだイマイチだなー」と思った人こそ覗いてみてはいかがでしょうか。
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○ 個人向け電子書籍作成サービス「パブー」
先ほどのeBookJapanは、言っちゃえば「商業作品」の電子書籍です。
プロの漫画家さんが出版社から出している「紙の漫画」をデジタルでも配信―――みたいなイメージのサービスだと思います。
しかし、キンドルにはキンドルダイレクトパブリッシングという「出版社を介さずに個人で電子書籍を出版できるサービス」があります。言ってしまえば「商業作品」と「同人作品」の両方を扱うのがキンドルであって(※1)、「同人作品」を扱う電子書籍サービスも競争相手がないとダメだよねーと「パブー」を紹介させていただきます。
(※1:同人=二次創作じゃないですよ、念のため)
「パブー」とは「ブクログ」から派生している電子書籍作成&販売&閲覧サービスで……「個人」でも「法人」でも、無料の電子書籍も有料の電子書籍も扱えるサービスです。
ただ……まぁ、現状は出版社はほとんど参加していないっぽいです。
推測できる理由は後述します。
これは商品の個別ページのスクショです。
「お気に入り数」とか「レビュー」とかと並んで「コメント」の欄があります。作者に直接コメントを書きこめるという―――どちらかというと、PixivのようなSNSの側面が強い電子書籍サイトなんです。
詳しくはまた別の機会に別の記事で書こうと思っていますが……キンドルダイレクトパブリッシングはとにかく制約が多くて思ったような本が出版できないのですが、こちらのパブーは「こんなんで大丈夫なの?」と心配になるくらいにゆるゆるで自由度が高いサービスです。
無料の本も出せるし、「こっちの本を買った人は新刊を安くするよー」みたいなことも出来るみたいです。有料の本も設定できる最低価格は10円で、試し読みのページも「どこまで無料で読めるのか」を作者本人が決められるという。
作者視点ではなく、読者視点の話に戻しますと……
支払い方法は「クレジットカード」はもちろん。クレジットカードを持っていない人は、「おさいぽ!」というサイトにIDを登録すれば、コンビニで買えるWebMoneyを「おさいぽ!」にチャージしてそこから支払うことが出来ます。詳しくはこちら。
セブンイレブンで2000円分のWebMoneyを2000円で買って、それを「おさいぽ!」にチャージして、「パブー」で2000円分の買い物が出来る……というところまで実際に確認しました。どこでも手数料とか取られなかったんですけど、WebMoneyや「おさいぽ!」はどこで利益あげているんだこれ???
どうやって読むの?というと、「WEBサイト上で読む」のと「ダウンロードして各種端末で読む」の2パターンです。基本は前者で、後者は作者が設定した場合のみ利用可能みたいです。
「WEBサイト上で読む」場合はこんなカンジ。
あ、自分の漫画の画像を使っているのは「著作権上問題がなさそうな画像」だからです。実際に自分の漫画を「パブー」で公開しているワケではありません。そうすると、『新宝島』はイイのかって話ですが……
どうも「WEBサイト上で読む」と、見開き表示には出来ないみたい……?
ここは結構なマイナス要素ですねー。デカイPCの画面でこそ見開き表示で読みたいんで、「パブー」さん頑張って対応してください。
GooglePlayに対応したAndroid端末ならばアプリででも読めます。
キンドルファイアではダウンロード出来ませんでした(笑)。
キンドルファイアはこういう「Androidアプリであってもダウンロードできないアプリ」が結構あって、電子書籍絡みで言えばJコミのアプリもダウンロード出来ないんですよねぇ。ウェブで読めばイイんですけどさ。
閑話休題。
「パブー」の作品は専用アプリがなくても読めます。
購入した本は、PDFファイルやMOBIファイルでダウンロード可能です。
PCでもスマホでもタブレット端末でも、PDFファイルが読める機能やソフトやアプリがあればそれで読めてしまうのです。
DRMフリーなので、ダウンロードしたファイルは自分で好きな端末にコピー出来ます。
これは出版社が参入しないであろう最大の理由で、買った人が好きなだけ複製可能というのは大手出版社ほど眉をしかめると思います。例えば『ワンピース』の新刊がこれで出たら、あっという間にコピーが広まってしまうと思いますもの。
一応、月額課金をしている作者は「ダウンロードしたファイルにダウンロードした人のメールアドレスが組み込まれる」という対策も出来るんですけど、正直それが抑止力になるとも思えないんですよね……
ただ、読者としては「いつでも何度でもダウンロード可能」「それを好きな端末にコピー可能」「PC上に保存しておける」というのはメリットだらけで直接的なデメリットはほとんどありません。
電子書籍販売サービスは「何度でもダウンロード可能」なのがメリットなのに、そのサービスを行っている企業が撤退してしまったら二度とダウンロード出来ないというデメリットがありました。「パブー」の場合、PDFファイルをPCやHDDに保存しておけば、仮に「パブー」がぶっ潰れたとしても何の不自由もなく購入した本を読めるのです。
各端末で読む方法はこちらに書かれています。
キンドルファイアHDで漫画を読む分には、PDFファイルでダウンロードして、端末に移し、自炊した本を読んだ際に使ったPerfectViewerというアプリで読むのが一番イイと思います。
「パブー」でダウンロードできるPDFは「パブー」が自動作成してくれたもので、この際に「縦書き用の右綴じ」「横書き用の左綴じ」のどちらにするかを作者が選べるのですが……キンドル端末に搭載されている標準の「PDFファイルを読む機能」だと強制的に「横書き用の左綴じ」になってしまうらしく、漫画を読む際にはオススメ出来ません。
じゃあ、キンドル端末に最適化されたMOBIファイルで読めばイイじゃないか……と思われるかも知れませんが、MOBIファイルというのはこの記事で書いたような「活字の本」に向いたリフロー型、漫画や絵本などに向いた固定レイアウト型があって。
「パブー」で自動作成されるMOBIファイルは「活字の本」向けのリフロー型になってしまうので、漫画を読むのにはオススメ出来ません。
これは分かりやすくページをめくっている最中のスクショです。
漫画ファイルであっても「横書きの活字の本に挿絵が入っている」という扱いになってしまうため、画面いっぱいに表示できず、「横書き用の左綴じ」扱いで、見開き表示にも出来ません。
「パブー」さんに頑張ってもらって、固定レイアウト型のMOBIファイルも自動作成してくれるようになればキンドルユーザーにとっては理想通りなんですけどねー。まぁ、現状はPDFファイルで保存してPerfectViewerで読めばイイんですけど。
ちょっと記事の本筋からは外れますが。
「活字の本」の場合、このMOBIファイルでダウンロードするとキンドルで「活字の本」を読む際に使える機能がほぼまるまる使えるみたいです。これは地味に超便利です。
アマチュアの小説書きさんとかエッセイ書きさんとか、ブログをまとめた電子書籍を出したい人とか……有料で出す場合も無料で出す場合も、ハードルの高いキンドルダイレクトパブリッシングよりもハードルの超低い「パブー」で出す方がイイんじゃないのかと思わなくもないです。
PerfectViewerでPDFファイルを読めばこの通り。
「見開き表示」対応、「左綴じ」「右綴じ」は自分で変えることが出来て、画質の設定なんかも自分で選べます。何という万能アプリ。ネックなのは出来る設定変更が多すぎて初心者は面食らうであろうことと、「パブー」で設定した章や目次は使えなくなってしまうこと。
そうそう。
今まで「画像平滑化方法」の項目がよく分かっていなかったんですが、自分の漫画をスキャンして見るとよく分かりました。多分、「最近傍法」<「平均画素法」<「平均画素法v2」<「バイリニア補間」<「バイキューブリック補間」<「Lanczos3」の順で、下を選ぶほど“(トーンのモアレなどが消えて)奇麗に映る”けど“処理が重くなる”みたいです。
自分はバランスを取って「バイリニア補間」に設定し直しました、
「パブー」では無料で公開されている本も多く、有料の本でも「試し読み」のページを作者が自由に設定できるために、恐ろしいほど時間泥棒のサイトだとも言えます。自分はとりあえずしばらく、無料で公開されている漫画を1日1冊ダウンロードして読んでみて、気に入った作者さんが有料の本も公開していたら買ってみようかなと思います。
面白かった作品は、こんな風にブログパーツで紹介することも可能です。
キンドル本と違って紹介した本が売れたらアフィリエイト料が入る―――みたいなことはありませんけどね(笑)。
紹介した漫画は「やられた!!」と思った作品です。
この作者さんはものすごくたくさん無料の漫画を公開しているので、この人の全作品を読むだけで夏が終わってしまいそうだ……。
何となく、「パブー」の雰囲気は。
大手ゲームメーカーがほとんど参入せずに、聞いたこともないメーカーが200円のゲームをバシバシ出して、ひっどい作品もたくさんあったのだけどその中にはとてつもない輝きを放った作品もあった「DSiウェア」の市場に近い雰囲気を感じます。
あ、そうだ。
大事なことを書き忘れていました。
「パブー」はエロ作品も販売出来ます。
というか……自分は、好きなエロ小説を書いているサイトさんが「パブー」で作品を有料公開していたのを見て初めて「パブー」を知ったので、しばらくの間「パブー」とはエロサイトなのだなと勘違いしていたくらいですから(笑)。
キンドルは確かエロはダメだという記述がヘルプに書かれていたように記憶しているのですが、今探したらその記述は見つからなかったので私が過去に見た幻覚だったのかも知れませんが……少なくとも「パブー」は個人の人が書いたエロ小説やエロ漫画でも公開出来ますし、販売することが出来ます。「イラスト集」って形ならば、エロイラストでもイイですね。
二次創作はダメですけど、一次創作でエロイコンテンツを作って御自身のサイトやPixivなどにアップしている人はたくさんいるじゃないですか。個人作品エロというのは、商業エロに比べて万人受けはしないけど「ストライクゾーンに入るととてつもないと思うので――――そういうものを作っている人達が、励みとして対価を受け取れるって意味でも「パブー」はもっとメジャーになって欲しいなって思います。
ということで、2つの電子書籍サービスを紹介しました。
もちろん重ね重ね「Amazonにケンカを売るためにこの記事を書いた」ワケではありません。ただ「日本でもっと電子書籍サービスが盛り上がるためには“競争”の中でサービスの質が上がる」ことが必要だと思うのです。キンドルだけを利用していた自分は、この2つのサイトで「うわっ、キンドルで出来ないことがこんなに出来るのか!」と驚きましたもの。
でも、キンドルの方がメジャーで知名度も高くて売上げも高いという話を聞くと、「キンドルだけじゃないんだよ!」と書きたくなってしまったのです。他のサービスもメジャーになることで、キンドルももっともっと使いやすくなればなーと思います。
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