<独自>多機能イージス艦新造へ 代替案 地上用レーダー搭載 防衛大綱小幅改定

防衛省
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 政府が配備を断念した地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア(地上イージス)」の代替策について、新たにイージス艦を建造する方針を固めたことが28日、分かった。防衛省は地上イージスのレーダー「SPY7」を搭載する方向で調整を進めている。政府はこれまで弾道ミサイル防衛(BMD)に特化した専用艦も選択肢としていたが、複雑化した脅威に対処するため、多機能のイージス艦が必要と判断した。

 政府は年内に詳細を詰め、令和3年度予算案に関連経費を計上する。これに合わせ、防衛計画の大綱と中期防衛力整備計画を改定するが、地上イージスに関連する文言を削除するなど最小限の改定にとどめる。

 イージス艦に付与する機能に関しては巡航ミサイル迎撃や対潜水艦戦などに加え、従来のミサイル防衛では対処が難しい極超音速滑空兵器が将来的に開発されることを見据えた設計を行う案もある。

 防衛省は民間企業に調査を委託する契約を結んでおり、11月中旬の中間報告やコスト、人員の負担を踏まえ、搭載レーダーやBMD以外に付与する機能について最終的な判断を行う。

 政府はこれまで、地上イージスの代替策として、新たなイージス艦建造とBMD専用艦の導入のほか、レーダーを地上に配備して洋上の護衛艦で迎撃する「分離案」や、人工浮島「メガフロート」に地上イージスを設置する案などを検討。9月までに洋上に配備する案に絞り込み、商船や石油採掘などで用いる海洋掘削装置(リグ)を用いる方策も含め「洋上案」として自民党に提示していた。

 地上イージスは秋田、山口両県で配備する計画だったが、迎撃ミサイルのブースター(補助推進装置)が陸自施設外に落下することを防ぐには費用2千億円、期間10年以上を要する本体改修が必要であることが判明。今年6月に河野太郎防衛相(当時)が配備断念を発表したことを受け、安倍晋三首相(同)が9月の談話で、敵基地攻撃能力を含む「あるべき方策」を年内に示すとしていた。

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