November 01, 2008
Webをビジネスとして捉えると、以前のような根拠のない期待が持てる世界ではない。
もし広告「モデル」にしたければ、なんのメディア価値のないところにPVだけあってもダメだ。少なくともWeb2.0的ビジネスモデルとして言われていたadsenseやovertureが勝手に利益をもたらせてくれるというのが幻想であるということは、はっきりした。
高いPVを背景に低いコンバージョンレートで効果の出る広告は、電車の中刷り広告と同じく高利益率の商品である。(サラ金、エステ、レーシック、ワキガやニキビなどのコンプレックス市場など)
それはメディア価値をお互いに高めるような広告とは言い難い。
メディアがなんの意味もなくただ拡大だけを志向している世界にわくわくするような世界は存在しない。(行動ターゲティング広告は、もうちょっと楽しい世界が待ってるかもしれないけど。)
そんなところを目の当たりにしつつ、なんとなく行き詰まり感を感じていたが、そもそもの考え方がそこではないところを、昨日、IDEA * IDEAで募集されていたコミュニティ運営についての勉強会で再確認できた。
カジュアルな勉強会へのお誘い(コミュニティ運営について) | IDEA*IDEA
今回、COOKPADのCEOである佐野さんにお話をお伺いした勉強会。
そこで思ったこと。
コミュニティをモデルとして捉えてはいけない。それは成功した結果論でしかない。
もちろんビジネスを考える上でモデル化する思考は大事だが、その優先順位は前提となるサイトの理念の次だ。
何より一番大事なポイントは一つだけだと思った。
「そのコミュニティを通じて、何を幸せにするのか、何を実現するのか?」
という確固たる理念が必要。
全ての行動が、その理念に基づく。理想的なモデルのあり方とは、理念についてくるものだと思うので、理念がないのにモデルを一生懸命勉強しても意味がない。
Web2.0という概念が一つ難解な方向に行ってしまったのは、それをモデルとして捉えた人によって、数を集めること、規模の経済を求めることが良しとされたことだ。
Web2.0はコミュニティを表した概念ではない。しかし集合知はコミュニティ的要素として捉えられる。
ECサイトであるアマゾンにとっての「規模」とは、ユーザーレビューの数ではない。
アマゾンにとっての規模とは、いつでも閲覧可能な圧倒的なカタログと在庫量のことだ。
アマゾンに無償で提供されるユーザーレビューは、アマゾンというECサイトが優れていたからこそできたことだ。
結局のところは、「優れたECサイト」以上のなにものもない。その次の戦略としてアソシエイトとユーザーレビューへと広げていき、そこがWeb2.0と評されただけのこと。
そしてベースにあったのは、当たり前だが、本やCDを売れば売るほど儲かるというビジネスモデルがあったこと。(ここ重要)
アマゾンを目標にするなら、ユーザーレビューを集める仕組みではなく、独自のコンセプトで優れたECサイトを目指すべきだ。
Web2.0という概念が出てきて、多くの人が、そこを見誤った。
Web2.0をモデルとして捉えてしまったのだ。
モデルとして捉えてしまったが故に、数を志向し、それがユーザーが嬉しいんだという形を前提にWebサイトを作ってしまった。スパムのようなゴミが大量に集まるならまだしも、インセンティブの設計無く作ってしまいランディングすらできなかったサービスも少なくないだろう。
Web2.0が終わったと言う人は。未だにこの部分を勘違いしていると思う。それでは3.0になっても4.0になっても間違える。あなたが投資家ならそれで良いと思うけど、作り手だったら考え直した方が良い。(つまりターゲットが違うってこと)
Web2.0は、Web1.0と言われていた時代からのWebサイトの発展例でしかなかったのに、それをモデルとして捉えるから、それが簡単には儲からないモデルであることがわかると、終わったという言葉を使って切り捨てるのだ。
Cookpadさんも、Web2.0と言われる以前からWeb2.0モデルに合致する活動をされてきた会社さんだし、例えば2ちゃんねるも同じだと思う。
しかし、CEOの佐野さんは、数や馴れ合いを志向した意味で語られるコミュニティとCookpadは違うと仰っていた。
別に仲良くなるためのものではない、というところから来ている言葉。
なるほど。それが数が集まった秘訣なのだ。数は結果であって目標ではない。
Cookpadさんに登録されているレシピが59,000件。夕飯だけで全部参考にすると、今のレシピをこなすだけで161年かかる。
(それだけ人間って料理を食べられる数は限られてるのよね。。。。)
しかし、そこに到達するまでには、大変ご苦労されたろうし、今もご苦労されていると聞く。
多分、Webで10人を集めるのはそんなに難しくはない。しかし、その10人に満足してもらって、リピーターになってもらうのは簡単ではない。でも、10人のうち1人でもリピーターになってもらえば、その次に進めるだろう。
そういうところを徹底的かつ地道にやっていける人こそがコミュニティサイトをビジネスとして維持し続けていけるのだろう。(もう11期目だそうです)
もちろん話題が濃すぎて、どんなに頑張っても100人程度で止まってしまうこともあるだろうが、それはそれで良いのかもしれない。それでも100人が100人、満足しているなら、それはコミュニティとしての市場規模がその程度だった、ということだろう。それでも業界ナンバーワンであるなら間違いなく立派なものだ。
お話を聞いてて強く思ったのは、Cookpadはいわゆるコミュニティサイトではないのかもしれないが、Cookpadという会社と会員の間のコミュニケーションはとても重視しているのは感じました。そんなの当たり前だけど、それってコストに関係してくるので一番大事かも。最近話題の素敵なオフィスもそういうところに現れているのではないかと。
なお、エンジニアを募集されているそうですよ!
Railsエンジニアやサーバーエンジニアを募集しているそうです。
月間2.8億PVを支える環境でRails使ってる会社として、自分の力をつけたい人は是非挑戦してみては?
主婦に使っていただくサービスです。ツイッターみたいに調子が悪くても許されるサービスではないのは間違いなく、エンジニアに求められる要求レベルは高いと思うので鍛えられますぞ。
クックパッドの社長は佐野さんです。