パネルディスカッション:クラウド時代にSIはこう変わる。JAWS DAYS 2013(後編)

2013年3月19日

クラウドに積極的に取り組んでいるシステムインテグレータたちは、お客様の声をどう聞き、どのような戦略で望もうとしているのか。3月15日に都内で行われたAmazonクラウドのイベント「JAWS DAYS 2013」では、クラウドにフォーカスしたSIを展開する3社の代表が登壇し、「クラウドファースト時代に求められるシステムインテグレータ像とは?」というテーマでディスカッションを行いました。

fig 左から、司会のアマゾンデータサービスジャパン ソリューションアーキテクト 片山暁雄氏、サーバーワークス 代表取締役 大石良氏、SCSK クラウド事業本部 瀧澤与一氏、日立製作所 情報・通信システム社 クラウド担当本部長 中村輝雄氏

(本記事は「パネルディスカッション:クラウド時代にSIはこう変わる。JAWS DAYS 2013(前編)」の続きです)

クラウドによって海外向けの役務提供ができるように

片山氏 AWSを使うと海外展開できる、といった話があります。例えばSIのバリューとして海外向けのシステムができます、といったことはありますか?

中村氏 以前からお客様に求められていて、でもなかなか難しかったことがあります。私どものお客様は製造業が多く、例えば自動車ならタイに工場が集まっていたりしますが、そこで日本のシステムを持って行くのでSIをしてくれと頼まれるんです。

ところが日本のSEは現地でコンサルティングをしてもいいけれど作業は許されていないんです。それは役務の提供になって、法律で許されていないから現場でシステムを構築することはできません。やろうとすれば現地法人を作るしかない。

じゃあすべての国で現地法人を作りますかというと、そうもいかないわけです。でもいま、日本の製造業がシステムを構築するときに、クラウドで提供するから日本のデータセンターでいいよ、となった瞬間に作業場所が日本になる。AWSでもいいです。つまり、クラウドによって実質海外向けの役務提供が日本でできるようになる。

もちろん逆も可能ですが、そういう新しい可能性がある。このことに私たちもお客様も注目しています。

大石氏 昨年、アメリカでAWSのイベント「re:Invent」で、ガートナーのプレゼンに、アメリカのITで何がいちばん求められているかというのに「インテグレーションサービス」があって驚いたんですね。

ユーザー企業が自分でAWSを触っていると、運用のノウハウを得る範囲が限定的になって本当のメリットを引き出せない。そこでインテグレーションの専門家が持つベストプラクティスの提供が求められるということで、やはりお客様に提供するのはそこなんだと自信を持ちました。

中村氏 最近はProof of Concept(POC)という言葉が日常会話的によく出てきています。クラウドだと実験とか試行錯誤がちょこちょこできる。そういうコンサルティングというよりPOCというのがよく耳に入ってきますね。

クラウドの時代に求められる人材とは?

片山氏 これからのSI像。いままでと違う形でクラウドを使ってソリューションを提供する中で、どういう組織、どういう人材が欲しいですか?

中村氏 昔はメインフレーム全盛でIBMがビジネスモデルを作っていて、COBOLでも何でも技術を1つマスターすれば10年くらい食べていけました。システムを作るためのスキルがあれば食べていけた。

しかしいまは「作らない」という。ゲームが変わってきている気がして、これを勉強しておけば10年は安心だというのが言えない。データベース屋、プログラミング言語屋といったテクノロジーカットがなくなって、クラウド基盤屋とかマッシュアップ屋とか違う人種になっていくのかなと、おぼろげながら考えています。

瀧澤氏 私は1999年に当時のCSKに入社して、ちょうどすぐバブルが崩壊して商用インターネットが普及して先輩たちが.NETとかJavaとかにスキルチェンジをしていく時代でした。だから先輩に「これからよろしくお願いします」と挨拶したら「教えることなんかそれほどないよ」と言われました。

クラウドも似たところがあって、私はクラウドはビジネスの変革だと思っています。変革っていい言葉に聞こえますが、裏を見ればそれは破壊で、これまでのいろんなことを破壊しているのです。破壊されて新しい時代になったと認識して、その時代に合ったスキルを身につけていく必要があると思います。

大石氏 そもそもSIがいらなくなるのかというと、絶対にノーだと私は思っています。お客様は絶対にSIを必要としていると、さっきのガートナーの話にもありましたし。

ただ、これまでとは求められるものが違うと思います。いままでお客様が「のどが渇いた」と言えば、SIerはバケツを調達する人や川から水をくむ人、水質を調べる人など人がたくさんいてチームを作っていました。そうするとコミュニケーションが必要なので、そのために書類をたくさん作っていました。

これがクラウドでは、お客様が「のどが渇いた」と言うと、Amazonクラウド工場からH(水素)とO(酸素)の分子が出てきて、これを組み合わせるとH2Oで水ができてのどの渇きが解決してしまうと。いままで分業が必要だったのが、実は一人でクラウドをポチポチやるとデリバリできてしまう。

例えばHerokuは長い処理が苦手だから、そこはAmazon EC2とSQSを組み合わせようとか、セールスフォース・ドットコムはデータの保管料が高いのでAmazon S3にしようとか、そういうパターンが出てきています。これまではゴリゴリとシステムを作るのが仕事だったのに、これからは化学者のように、これとこれを組み合わせると、これが出来上がりますねと、こういう人が必要ではないかと思います。


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Junichi Niino(jniino)
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