「いつも、漠然としたなにかに追われていて忙しい」とか、「休んでもなかなか疲れがとれない」とか、そんな状態で日々を過ごしている方も多いのではないでしょうか。

だとすれば、一度立ち止まってみればいいと提案するのは、「ネイチャーセラピスト」として活動する『しつこい疲れがみるみるとれる! リトリート休養術』(豊島大輝 著、すばる舎)の著者です。

私は長年、皆さんが自然の中で心も体も元気を取り戻すための休養術、「リトリート」のお手伝いをしています。

人呼んで、リトリートの達人。普段は千葉県の温泉旅館やグランピング施設で、休日を過ごす方々を自然の中にお連れしたり、静かな森の中でヨガや瞑想などのリラクゼーション方法を教えたりしています。(「はじめに 忙しいからこそ『最高の休み方』を追求しよう」より)

リトリートは、日本語では“転地療法”“転地療養”などと訳されていることば。つまり、日常を忘れて自然のなかでのびのび過ごすということ。それだけのことであり、決して難しく考える必要はないわけです。しかし、「それだけ」だからこそ絶大な効果があるようです。

事実、硬い表情で宿に到着した方も、そののち自然のなかを散歩したり、焚き火を眺めて座っているだけで、姿勢や歩き方、物腰までが柔らかくなってくるというのです。

私はこのリトリートを「人がヒトに戻る旅」と定義しています。

要は、普段身につけている社会的な「鎧」を脱ぎ捨てて、自然の中にまっさらな自分を見つけにいくこと、それがリトリートなのです。(「はじめに 忙しいからこそ『最高の休み方』を追求しよう」より)

そしてリトリートこそ、忙しい現代人にとって「最高の休み方」であるとも確信しているのだとか。そんな考えに基づく本書の第2章「旅嫌いでもOK! リトリートがいいのは、こんなところ」のなかから、「リトリートのいいところ」に注目してみたいと思います。

荷物は最低限。「あれもこれも」は必要なし

どこかを旅しようというときには、「あれもこれも」とたくさんの荷物を持って行きたくなるものかもしれません。もちろん通常の旅行や観光であればそれでもいいでしょうが、リトリート目的であれば話は別。

いつもの社会的な立場や役割から、しばし離れるためにも、荷物は最低限にしておきたいところです。

1泊なら翌日の着替えに、スマホと財布。旅先でかさばるような服はやめて、アクティブレストできるように、動きやすい服装のほうがよいのではないでしょうか。(62〜63ページより)

リトリートは自分と向き合い、自然に還る旅なので、ありのままの自分でいいということです。もちろん、出かける何日も前から荷物の準備をする必要もなし。前日や当日の朝に、必要なものだけをさっとリュックに放り込み、軽快に家を出るのが理想だそうです。

普段の自分が着込んでいる「鎧」を可能な限り外し、出発のときから「ヒト」に近い状態で出るのがいいということ。(62ページより)

ひとりで気ままに出かけ、気ままに過ごせる

リトリートは観光ではなく「自分と向き合う旅」なので、必ずしも連れ合いがいる必要はないそうです。友人や家族とリトリートを楽しむ場合もあるでしょうが、気が向いたらひとりで気ままに出かけ、気ままに過ごすのが基本形。“そこにあるのは自分と大自然だけ”だという状況が理想だというわけです。

職場や家庭では、無意識のうちに周囲の意見を聞き、合わせたりしてしまいがち。もちろん社会的な立場や役割を持った「人」であるとき、それはとても大事なことでもあるでしょう。人が2人以上いれば関係性が生まれ、「人間」にもなります。

しかしリトリートにおいては、社会の一部である「人間」のしがらみから抜け出し、自然の一部として(生物学的な)「ヒト」に戻ることが重要。いいかえれば、自分に回帰していけばいいということです。

セルフ・リトリートは、日常の中で抑制していた気持ちを手放し、見つめ直すチャンスです。自分が何を食べたいのか、どこに行きたいのか、どれくらいしたいのか、自分の中から湧き出る気持ちを大事にしてみましょう。

「自分と対話ができるようになる」、これはリトリートの大事なポイントです。(65ページより)

大切なのは、「自分にとってなにが必要で、なにが不要なのか」「なにがしたくて、なにがしたくないのか」を見つめなおすこと。自分の抑制を取り払い、ワガママな自分でいてかまわないという考え方です。(64ページより)

行った先では、なにかしても、しなくてもOK

リトリートでは普段の日常と違い、何かを「する」ではなく、何かを「しない」と引いていく考え方も必要です。いつも「何かをしていないといけない」という強迫観念が、今の世の中にはある気がしてなりません。

休日くらいは「何かをしないといけない」気持ちから離れてみてはいかがでしょう? 1日全部ではなくても、たとえば1泊リトリートに出たとして、初日の午前中は2時間山歩きをするけれど、お昼を食べて宿にチェックインしてからは、予定を入れておかない「余白の時間」を取ってみるのです。(66〜67ページより)

予定が入っていなければ、当然のことながら心に余裕が生まれます。そのため、本を読んだり、泊まる場所が温泉であるなら温泉に入ったり、外を散歩したり、物思いにふけってみたりと、思いのままに過ごすことができるわけです。

私の経験によると、入念に下調べした「やることリスト」よりも、現地で得たインスピレーションや導きのような流れに身を任せることで、より深いリトリートができるように思います。(67ページより)

「インスピレーションや導き」という表現はやや大げさにも感じますが、つまりは予定を入れず、感覚を重視しながら、自分が好きなように行動してみる、あるいは行動しない――。そんな柔軟性こそが、リトリートにおいては重要な意味を持つということなのでしょう。(66ページより)


年末まであと少し。今年の暮れはリトリートにチャレンジしてみれば、新しい年を新鮮な気持ちで迎えることができるかもしれません。

>>Kindle unlimited、2万冊以上が楽しめる読み放題を体験!

Source: すばる舎