社会人生活を続けていると、「長い修羅場を抜けると、そこは修羅の国でした」というような川端康成もビックリの展開にしばしば遭遇するものですが、みなさんいかがお過ごしでしょうか?
今春に入社した新人君は、もうかれこれ半年になりますね。仕事は楽しいですか?苦しいですか?春は死にますか?
いつしかアナタが本当に潰れそうになったとき、この記事が何かの役に立てれば幸いです。
組織の中で働いていれば、幾度となく大きな壁があなたの前に立ちはだかります。詳細は後述しますが、僕にもそんな時期がありました。これからもあるかもしれません。
- 自分の望む仕事がアサインされない(割り振られない)……
- 能力は申し分ないはずなんだけど、上司に嫌われ窓際に追いやられちまった……
- リストラの候補に挙げられ「追い出し部屋」への片道切符を掴まされようとしている……
「常に前向きで、笑顔でポジティブに行こう!また日は昇るさ!!」
なーんて妄言を吐くほど、僕もおめでたくはないのでご安心ください。小学校の道徳の授業じゃないんだから。
言うまでもなく、この荒れ狂う大海原は、終始「視界良好・順風満帆」を維持したまま渡り切れるほど甘いものではありません。
ダメなときは、何をどうあがいてもダメなのです。
身も蓋もありませんが、これは一つの真実です。
当ブログの賢明な購読者の方々は既にお察しかと思いますが、僕が常に「少しでも楽に、少しでも面白く!」と言い続けているその背景には、大前提として「絶望的なほどに厳しく、険しい道のりだからこそ、少しでも楽しくやらね?」という意図があるのです。
いいことばかりではないさ。
だからこそーー。
というわけで今回も、少しでも面白く楽しく過ごすため、目の前に立ちはだかる大きな壁・挫折の乗り越え方、対策について考えてみましょう。
1.「ポジティブ」思考の大きな落とし穴を知る
僕が社会人二年目でまだ駆け出しプログラマーの頃、一時、仕事を干されて(と言っていいのかわかりませんが)完全放置されていたことがありました。
当時僕は、客先に常駐して仕事をしていたので、上司となったのは別会社の社員でした(仮にAさんとします)。Aさんは僕を教育する義務はありませんし、超多忙であることもあいまって僕を完全放置していたのでした。
当然、僕は仕事をください!と申し出ましたが、ちょっと待って……と言い残し終日ミーティングに出払ってしまう始末。たまに空いた時間に仕事を振ってもらっていたのでした。一言で言えばマネジメントを放棄(=職務放棄ですね)していたのですが、Aさんをマネジメントすべきマネージャーも何も見られないありさまで、組織自体が半ば崩壊していたのでした。
受身でいても仕方がないので、僕は周囲に「仕事ないスか?」などと常駐先で謎の求職活動を行いつつ、ちょっとした雑用(小さいタスク)を細々とこなすような日々を続けていました。
自分が望むような、まとまった単位のタスクがアサインされない。しかも周囲はベテランばかりで自分のスキルも完全に不足している……。自分は必要とされていない。これは正直キツかったです。
――と、これは少し特殊な例かもしれませんが、このように自分の力で状況をすぐに改善できる見込みがない状況に置かれた場合に、即効性のある「結果」を強く求め過ぎると、逆に自分を苦しめることがあるのです。
「一日でも早く、この状況を打破したい!」
わかります。だからこそ――。
あまりに「結果」(=状況の改善)を急いだばかりに、思うようにいかず心が折れ、戦意を喪失し、自暴自棄になってしまうのが一番最悪なパターンです。
経営でも戦争でも同じですが、戦略・戦術を考える上での最重要項目の一つに「死なないこと、生き残ること」があります。
何言ってんの、当たり前じゃないか?と思われるかもしれませんが、人は攻めることに意識をフォーカスしている間は、守り、現状を維持することの重要性について意識が希薄になることが往々にしてあるのです。
「大ハマリ」した状況下では、無駄にあがいて消耗するのではなく、長期戦にもつれ込む可能性を視野に入れつつ、戦略的に淡々と「しかるべき作業」を地道に継続させる必要があるのです。
2.チャンス!苦渋・辛酸を舐めながら得た記憶は、魂に深く刻まれる
経験談に戻りますが、状況・風向きが一向に変わらないので、途方にくれた僕は目の前の雑用を消化しつつ、空いた時間を勉強に充てることにしました。
具体的にはプログラムの勉強をしていたのですが、体系的にじっくりと学び直すことで、自分がいかに「わかった気になっていた」のがよく理解できたのでした。放置されたことで、それまでの実践の業務から得た断片的な知識を整理するための、大きな貴重な機会を得たのです。
今振り返ってみても、当時勉強した内容が、その後の自分の技術的知識の全てのベースとなったと言えます。当時吸収した知識が血となり肉となり、今現在仕事をする中でも、それらが力を発揮してくれているのを感じています。
また、目の前の状況を少しでも改善すべく、細々とこなしてした雑用についても、腐らずに丁寧に対応していました。この経験も後に繋がっていき、やがて花開くことになるのですが、経験の「点と点」が、いつ繋がるかについては、その時点では人間に知る術はありません。未来は見えないのですから。
なので、必要なのは焦らずに当たり前のことを当たり前のように「淡々と進める」ことです。腐らずに、前を向いて進み続けること。自暴自棄になった瞬間、あなたは終わります。
絶望に打ちひしがれ、心が折れる日もあると思います。
疲れたのなら、ゆっくりと休めばいいのです。
そしてまた、ゆっくりと一歩一歩積み重ねていくことが、いずれ到来する「上昇気流」にキッチリ乗り切るための必要条件なのだと僕は考えます。
3.人生にもプラトー(停滞期)があることを理解する
勉強やスポーツなどでよく言われる「プラトー」という考え方。
目に見える実力は練習量・努力量に単純に比例するわけではなく、「停滞しているように見える」時期が定期的に訪れるというものです。そこを抜けると再び伸びていくわけです。上昇と停滞を繰り返し、成長を繰り返すとされます。
図1:練習量と実力の相関図から見たプラトー
壁にぶつかっているあなたは、人生の「プラトー」にいます。何でもかんでも順調に進むことはありえません。壁にぶつかる時期というのは、目に見えないながらも力を蓄えている時期です。
ただ単に停滞しているわけではなく、この先にくる上昇気流にきっちり乗るために、力を蓄える時期にいるわけです。
だからこそ、腐らないことが最も重要になってきます。
4.辞めてもいい。ただ、やることをやってから
会社員は自由です。
これは僕が常に言い続けていることですが、全ての選択権はあなたの中にあります。
ケースバイケースではありますが、その場に留まることに意味を見出せないのであれば、さっさと部署異動なり転職するなりアクションを起こしたほうが良いこともあります。
ただ、前述の通り状況を改善すべく、試行錯誤を継続することが大前提となります。
その昔、『それが大事』という応援歌ド直球の曲が流行りました。
その一節の、「負けないこと 投げ出さないこと 逃げ出さないこと 信じ抜くこと」のうちどれが一番大事なんだよ?というJ-POP界の往年の謎に対し、曲を作った大事MANブラザーズバンドの立川氏は「どれも大事じゃない!」とバッサリ切り捨てて笑いを取っていました。何ヶ月か前かな。
それを聞いた僕はコレって案外、真実なのかもなー?と思ったんです。場合によっては投げ出すことが大事なのかもしれませんしね。
繰り返しますが、会社員は自由です。
いざとなった際の退路や抜け道は、いくらでもあるのです。
逆説的ではありますが、今がどのような状況であれ、逃げ道や抜け道は無数に存在することを認識し、「どうにかなるさ!」という意識を常に持つこと。その上でリラックスして淡々と進むこと。これが一番大事なのかもしれませんね。
心が折れそうなときには、未来が全く見えないかもしれません。
なら、休みながら、目の前の一歩をゆっくりと。
少しでも楽に。少しでも面白く。
やがて吹く風に乗るために。
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